東西歌集

緑の会歌をはじめ、コップ状岩壁開拓を歌った「コップ状豪気節」、かつての合宿参加者が作詞した「ホキホキワルツ」などといったオリジナル曲や、アルプス一万尺の替え歌など、盛り沢山です。その他よく歌われる一般の山の歌や、ロシア民謡、唱歌、各種小唄 等も収録されています。会の伝統を感じとることができるものとして、本ホームページに掲載しました。

緑の歌

若き命のあこがれは
朝日に輝く雪の峰
ベルクハイルの声高らかに
いざやめざさん岩壁こえて
聖なる頂に
打ちたてん緑の旗を

谷川岳

一の倉より春の日あがりゃ
友のめざめる底雪崩
峰を吹き捲く雪煙消えりゃ
銀のまぶしい銀のまぶしい耳二つ
谷の夜霧が朝日を浴びりゃ
峰もはにかむバラの色
ザイルしごいて希望をえがきゃ
山の神秘が山の神秘が身にしみる
山の陰から夕べがわけぼ
ままよオカンだ草枕
澄んだ星空焚き火で焦がし
熊と踊ろうよ熊と踊ろうよ月明かり
冬のあこがれ谷川岳よ
今日も久遠の白姿
心静かに頂踏めば
蒼い氷が蒼い氷が花と散る

一の倉ズンドコ節(作詞:富岡久 也)

夜の上野のプラットホーム
可愛いあの娘が涙で止める
止めて止まらぬおいらの心
山は男の度胸だめし
ドコズンドコストトコ(繰り返し)
泣いちゃいけない笑顔におなり
たかがしばしの別れじゃないか
可愛いおまえの泣き頗見れぱ
ザイルさばきの手がにぶる
粋なチロルよザイルを肩に
行くよ谷川 チョイト一の倉
仰ぐ岩壁朝日に映えて
今日はコップか滝沢か
行こか戻ろうか南稜テラス
行けぱあの娘か涙を流す
戻りゃおいらの男がすたる
山の男はつらいもの
唄うハーケンのぴろよザイル
何のチムニーオーバーハング
軽く乗っ越し目の下見れぼ
霧が流れる本谷へ
嫌な草つき慎重に越せば
やっと飛ぴ出す 国境稜線
固い握手に心も毒も
はれて見えるよ オキの耳
右に西黒左にマチガ
中の一筋 西黒尾根を
今日の凱歌に心も軽く
駈けりゃ土合も はや間近
さらぼ上越 湯檜曾の流れ
さらぼ土合よ谷川岳よ
又の来る日を 心に誓い
辿る列車の窓の夢

緑の歌

若き命のあこがれは
朝日に輝く雪の峰
ベルクハイルの声高らかに
いざやめざさん岩壁こえて
聖なる頂に
打ちたてん緑の旗を

緑花咲節(作詞:寺田甲子男)

日本全土の岳人に
とどろくその名は我が緑
コールは自慢の
トーザイトーサイ
南面東面越後側
谷川岳は俺達の
育ち盛りの
遊び場遊び場だ
峠や丹沢足慣らし
一の倉なら度胸だめし
剣穂高は
朝飯前朝飯前
蒼い氷に白い壁
若い心と燃える血が
ねらうルートは
初登撃初登攀
上越北岳富士鹿島
鍛えしからだその技術
登る冬山
ザックザックザックザック
永き伝統守りつつ
近代登山そのファイト
海の向こうで
花が咲く花が咲く
”トーザイトーサイ”

コップ状豪気節(作詞:古谷辰二)

俺は緑の山男
目指すはワンクラコップ状
そいつは豪気だね豪気だね
(以下繰り返し)

一つとせ
一目見たとき惚れたんだ
彼女もいらない コップ状

二つとせ
二日がかりのアタックも
やっと二メータ コップ状

三つとせ
見れぱ見るほど大ハング
連続つり上げ コップ状

四つとせ
止せぼよいのに親泣かせ
サーカスプランココップ状

五つとせ
いつになったら登れるか
毎週アタック コップ状

六つとせ
無理な登攀は怪我のもと
慎重にやろうぜ コップ状

七つとせ
鳴かぬハーケン打ち込んで
ホキホキ宙づり コップ状

八つとせ
やろうぜ登ろぜ今日こモは
正面岩壁 コップ状

九つとせ
苦労に苦労を重ねたが
サポートありがと コップ状

十とせ
とうとうやったぜ初登奪
涙でむせぷ コップ状

終わりだよ
オレは緑の山男
まだまだこんなこっちゃ物足りない
そいつは ほんとかね ほんとかね

一の倉数え唄(作詞:小林利秋)

