穂高 滝谷 ドーム北壁/ドーム中央凌

L:江原、浜野(記録)

ついにというかやっとというか、本チャンデビューする時がやってきた。もちろんオールフォローだが・・・

8月10日
逃げるように職場を後にし、21:00のあずさで松本へ。

8月11日(晴れ) 上高地~涸沢
朝イチの電車とバスを乗り継ぎ上高地へ。この時期は臨時便が増発しているので6:30頃上高地に到着してしまった。江原さんは長野からの直通バスで11時頃到着なので、居眠りしたり散歩をしたりして待つ。早朝の上高地はサワヤカだ。やがて江原さんが到着し、11:15上高地を出発。16:25、涸沢着。ビールとコーラで乾杯し、くつろぐ。

8月12日(晴れ) 滝谷・ドーム北壁・右ルート/左ルート/北西カンテルート
3:30起床、4:30出発。元気良く北穂南綾のアプローチをこなし、縦走路から分かれる踏み跡に沿って少し下ると、懸垂用の支点がある。染み出しが多く、錆びたハーケン3本に残置のカラビナ。これを使い10メートル程懸垂下降し、安定した緩傾斜帯を少し歩くと北壁基部のテラスに到着。尚、支点の所から直接トラバースしてもテラスに行けるが、ちょっと恐そう。
テラスで小休止し、ザックを置いてまずは右ルート。氷川屏風で一度だけ「体験」した程度でしかない人工登攀に大苦戦。あり得ない位下手クソである。おっかなびっくりなのですぐ息が上がってしまう。なんとか上まで抜けて取り付きに戻り、次は左ルート。途中でアブミを落としてしまうという大失態を犯してしまった。左ルートは2P目途中から右ルートと合流してしまうので、1P目の終了点から懸垂で取り付きに戻った。落としたアブミはザックの横に落ちていた。下に人がいなくてよかった・・・。
小休止後、ザックを背負い本日のハイライトである北西カンテにとりかかる。1P目、40m近い人工登攀はとてもとても長く感じた。足下の景色もすごい。ピンの遠い所もあったようだが、テキトーに登ったのでよく覚えていない。2P目は簡単な凹角を登ってドームの頭へ。初体験盛りだくさんでホキホキ。17:05、テントにたどり着いてグッタリ。コーラが美味い。

8月13日(晴れ) 滝谷・ドーム中央綾
この日も3:30起床。昨日の疲れが全然抜けておらず、自分は朝からローテンション。チャーハンだか雑炊だかわからない飯を食って気合いを入れて出発。しかし北穂への登りでホキて2時間を要してしまう。縦走路脇のでかい岩の上で登攀具を付けていると、3人組のパーティーが登場。同じ中央綾を登るとのこと。お互いお願いしますと軽く挨拶を交わし、先に取り付きに向かう。ハーネスを付けると不思議と気持ちが引き締まるものだ。北穂から奥穂へ向かう縦走から踏み跡に沿って下る。
気を付けて歩くも、疲れてビビッて腰が引けて注意散漫、石をボロボロ落としてしまう。先行2人組1パーティーあり。トラバース気味に下って行くとハーケンの懸垂用支点があったが、トポにはステンレスボルトと書いてあった。ウロウロしているとさっきの3人組パーティーが来て、下降点は1段上だと言う。上がってみると、ステンレスのハンガーがしっかりと打ち込まれていた。そこから30メートル程懸垂下降し、少し登り返すと取り付きのテラス。結局3番手の順番待ちとなってしまった。先ほどの3人組が1番手、若い2人組が2番手。順番待ちの間は緊張と寒さで体が固くなり鼻血まで出てしまった。ついでにキジもうちたくなったが我慢。
1P目は凹角からチムニーを登り、ピナクルとのコルでピッチを切る。最後の方は難しいのでA0で登る。
2P目出だしは岩がゴトゴト動いて変な汗が出た。カンテを登り左のスラブに移りテラスへ。途中で「すいませ~ん、それ中央綾ですか~?」といきなり声をかけられ、下を見たら景色が良すぎてビックリした。「取り付きはもっと下ですよ~。」と説明して、さて登るかと気合いを入れた瞬間、横のガリーで「ゴトン」と音がした。ビッグな石が転がり落ちて最後に「バーン!」と凄い音。
これで2度ビックリ。2P目終了点のテラスで写真を撮り、水を飲んで出発。3P目は簡単な歩きだが一応確保した。

