前穂高岳 松高ルート

11日(日) 前穂4峰正面壁 松高ルート
広島、江原(記録)
今年の夏合宿は穂高で4日間。目的は涸沢をベースにしての前穂4峰正面壁と滝谷の登攀、一度上高地まで戻ってからの明神5峰の登攀だった。予定では4つのルートが挙がっていたのだが、天候に恵まれなかったこともあり完登1、敗退1という結果に終わった。(おまけとして涸沢ボルダー。)とは言っても、悪い合宿ではなかったと思う。雨の中の前穂4峰と夏には人跡まれな明神5峰での登攀にはチャレンジ気分を味わえたし、開放感ある涸沢生活もワンゲル出身の自分にとっては単純に楽しかった。

当初、11日は前穂4峰正面壁で松高ルートと北条・新村ルートを登る予定だったが、アプローチの段階で小雨、登攀中には本降りという状態だったため松高ルートのみを登攀した。前穂東面は初めてだったが経験の浅い自分でも名前だけは知っているというルートが多く、それに小説の舞台になったりしているので期待して望んだ。天候に恵まれず、その全容を目にすることができなかったのが残念だ。

3:00、起床。少し肌寒く、前穂や吊尾根、奥穂にどんよりとした雲がかかっていたが、前日も同じような状態だったので「午前中は降らないだろう。」と行動を開始した。4:05、出発。5.6のコル経由で奥又白からのアプローチ。アプローチは稜線上部を取り巻く雲底の下を行くため視界が良く、また踏み跡も明瞭だったため問題はなかった。ただ、奥又白沢を登り返す際には固い雪渓の上を歩かなくてはならず、緊張した。傾斜が強い上、クレバスがありハンマー一丁で臨むのは危険だったかもしれない。「ホキだなぁ。」といいつつC沢らしき出合についたときには雲底が下がってきてすっかりガスにまかれ、小雨が降り出してしまった。

ガレガレの出合でハーネスを付けC沢へ進む。C沢出合は思っていたよりも狭くしかも崩壊地のような悪場だったので正しいという確信は持てなかった。すぐに約10㍍、チムニー状の滝に至りここからザイルを出しての登攀となった。ここはおそらく左側のフェースから登るのが正しいのだろうが既に岩がビショ濡れだった上、靴を履き替えるのが煩わしかったのでガバホールドの連続に見えた正面のチムニー状から取り付いた。結果的にはこれが失敗。支点が取れない上、浮石の多いところを登る羽目になり時間がかかってしまった。かなり苦労して上部の草付帯に抜け、支点を作っていると霧の中に4峰正面壁と右上するバンドがボーッと見えた。

8:00、ようやく正面壁T1に到着。ルートの取付点を探す。北条・新村ルートの取付には長いシュリンゲがかかっていていたが、松高ルートの取付は草付の中であまり明瞭ではなかった。雨はいよいよ本格的になってきていたが2人とも悪い滝や奥又白の雪渓を下りたくないという気持ちが強く「遅滞なく」という感じで取付いた。登攀開始、8:30。

  • 1P:あまり明瞭ではない凹状をおおむね左上。残置支点が少ないように感じルート選択に確信が持てないまま進む。
  • 2P:思っていたほど顕著ではない頭上の松高ハングにルート選択への不安は高まる。トポに近づけようとするようにハングを左にかわしながら直上。相変わらず支点は少ないがホールドはしっかりしていて難しくない。が、支点の取り方が悪いのか、絞れるくらいにビショ濡れのザイルが重いのかザイルがあがらず癇癪が起きそうだった。
  • 3P:硬い岩のフェースをテラス状まで。(これが松高テラス?)雨は相変わらずだがガスの切れ間から奥又白の雪渓がちらりと見えた。
  • 4P:テラス状から傾斜の強いルンゼ状を経て緩傾斜帯へ。ルンゼ状は岩も硬く問題ないが、上部の緩傾斜帯は小石が散らばっているような状態でザイルが起こす落石が多かった。雨とガスで視界が良くないため風切り音だけの落石は怖かった。

その後、重いザイルを引きずるようにして緩傾斜帯を適当に数ピッチのぼり踏み跡に合流。現在地の確認が出来なかったが、(4峰を右回りするように)トラバース気味に進み北尾根を目指した。

ようやく雨は小降りになっていたが相変わらずの濃いガスで行く手がよく見えないのが嫌だった。北尾根に合流したのは4峰への登りの最上部近くにあるチムニー状の下。13:50。北尾根では用心して3箇所を懸垂。高度を下げるにつれ天候は回復し5峰からは涸沢が見渡せた。カラフルなテントや山小屋の屋根を目にすると緊張がほぐれるのを感じた。15:40、5.6のコル。以降はガスも晴れ、登攀の感想を話ながらカールを下った。テント到着、16:15。


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