一つとせ
人に知られし谷川の
ワンクラ沢の教え唄

二つとせ
二の沢スラブを遡行する
右股沢も なんのその

三つとせ 見れば谷川 耳二つ
今日の天気じゃ ノーザイル

四つとせ 寄るとさわると 噂する
緑の仲間の山男

五つとせ
いつか岩場で星が来て
テラスで数える星の数

六つとせ
ムリに登らぬ滝沢の
ハーケン打ち込む山男

七つとせ
泣いて別れたあの娘には
山のみやげは 石楠花よ

八つとせ
焼いちゃいけない オイラには
帰りゃあの娘と銀ブラさ

九つとせ
コップの岩壁とりついて
山の男は度胸だめし

十とせ
とうとう登った一の倉
胸にかがやく登攀賞

終わりとせ
尾張名占屋は城で持つ
緑山岳会はオレでもつ

俺は緑の山男(作詞:冨岡久也)

俺は緑の山男
後から来る奴気をつけろ
山は怖いぞ 楽しいぞ
ソーラ逃げろよ 落石だ
俺は緑の山男
おやじやおふくろ怖くない
雪崩も嵐も平気だが
何故か あの娘の目が怖い
俺は緑の山男
金もなければ地位もない
生まれついての丸はだか
持った度胸が 財産さ
俺は緑の山男
俺の彼女も山が好き
お花畑で恋したら
蝶々が ヤキモチ焼いていた
俺は緑の山男
可愛いあの娘とゲレンデで
熱いキッスを交わしたら
雪が融けたと裏鳴られた
俺は緑の山男
恋も捨てたよ 名もいらぬ
何故に あの山捨てられぬ
山が一つの慰めさ

雪山賛歌

雪よ岩よ 我らがやどり
俺達は街には住めないからに
雲の間に問にきらきら光る
明日は登ろうよあの頂きに
狭い小屋でも黄金の御殿
早く行こうよ谷間の小屋へ
シールほずれてバイプの煙
輝く尾根に春風そよぐ
吹雪の日にはほんとにつらい
ピッケルにぎる手が凍えるよ
荒れて狂うは吹雪か雪崩
俺達はそんなもの恐れはせぬぞ
友よ行こうよ手に手を組んで
憧れ久しきリーベの山へ
濡れるしぶきにあの沢つめりゃ
お花畑は今花盛り
テントの中でも月見は出来る
雨が降ったら濡れれぱいいさ
山よさよならご機嫌よろしゅう
又来る時には笑っておくれ

オーマイダーリン オーマイダーリン
オーマイダーリン クレメンタイン
ユーアロストアンドゴンファレバ
ドレッドフルソーリ
クレメンタイン

ホキホキワルツ(作詞:昭和36年利尻岳合宿参加者合作)

リーダーにしごかれお山に登る
重いザックの 悩ましさ
来なけりゃよかったこの合宿に
これが苦労のはじめでしょうか

空には三日月お山を登る
足がいかれて目がかすむ
ホキた足並み恥ずかしくるし
緑の新人ホキホキワルツ

同期の緑(作詞:山本 勉)

貴様と俺とは同期の縁
ともにしごかれた新人時代
リーダー恨んでぼやきもしたが
モロも教わり、正会員
貴様と俺とは同期の緑
ザイル結んで岩登り
トップ競うてハングに挑み
ジッヘルしあったバートナー
貴様と俺とは同期の縁
トーザイコールでのどからし
励まし合ったあのビバークの
つらい思いもなつかしい
貴様と俺とは緑の仲間
合宿終わればロクおろし
ドクロのバッジも一緒にもらい
明日も越えよう 雪の峰

山を恋うる歌

音に聞こえし一の倉
鳥も通わぬ滝谷の
空にそびゆる三の窓
南の障壁バットレス
岩を攀じらば一の倉
南棲テラスにたむろして
ザイルしごいて仰ぎ見る
モルゲンロートのエボシ岩
ああ我レビュファの鬼才なく
ヘルマンプールの技なきも
闘志燃やして戦わん
滝沢下部もなんのその
衝立正面そのうちに
コップの正面そのうちに
エポシの奥壁そのうちに
滝沢スラブもそのうちに

いつかある日

いつかある日 山で死んだら
古い山の友よ つたえてくれ
母親には 安らかだったと
男らしく死んだと、父親には
つたえてくれ 愛しい妻に
俺が帰らなくとも生きていけと
息子達には 俺の踏み跡が
ふるさとの岩山に 残っていると
友よ 山に 小きなケルンを
積んで墓にしてくれピッケル立てて
俺のケルン 美しいフェースに
朝の日輝く 広いテラス
友に贈る 俺のハンマー
ピトンの歌声 聞かせてくれ

