■日時 8月11日(木)〜13日(土)
■場所 穂高 屏風岩
■目的 アルパインクライミング
■メンバー ヨネさん(CL)、タナミーさん(SL)、クロ(記)
■メニュー
・穂高屏風岩東壁 東壁ルンゼルート(下部)
■天候 晴れ~高曇り
■タイムテーブル
8/10(水)
21:50 大宮集合(さわやか信州号)
8/11(木)
06:00 上高地バスターミナル出発
09:00 横尾到着、ベーステント設営
09:30 横尾キャンプ場出発
10:00 岩小屋跡から梓川の渡渉、1ルンゼ押出しを詰める
11:15 T4尾根取付きの岩小屋着、東壁ルンゼ取付きまで藪漕ぎトラバース、取付きにビバーク装備をデポ
12:15 屏風岩東壁ルンゼルート(下部、5P)登攀開始
18:05 登攀終了、草付きのT3をT4へと登る
19:40 T4から懸垂下降開始
22:30 T4尾根取付きの岩小屋到着、ビバーク開始
8/12(金)
06:00 起床、ビバーク撤収、
T4取付き周辺にて、ヨネさんによるクライミング技術のトレーニング(プロテクション各種の設置と回収、アメリカンエイドの基礎、荷上げ、システムからの脱出等)
11:00 屏風岩T4取付きからの下降開始、コンティニュアンスの練習
14:00 横尾キャンプ場到着
8/13(土)
05:00起床、テント撤収
06:00横尾キャンプ場出発
09:00上高地到着、入浴・食事等
12:00上高地出発
14:00松本着、解散
■登攀記録
アプローチ
T4尾根取付き右横の岩小屋の数メートル下から下部岩壁に沿って、少し下り気味に踏み跡をトラバースする。今年は雪が少なかったせいか、草が人間の背丈以上に生え放題のうえ、まだ誰も入っていないらしく草の踏み跡がゼロ。想定外のハードな藪漕ぎを強いられる。
顕著な凹角が取付き。取付きのリングボルトにはスリングで繋がれたリュックサックが残置されていた。タナミーさんによると、この残置リュックは昨年からあるらしい。
1P目(体感グレード:5.7)
凹角に沿って、スラブを直上するが、ボルトやハーケンはほとんどない。凹角途中でピッチを切る。
2P目(体感グレード:5.8)
凹角の左側のスラブを登るが、ボルトやハーケンはほとんどない。カンテを乗り越したところがテラスになっていて、ビレイ点。
3P目(体感グレード:数メートルの5.8、のちA1)
テラスから草付き壁を右上に数メートルフリーで登り、カンテを越える。
カンテの右側のボルトにアブミをかけて、右下のレッジにフリーでクライムダウンしてから、アブミ登攀開始。南さんの岩のナチュラルなラインを活かしたルート取りのセンスが光っていて、登っていてとても面白い。
連打されているリングボルトは、リングが歪んでいるもの、リングが欠損していて細引き又はリベットハンガーのタイオフが必要なものが半分以上を占めている。
ボルト間隔は、身長160センチ代のクライマーがアブミ最上段で立ち上がって「おしゃんてぃレスト」姿勢を取ると、次のボルトに手が届く感じ。つまり、本チャンという環境を考えると、ボルト感覚は決して短くはないがすごく遠いわけではない。
4P目(クロの体感グレード:フリー部分は5.10台中盤、A1)
精神的にも技術的にも核心ピッチ。
三日月レッジを右へトラバースのクライムダウンをしてから、浅い凹角にフリーで取り付く。人工登攀開始のはずだが、リングボルトもハーケンも「あるべき位置」に見当たらない。リードのヨネさんがリスにハーケンを打とうとするが、折れたハーケンがすでに打たれており浅くしか入らない。仕方なく「賭け」のフリー突破をした後で、ハーケンをほじくりだしてから、三日月レッジに沿ってフリー混じりでアブミ登攀開始。
三日月レッジを越えたところにペツルが1つ打ってあったが、これがルート中唯一見かけたペツルボルトだった。
連打されているリングボルトの頼りなさ、ヤバさ、遠さは、3P目と同じかそれよりも悪い。アブミにそっと加重して、祈るような気持ちで次のボルトにアブミをかけ替えていく。
最後のビレイ点(錆びたリングボルト3つでいかにも弱そう)直前の垂壁のマントリングがとてもいやらしい。手掛かり、足掛かりに乏しく、アブミを残置するリスクがある。
5P目(トポではⅣA1だが、A0フリーで登攀。体感グレード5.8)
左上するバンドをフリーとA0で渡る。乗り越したところにある垂壁は左に巻いて歩いていくと、灌木帯がでてきて、そこでピッチを切って登攀終了。終了点では、細い潅木を束にしてビレイ。
6P目(T3に向かって草付きを右上方向に攀じ上がる)
人が入った形跡の全くないブッシュの登攀=藪漕ぎ。草の背丈が高いのでラインが見えず怖い。足元はザレているので、思ったより悪い。ビレイグローブが草を掴んだり、掻き分けたりするのに役立った。
7P目(T3からT4に向かって歩く)