4P目は凹角を登る。座って確保しながら左を見ると昨日の北西カンテに例の3人組パーティーがいて、その速さに驚く。手元のロープはスルスルと伸び、静かな岩場にアブミとガチャ類の金属音が響く。これが本チャンなんだ~とピリッとした空気を満喫していると、バタバタとヘリの音が聞こえアッという間に近づいてきた。上からかすかに「浜野–!」とコールが聞こえると、間もなくヘリはすぐ近くでホバリングして止まった。自分たちが何かやらかすと思っているのだろうか、こちらを見ている。あーうるさい、スゴイ音。コールは一切聞こえない。笛も吹いてみたが聞こえただろうか。コノヤローと睨み帰すも当然効果無し。
あたふたしているとグイグイロープが引かれ、送り出してみるとどんどん引かれる。解除だと判断しビレイ解除。ロープをさばき、いっぱいになったところでしばし待つ。ロープの手応えだけをコール代わりとし登りだす。途中、クラックの中に残置のカムがあり、どんどん登って行くとまたカムがあったが、ヌンチャクを回収し何の気無しに通り過ぎる。が、なんと2つ目のこれは江原さんのセットしたエイリアンだった・・・・やってしまった。スイマセン。テラスで叱られたが気を取り直して最終ピッチへ。簡単な凹角を、写真を撮りながら楽しく登り最後に小さなハングを超えて終了。縦走路に戻り大きな岩の上でのんびり大休止し、ついでに北穂の頂上へ立ち寄る。
そういえば3000mを超える山頂に立つのは初めてだ。景色は素晴らしい。涸沢着15:30。今日は2本登る予定だったのに・・・江原さんは不完全燃焼だろう。自分の至らなさにヘコんでモチベーションが急低下、鼻血も出てきた。これから天候も崩れそうだしこんな状態ではどこも登れる気がしない。ということで明日は奥穂ピストンにしてもらった。

8月14日(晴れのち雨) 奥穂ピストン~徳沢
同じく3:30起床4:30出発。小屋まで休まず登り、奥穂頂上着6:30。ガスの切れ目から見える景色を楽しみながらも、「オレは岩登りをしに来たのに何やってんだぁ・・・」と軽くへこむ。しばらくのんびりしていたが、ガスが多くなってきたので下ることにした。
下りは渋滞で結構時間がかかる。途中で鼻血が吹き出し、処置をしていたが、止まらないので仕方無く鼻にチリ紙を突っ込んだまま歩く。途中何度もおばちゃんに声をかけられる。両手にトイレットペーパーとゴミ袋を抱え鼻にチリ紙を突っ込んで小走りで降りていく様はそんなに奇特か。8:55涸沢着。下山準備をしていると間もなく雨が降り出してきた。雨の中ゆっくり下り13:25徳沢着。徳沢では雨は降っておらず、ラジオでオリンピックを聴きながら外で昼寝などしてのんびりできた。つぶあんをお湯で溶いたぜんざいは激ウマだった。

8月15日(雨) 徳沢~上高地~帰京
下山日なのでテキトーに起きてテントをたたみ雨の中出発。7:45上高地バスターミナルに到着。松本で風呂に入り合宿最後の仕上げとして高橋のとんかつを食い帰京した。

色々とヘマを犯し江原さんに迷惑をかけたが、楽しい合宿であった。無事本チャンデビューを果たし、憧れの涸沢生活もできた。江原さんに感謝。ありがとうございました。課題はとにかく体力。ひとつ気になる事はあの「若鮎」というヘリか。パトロールご苦労様といいたいところだが、あそこまで近づかれては騒音で何も聞こえないのでパートナーの様子が分かりづらい。コールはおろか落石の音も聞こえないので物凄く危険だ。なんとかならないものだろうか。


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