エーデルワイスの歌

春 雪は消えねど春は来ざしぬ
風はなごみて日は暖かし
氷河の畔を滑りて行けぼ
岩陰に咲くアルペンプルーメン
紫匂う都をあとに
山に憧れる若人の群

夏 エーデルワイスの花ほほえみて
鋭き岩角 金色に照り
山は目覚めん 夏の朝風
乱雲おさまり夕空晴れぬ
命のザイルに我が身を託し
思わず仰ぐアルペングリューエン

秋 星影さやかに空澄み渡り
葉末の露に秋ちりそめぬ
金と銀とに装い凝らし
女神のごとき白樺の森
虹燃ゆる山より山へ
行方も知らずさすらい行かん

冬 吹雪は叫びたそがれ迫り
求める小屋のありかも知れず
ああ此の雪山重畳として
シーロイファーの行く手を閉ざす
ああ此の雪山寂漠として
寒月鋭くシュプールを照らす

結 ああ玲瓏の雲の高嶺に
心静かに頂きに立つ
尊とき山の教えを受けん
身も魂も汚れは消えて
永遠に尽きせぬ白光の裡に
清き幸をぱ求みうるらん

アルプス一万尺(作詞:小林利秋)

アルプス一万尺 小槍の上で
アルペン踊りを踊りましょ ヘイ

(以下繰り返し)
ラララララララ ラララララララ
お花畑でヒルネをすれば
蝶々が飛んできてキスをするへイ
一万尺にテントを張れば
星のランプに手が届く へイ
チンネの頭にザイルをかけて
パイプふかせば雲がわく へイ
さあさあ聞きよ 緑男児は
粋でおしゃれでファイトマン ヘイ
緑のザックに惚れない娘は
オシかツンポかあきメクラ へイ
アルプス良いとこ一度はおいで
トザイトザイの声がする へイ
唄うハーケン ひぴくヨーデル
岩は男の度胸試し へイ
つらいビバーク マプタを閉じりゃ
可愛いあの娘の夢を見る へイ
緑男児は浮気じゃないが
明日はいずこの壁で寝る へイ
ヒマラヤうんマン尺ホキホキ登れぱ
月のお山に手が届く へイ

アルペン数え唄

一つデタワイノヨッサホイノホイ
人にや言えないこの胸の内
山があるから登るのさ
ホイノホイ

二つデタワイノヨッサホイノホイ
冬は雪山 夏は岩登り
山は男の腕だめし
ホイノホイ

三つデタワイノヨッサホイノホイ
水の流れとオイラの山は
どうせ気まかせ足まかせ
ホイノホイ

四つデタワイノヨッサホイノホイ
夜の夜中にカンテラさげて
登りゃ朝日が目を覚ます
ホイノホイ

五つデタワイノヨッサホイノホイ
粋なチロルでサイルを肩に
いくよ穂高はジャンダルム
ホイノホイ

六つデタワイノヨッサホイノホイ
娘心とお山の天気
煙ると思えばまた曇る
ホイノホイ

七つデタワイノヨッサホイノホイ
何故に冷たい剣の岩場
ザイルさばきの手か鈍る
ホイノホイ

八つデタワイノヨッサホイノホイ
槍の頭で小キジを撃てば
高瀬・梓と泣き別れ
ホイノホイ

九っデタワイノヨッサホイノホイ
今度来るときゃ笑うておくれ
山よごきげんさようなら
ホイノホイ

十でデタワイノヨッサホイノホイ
止めてくれるな男の心
山に憑かれた俺達さ
ホイノホイ

アルプスの歌

空虚なるコダマ追いつつ
行き暮れて丘に迷えぱ
紫に狭霧は込めて
誰が唄ぞ 早笛流る
遥かなる響きにつれて
涙さえ知らずあふるる
アルプスの峰は霞みて
波たちぬ レマンの畔
別れなむ また逢う日まで
正しきは永遠の生命ぞ
失わじ 我の身ここに
伝え来し北指す針よ

穂高よさらぱ

穂高よさらば又来る日まで
奥穂に浮かぶあかね雲
帰りみすれば遠ざかる
瞼に浮かぶジャンダルム
穂高よさらば又来る日まで
北穂に続く雪の肌
帰りみすれば遠ざかる
瞼に浮かぶ槍が岳
穂高よさらば又来る日まで
前穂に続く岩の肌
帰りみすれば遠ざかる
瞼に浮かぶ又白池
穂高よきらば又来る日まで
涸沢あとに徳沢へ
帰りみすれば遠ざかる
瞼に浮かぶ屏風岩
穂高よきらば又来る日まで
明神岳の岩の肌
帰りみすれば遠ざかる
瞼に浮かぶSルンゼ