ここも悪絶な藪漕ぎピッチ。フィックスに沿ってセルフを取りながら歩くが、踏み跡が全くなく、草むらを掻き分け、踏み付けながら進むことになった。藪漕ぎ経験のないクロが先頭だったためなかなか進まない。どうにか雲稜ルートの取付きを越えて、T4のテラスに出る。この時点で真っ暗になりヘッドランプを点灯。翌日雲稜ルートを登るというクライマー2人がビバーク中だった。タナミーさんによると、T4テラスも草ぼうぼうで昨年よりも狭いとのこと。
下降(T4テラスから数メートル下の立木から懸垂下降開始)
T4尾根を60mロープによる懸垂下降×3回で、T4尾根取付きまで戻って来られた。
懸垂の順番は、ヨネさん、クロ、タナミーさん。特に3回目の懸垂は、60mロープで足りるか記憶が曖昧だったので、登り返す可能性も考慮してアッセンダ―を持ってヨネさんが最初に降りて下さった。
夜間の懸垂なので、ロープがスタックしないように何度も確かめながら下降。
最後の懸垂支点が、上下数メートル離れて2か所あるが、下の方には懸垂用のリングがなかったので、カラビナ2枚を残置して懸垂。
■装備
- いわゆる本チャン装備一式(含む、ハンマー、ハーケン、リングボルト、ジャンピング等)。
- リングが取れたリングボルトにタイオフする細引きとリベットハンガーは多めに必要。
- カムとナッツは、1P目、2P目で慎重なリードならランニングビレイとして使えると思うが、軽量化を図る場合は多少のランナウト覚悟で省くことも可能と思われる。
- 梓川の渡渉用にネオプレンソックス。クロは、行きはネオプレンソックス着用、帰りは裸足で渡渉したが、水の冷たさが緩和されること、滑りにくくなることからネオプレンソックスのありがたみを実感した。
■備忘録
- 今年は雪が少なかったせいか、東壁ルンゼ下部取付きへのアプローチ、T3への草付きピッチ、T2,T3,T4をつなぐバンドの全てで、まだ誰も入っていないらしく草の踏み跡がゼロ。想定外のハードな藪漕ぎを強いられた。
- 当初は、ビバーク装備と水・食料を担ぎ上げて、T4でビバークする予定だったが、暑さとパーティーの体力を考慮して、ビバーク装備を取付きにデポして登攀した。身軽になったことで完登という結果に繋がったと思う。
- 今回は、以下の理由により、本来予定していた12日の東稜ルートの継続登攀は見送った。
- 快晴でとても暑く、日陰のない東稜ルートの登攀は、日射病・熱中症リスクが高いと判断したため。
- 東壁ルンゼ下部にビバーク装備をデポしていたことから、ビバーク開始が夜遅くなり、十分に体力が回復していない可能性があったため。
- 岩小屋ビバークの起床時に別パーティーがT4尾根のアプローチを開始していたため、順番待ちになることがはっきりしていたため。
- タナミーさんとクロは、水の必要量を一日3リットル×2日=6リットルと計算し、各自背負った。クロの場合、1日目にケチらず水を消費していたにもかからず横尾に戻った時点で約3リットル弱余っていたが、2日目に東稜に登っていれば確実に消費していたと思う。
- 日射病・熱中症対策を真剣に考える必要がある。登攀~ビバーク終了後に、ヨネさんに軽度の脱水症状があらわれ、タナミーさんも軽度の日射病っぽい症状が現れたが、クロは割と元気だった。振り返ってみると、以下の対策をとったことが効果的だったと思う。
- 前夜はバスの中でアルコールを摂取しなかった。
- 上高地到着後からパンやシリアルではなく水分量の多いおにぎりを食べ、水やお茶・コーヒーではなくスポーツドリンクを飲み、積極的にローディング。
- 横尾~登攀中は、電解質・塩分サプリのタブレットを持参し水を飲むタイミングで食べた。
- 登攀中の行動食として水分の多いエネルギーゼリーを1パック飲んだ。
- 長袖着用、ヘルメット下に帽子をかぶり、首回りと顔はクールマックス素材のbuffで覆った。
- 日焼け止めを顔と手の甲に塗った。
■感想(クロ)
入会後3か月で今回が本チャン(アルパイン)デビューでした。舞台はまさかの穂高屏風岩。しかも、ルートは、トポには「屏風岩最難」と書かれている東壁ルンゼルート。無謀ではないかとかなりビビッていましたが、リーダーとパーティーに恵まれて、完登し、無事に下山することが出来ました。ヨネさん、タナミーさん、本当にありがとうございました。今回の経験から学んだことをぜひ次回以降に生かしたいと思います。
■感想(タナミー)
去年の夏合宿のとき敗退していたパーティが多かった東壁ルンゼ下部。”ピンがない”と聞いていたので、”登攀するとなればハーケンやジャンピングの出番がくるな、これは学ぶチャンスだ!”と思い、参加させてもらいました。
ハーケン・ジャンピングだけでなく、人工ルートでの細引きのセットなどは我流でやっていたので、今回はヨネさんのやり方を見れて学ぶことが多かったです。
去年、フォローでしたが、”こんなとこ、くるんじゃなかった”と何度か思ったけれど、今年は落ち着いてフォローできました。リードとなるとまた勝手が違って恐怖心を感じるでしょうが、できるようになりたいです。