剣の歌

夢に描いた剣の山によ
意気と力でね ぶちあたるヨカネ
剣見るなら赤谷尾根でよ
大窓小窓にね 三の窓ヨカネ
窓に数々窓はあれどよ
剣の大窓 日本一ヨカネ
プナでドンと打つ雪崩の音はよ
ごついオイラの度胸だめしヨカネ
窓を開ければ富山の町がよ
暗い夜空にね薄明かりヨヵネ
ザイル結んで氷の尾根でよ
仰ぐ剣のね 雪化粧ョカネ
遥か見下ろす池の谷のよ
暗いゴルジュの蒼氷ヨカネ
どうだ見てくれオイラの焼けたよ
山の男の色香おりヨカネ
髭を伸ばして伊折へ下りゃ
オイラを待ってるね獅子舞がヨカネ

シーハイル

岩木のおろしが吹くなら吹けよ
山から山へと我らは走る
昨日は梵珠嶺 今日またあじゃら
煙たてつつ おおシーハイル
ステップターンすりゃ戯れかかる
杉の梢よ未練の雪よ
心は残れどエールにとどめ
屈伸滑降で おおシーハイル
夕日は赤々 シュプール染めて
辿る雪道はてさえ知らず
街にはちらほら灯りがついた
ラッセル急げよ おおシーハイル

むかしむかし

むかしむかし あるところに
登山者という変な人種が住んでいた
夏になれぱテント背負って
わぎわざ寂しい山に登って喜んだ
それで足らず 冬になると
スキーとワカンとアイゼンかついで山の中
自分の住む 国の中の山では足らず
ヒマラヤまでと押し出した
こんな馬鹿な 人種は今
地球の上には居らぬと利口な人はいう

そうでしょうか ほんとでしょうか
僕の前にいるのは一体何でしょう

大バカ野郎の歌

むかし むかし あるところに
大バカ野郎の登山家が住んでいた
なりはちっちゃくて
こまっしょなれど
大バカ自身はこう言った
キシャコンデルホンダハ
キシャチンタカイワ
谷川岳の 一の倉で
大バカ野郎はいつも 岩登り
事故があれぱザイル担いで
よろこびいさんでロクおろし
ヤマデシヌナヤマデシヌナ
ヤマデシヌヤツハオレヨリモバカ
人は皆 バカと呼べど
登り続けて五十年
あきれはてた 大バカなれど
その後ついてくバカもいた

山男の歌

娘さんよく聞けョー
山男にゃ惚れるなョー
山で吹かれりゃョー
若後家さんだヨー
山男よく聞けョー
娘さんにゃ惚れるなョー
むすめ心はョー
山の天気ョー
娘さんよく聞けョー
山男の好物はョー
山の便りとョー
飯盒の飯だョー
山男 よく間けョー
娘さんの好物はョー
田舎じることョー
飯盒の飯だョー

山女哀歌

腰のハンマーにすがりつき
つれていきゃんせ谷川へ
連れていくのはやすけれど
女にゃ登れぬ一の倉
女登れぬ山なれぱ
長い黒髪断ち切って
岳人姿に身をやつし
ついていきますどこまでも
無理はおよしよお嬢さん
ダンスパーティじゃあるまいし
命賭けたる岳人の
まねができようはずがない
命賭けるというけれど
山が命のあなたなら
恋が命のこのわたし
ついていきますどこまでも
そんなにおまえがいうのなら
雪の穂高や剣でも
ついていきますどこまでも
ほんとにほんとにほんとにごくろうさん

岳人の歌

星が降るあのコル グリセード
あの人来るかしら 花をくわえて
アルプスの恋唄 心ときめくよ
懐かしの岳人 やさし彼の君
白樺にもたれしは やさし乙女か
黒百合の花を 胸に抱いて
アルプスの黒百合 心ときめくよ
懐かしの岳人 やさし彼の君

雪と岩

山々は一つの別世界
地球の一部というよりも
並外れ独立した神秘の王国で
その王国に冒険を試みるための
唯一の武器は
意志と愛情とテクニックなのさ
冬山は白銀の別世界
バラ色に輝くあの尾根に
今日も日が暮れて夜が訪れる
その冬山に冒険を試みるための
唯一の武器は
意志と愛情とテクニックなのさ
岩壁は孤独の世界
冷たい岩に触れるとき
男の情熱をたたきつける
その岩壁に冒険を試みるための
唯一の武器は
意志と愛情とテクニックなのさ

夏の想い出

夏が来れば思い出す
ほるかな尾瀬 遠い空
霧の中に浮かびくる
やさしい影 野の小径
水芭蕉の花が咲いている
夢見て咲いている水のほとり
石楠花色にたそがるる
はるかな尾瀬 遠い空
夏が来れば想い出す
はるかな尾瀬 野の旅よ
花の中にそよそよと
揺れる揺れる 浮島よ
水芭蕉の花が匂っている
夢見て匂っている水のほとり
まぶたつぶれば懐かしい
はるかな尾瀬 遠い空

山小舎の灯

黄昏の灯はほのかにともりて
懐かしき山小舎は 麓の小径よ
想い出の窓により 君を偲べば
鳳は過ぎし日の歌をばささやくよ
暮れいくは白馬か穂高はあかねよ
樺の木のほの白き 影もうすれいく
淋しさに君呼べど 我が声むなしく
ほるか谷間より こだまはかえり来ぬ
山小舎の灯は 今宵もともりて
一人聞くせせらぎも 静かに更け行く
憧れは若き日の 夢を乗せて
夕べ昼のごと みそらに群れ飛ぶよ

北帰行

窓は夜露に濡れて
都すでに遠のく
北へ帰る旅人一人
涙 流れてやまず
夢はむなしく消えて
今日も闇をさすらう
遠き思い はかなき希望
恩愛 我を去りぬ
富も名誉も恋も
遠きあこがれの日ぞ
淡きのぞみ はかなき心
栄光我を去りゆく
我は黙して行かん
何をかまた語らんや
さらば父母よ ふるさとよ
明日は異郷の旅路

旅の歌

今日も静かに暮れて
ヒュッテに灯火ともり
囲炉裏囲み 想い果てなし
明日はいずこの峰ぞ
あわれはかなき旅よ
人はみな旅人か
なにを嘆きなにをかいたむ
憧れの峰越えて
夢は昔に帰り
へにし山川もなく
そぞろ一人浮き寝の旅路
明日はいずこの峰ぞ

山の唄

守れ権現 夜明けよ霧よ
山は命のみそぎ場所

六根清浄お山は晴天
〈以下繰り返し〉
行けよ荒れくれどんとと登れ
山は男の度胸試し
なにを奥山道こそなけれ
水も流るる鳥も鳴く
山は百万石木がやの波よ
木がや越ゆれぱ お花畑
雪の御殿に氷の岩屋
滝は千丈の逆落とし

山の友へ

薪割り飯炊き小屋掃除
みんなでみんなでやったっけ
雪解け水が冷たくて
苦労したことあったっけ
今では遠くみんな去り
友を偲んで仰ぐ雲
前領外傾全制動
みんなでみんなでやったっけ
雪が深くてラッセルに
苦労したことあったっけ
今では遠くみんな去り
友に便りの筆をとる
唐松萌ゆる春山に
みんなでみんなで行ったっけ
思わぬ残雪にワカン履き
苦労したことあったっけ
今では遠くみんな去り
友の笑顔を夢に見る

ヒュッテの夜

雪の青さを 透かす窓
湯気に凍った花ガラス
ぬくめた指で字を書けば
そこから融けて跡もなく
耳を澄ませみちかたに
なるもののあり 心かよ
おや なんの音 雪崩かと
我にかえれば のきばから
部屋のぬくみに融かされて
雪とつららの落ちた音
ストーブの湯も沸いたから
お茶を飲み飲み話そうよ
つのる風雪に目が覚めて
誰か呼んでる叩いてる
山の精だと脅されて
かかぐ布団のあたたかさ
冬のヒュッテの夜更け時
よんでいたのは夢かしら

キャンプの朝

朝だ夜明けだ谷川のせせらぎ
体を清めて東を跳めりゃ
はるかな山の端に
射し込める光
朝霧は晴れゆく キャンプの喜び
朝だ 夜明けだ 小鳥のさえずり
耳を傾け聞き惚れていれば
白樺の高い梢を
飛び越えていく翼
朝霧は晴れゆく キャンプの喜び
朝だ 夜明けだ炊事のけむり
目にしむ涙も楽しいひととき
唇にのぼる歌も
明るいメロデイ
朝霧は晴れゆく キャンプの喜び

放浪の歌

そんなにお前はなぜ嘆く
草のしとねに寝ころんで
私の言うことお聞きあれ
人の浮き世の見栄捨てて
口笛吹いて気を晴らせ
うつつの夢を見ていやれ
くたびれ休みに山を見て
腹が減ったらまた歩け

ぼくらの故郷

懐かしあの山 ファリヤ ファリヤ
ぼくらの故郷 ファリヤ ファリヤ
真白き森に うさぎたわむる
ファリヤ ファリヤ ファリヤ
ファリヤ ファリヤ ファリヤ
めぐり来し雪山ファリヤ ファリヤ
ぼくらの故郷 ファリヤ ファリヤ
粉雪かむる もみの木うれし
ファリヤ ファリヤ ファリヤ
ファリヤ ファリヤ ファリヤ
待ちかねし冬の日ファリヤファリヤ
ぼくらの故獅 ファリヤ ファリヤ
谷間の小屋にストーブ燃える
ファリヤ ファリヤ ファリヤ
ファリヤ ファリヤ ファリヤ

草原情歌

はるかはなれた
そのまたむこう
誰にでも好かれる
きれいな娘がいる
明るい笑顔
お日様のよう
くりくり輝く目は
お月様のよう
お金も宝も
なんにもいらぬ
毎日モの笑頗
じっと見つめていたい
山羊にでもなって
一緒にいたい
毎日あのむちで
私をたたいておくれ

コサックの悲歌

夕暮れのうらさびしい
草原の果てに
疲れ切った馬に乗って
コザック兵が嘆く
「この強い私の馬
さあしっかりせよ
行先も遠くはない
もう少しの我慢」
「今夜のうちに行き着かぬと
命にかかわる
お前だけが頼みだよ
これを聞いておくれ」
夕暮れのうらさびしい草原の果てに
疲れ切った馬に乗って
コザック兵が嘆く

山の大尉

山の大尉は傷ついた
部下の山岳兵達に
もう一度ここで逢いたいと
息たえだえに言づけた
山岳兵は言づけた
靴がないので歩けない
靴を履いても履かんでも
山岳兵に逢いたいと
陽はさし昇る山の朝
山岳兵は訪れた
大尉殿 なんの命令です
我らはここに着きました
私の体を五つに
切ることを命じます
その一つを皇帝に
命を捧げた思い出に
二つ目のそれを連隊に
過ぎた日のしるしに
三つ目のそれは母に
息子の兵の思い出に
四つ目のそれは愛人へ
我が初恋の思い出に
最後のそれは山へ
バラで山を覆うため

バルチザンの歌

ある朝目覚めて
さらばさらば旅人よ
目覚めて我らは見る
攻め入る敵を
我をもつれゆけ
さらばさらば旅人よ
つれゆけバルチザンよ
やがて死ぬ身を
いくさに果てなば
さらばさらば旅人よ
いくきに果てなば
山に埋めてや
埋めてや かの山に
さらばさらば旅人よ
埋めてや かの山に
花咲く度に
道行く人々
さらばさらば旅人よ
道行く人々
その花 愛でん

遠き山に日は落ちて

遠き山に日は落ちて
星は空をちりばめぬ
今日のわざをなし終えて
心軽くやすらえば
風は涼し この夕べ いざや
楽しきまどいせん まどいせん
闇に燃えしかがり火は
炎 いまは静まりて
眠れ やすく憩えよと
誘いごとく消えいけば
深き森につつまれて いざや
楽しき夢をみん 夢をみん

トロイカ

雪の白樺並木
夕日が映える
走れトロイカほがらかに
鈴の音高く
響け若人の歌
高鳴れバイヤン
走れトロイカ軽やかに
粉雪蹴って
黒い瞳が待つよ
あの森越せば
走れトロイカ今宵は
楽しいうたげ

ジクーリ

川面霧たち 野辺に流れて
連なる山はおおジクーリの峰よ
連なる山はおおジクーリの峰よ
小舟静かに水面を揺れて
うるわし山はおおジクーリの峰よ
うるわし山はおおジクーリの峰よ
母なるヴォルガに春を迎える
栄えあるつとめおおジクーリの峰よ
栄えあるつとめおおジクーリの峰よ
あふるる水はもするを洗い
海は近づくおおジクーリの峰よ
海は近づくおおジクーリの峰よ
船は波間に海に向かう
霧に健なるおおジクーリの峰よ
霧に健なるおおジクーリの峰よ

山のロザリア

山の娘ロザリア
いつも一人唄うよ
遠い牧場 日暮れて
星の出る頃
帰れ帰れも一度
忘れられぬあの日よ
涙流し別れた君の姿よ
黒い瞳ロザリア
一人唄を唄うよ
風に揺れる花のよう
涙流して
帰れ帰れも一度
優しかったあの人
胸にだくは形見の銀のロケット
一人娘ロザリア
山の唄を唄うよ
唄は甘く悲しく
星もまたたく
帰れ帰れも一度
命かけたあの夢
うつりかわる世の中 花の散りゆく
山の娘ロザリア
いつも一人唄うよ
青い牧場 子山羊も
夢を見ること
帰れ帰れも一度
忘れられぬあの日よ
涙流し別れた 君の姿よ

赤いサラファン

赤いサラファン ぬってみても
楽しいあの日は 帰りゃせぬ
たとえ若い娘じゃとて
なんでその日が長かろう
燃えるようなその頬も
今にご賢よ 色あせる
その時きっと思い当たる
笑うたりしないで母さんの
言っとく言葉をよくお聞き
とはいえサラファンぬうていると
お前と一緒に若返る

可愛いあの娘

可愛いあの娘は誰のもの
可愛いあの娘は誰のもの
可愛いあの娘は誰のもの
いえあの娘はひとりもの

〈以下際り返し〉
カタツムリはどこから 川から田圃へ
恋人はどこから 目から心へ
ノーマニサパ ヤンプーニャ
ノーマニサパ ヤンプーニャ
ノーマニサパ ヤンプーニャ
ラササーヤ サーヤゲン
可愛いあの娘の片えくぼ
ちょいと突いて袖引いて
寄子の木陰のランデヴー
おや頭に実が落ちた
可愛いあの娘は誰のもの
可愛いあの娘は誰のもの
可愛いあの娘は維のもの
いえあの娘は僕のもの

いえあの娘は僕のものブンブン
いえあの娘は僕のものブンブン
いえあの娘は僕のものラッサ

川辺のベンチ

灯またたき月は水に揺れ
川岸で語る若者と乙女
若者の瞳明るく輝き
乙女の黒髪そよ風に揺れる
真夏の夜空にきらめく星影
若日の幸を静かにささやく
白樺の木陰 川辺のべンチで
別れの言葉を言えない二人よ
灯は消えて月は森のかげ
別れを惜しむか愛する二人よ

エンメンタールうるわし

我らが楽しき故郷
輝く頂き白銀の峰

フィデリアドウイアイ
リアホ

フィデリアドゥイアイ
リアホ

フィデリアドゥイアイ
リアホ

フィデリアドゥイアイ
リアホ

想い出

よく尋ねてくれたね
よくまあねえきみ
よく尋ねてくれたね
さあさあ かけたまえ
今日までの出来事をみな話そう
お互いに
よく尋ねてくれたね
あの頃はお互いに
まだまだおさなくて
ずいぶん喧嘩もやったよね
ほんと懐かしい
あの角のお菓子屋のマキノ君は
どうしたろ
あの頃はお互いにずいぶん暴れたね
よくここを忘れすに
よくまあねえきみ
よく尋ねてくれたね 僕は嬉しいよ
この次は君の家僕がきっと尋ねるよ
そうだ次の日曜日に ではさようなら

惜別の歌

遠き別れに耐えかねて
この高楼に登るかな
悲しむなかれ 我が友よ
旅の衣を ととのえよ
別れを言えば昔より
この人の世の常なるを
流るる水を眺むれば
夢恥ずかしき涙かな
君がさやけき眼の色も
君 虹の唇も
君が緑の黒髪も
またいつか見ん この別れ
君が優しき慰めも
君が楽しき歌声も
君が心の琴の音も
またいつか閲かん この別れ
君の行くべき山川は
落つる涙に見えわかず
袖のしぐれの冬の日に
君に贈らん 花もかな

しあわせの歌

しあわせはおいらの願い
仕事はとっても苦しいが
流れる汗に未来を込めて
明るい社会をつくること

〈以下繰り返し〉
みんなで歌おうしあわせの歌を
響くこだまを迫っていこう
しあわせはわたしの願い
あまい思いや夢でなく
今の今をより美しく
つらぬき通して生きること
しあわせはみんなの願い
朝焼けの山河を守り
働くものの平和の心を
世界の人に示すこと

かあさんの歌

かあさんが夜なべして
手袋編んでくれた
木枯らし吹いちゃ冷たかろうて
せっせと編んだだよ
ふるさとの便りが届く
囲炉裏の匂いがする
かあさんが麻糸つむぐ
一日つむぐ
おとうは土間で 藁うち仕事
お前もがんばれよ
ふるきとの冬は厳しい
せめてラジオ聞かせたい
かあきんのあかぎれ痛い
生味噌すりこむ
根雪が解けりゃ もうすぐ春だよ
畠が待っている
小川のせせらぎ聞こえる
懐かしさがしみ通る

もずが枯れ木で

もずが枯れ木で鳴いている
おいらは藁をたたいてる
綿びき車はおばあさん
コットン水車もまわってる
みんな去年と同じだよ
けれども足んねえのがある
兄きの薪割る音がねえ
バッサリ薪割る音がねえ
兄きは満州へ行っただよ
鉄砲が涙で光っただ
もずよ寒いと鳴くがよい
兄きはもっと寒いだろ

里の秋

静かな静かな里の秋
おせとに木の実の落ちる夜は
ああ母さんとただ二人
栗の実煮てます 囲炉裏端
明るい明るい星の空
鳴き鳴き よがもの渡る夜は
ああ父さんのあの笑顔
栗の実食べては想い出す
さよならさよなら やしの島
お船に揺られて帰られる
ああ父さんよご無事にと
今夜も母さんと祈ります

雪の降る町を

雪の降る町を 雪の降る町を
想い出だけが通り過ぎていく
雪の降る町を
遠い国から落ちてくる
この想い出を この想い出を
いつの日にか 包まん
あたたかき幸せのほほえみ
雪の降る町を 雪の降る町を
足音だけが追いかけていく
雪の降る町を
一人心にみちてくる
この哀しみを この哀しみを
いつの日にか ほぐさん
緑なす春の日のそよ風

利尻小唄(作詞:昭和三十六年利尻岳合宿参加者合作)

登ろ登ろよ 利尻の山に チョイセ
海を渡ってねチョイトサ鬼脇港に
着けば嬉しや あの頂が
船の疲れも吹き飛ばす
ヤーレサッテモサッテモネ
ヤーレヨイヤサーヨイヨイヨイ
海の彼方にタ日が落ちたよチョイセ
潮の夜風がねチョイトサ肌身に寒い
明日は逢うよアタック隊に
握る握手が目に浮かぶ
ヤーレサッテモサッテモネ
ヤーレヨイヤサーヨイヨイヨイ

北穂小唄

登ろ登ろうよ 北穂の山によチョイセ
横尾谷からネエチョイトサ涸沢づたい
雪渓渡ってガラ場を越えりゃ
前穂ながめる花の道
ヤーレサッテモサッテモネ
雷鳥可愛いや 岩場が恋しよチョイセ
思いこがれてネエチョイトサ尋ねてくれば
木の香 新しい 北穂の小屋に
去年の思いも懐かしや
腰のハンマーは伊達には持たぬよチョイセ
ザイルさばいてネエチョイトサチムニー抜けりゃ
霧にかすんだ あのクラックに
歌えハーケン高らかに
粋なニッカに ナーゲル履いてよ
ピッケル小脇にネエチョイトサザイルは肩に
明日は第一か クラック尾根か
岩と取り組む晴れ姿
笠のあなたに 夕日が落ちてよ
飛騨の夜風がネエチョイトサ肌衣に寒い
思い新たなあの岩尾根に
積んだケルンが懐かしい
小屋にともったランプの火影よチョイセ
夜は楽しやネエチョイトサこたつのまどい
明日はいずこか北穂の池か
お花畑は花盛り

水上小唄

恋の水上情けの橋を
好いて渡れば好かれて渡る
さめてくれるな湯原の街の
よいになまめく湯の香り
ボートなりゃこそ二人でこいで
そっとささやく岩かげ恋し
風も夏の瀬そよりと吹けば
谷川岳が手で招く
心可愛いや 湯の街娘
いつも春風春花盛り
秋は金比羅紅葉に染めて
乙女心の虹が散る
あした谷川今宵は湯檜曽
雪の大穴ジャンプで越せば
スキー疲れであの妓と飲んだ
三味の音色が忘られぬ

十日町小唄

越後名物数々あれど
明石ちぢみに雪の肌
着たらはなせぬ味の良さ
テモサッテモソジャナイカ
テモソジャナイカ
越後娘はなじょして暮らす
雪に埋もれて機仕事
花の咲くまで小半年
雪の新潟吹雪で暮れて
帰しともない人なのに
ままよ積るなら一、ニ丈
人が見えたら横町へよけて
雪のトンネル隠れ場所
恋の抜け道回り道
窓にさらさら小雪の音を
聞いて寝られる夜もすがら
やるせないぞえ雪明かり
雪が消えれば越後の春は
梅も桜もみな開く
わしが心の花も咲く

安曇節

寄れや寄ってこい安曇の踊りいい
田から畑から 田から畑から
野山から 野山から 野山から
チョコサイコラホイ
何を思案か有明山に
小首傾げて 小首領げて
出たわらび 出たわらび 出たわらび
聞いて恐ろし見て美しや
五月野に咲く 五月野に咲く
鬼つつじ 鬼つつじ 鬼つつじ
一夜 穂高のわさびとなりて
京の小町を 京の小町を
泣かせたや泣かせたや泣かせたや
小梨平でひらいた恋は
花のお江戸で 花のお江戸で
実を結ぶ 実を結ぶ 実を結ぶ
嬉し恥ずかし大町リンゴ
紅い顔して 紅い顔して
主を待つ 主を待つ 主を待つ
ござれ紅葉の色づく頃は
お湯をたずねて お湯をたずねて
高瀬谷 高瀬谷 高瀬谷
昨日四谷で今日黒菱で
明日は五竜か 明日は五竜か
不帰岳か 不帰岳か 不帰岳か
イワナ釣る子に 山路を問えば
雲の彼方を 雲の彼方を
竿で指す 竿で指す 竿で指す
ザイルかついで穂高の山に
明日は男の 明日は男の
度胸試し 度胸試し 度胸試し
槍で別れた高瀬と梓
めぐり逢うのが めぐり逢うのが
おしの崎 おしの崎 おしの崎

中野小唄

信州広くも中野がなけりゃ
ヨイトコラドッコイサノセッセッセ
何処に日の照る 何処に日の照る
エエ町がある 町がある
ドッコイサノセッセッセ〈以下繰り返し)
信州中野はおかいこどころ
中野つむぎの出るところ
中野生まれは気質でしれる
横に車は押しゃしない
信州信濃の新そばよりも
わたしゃあなたのそばがよい
島田結わせて黒姫山に
主があるなら嫁にやる
峠越えればアケビの山よ
つるべ落としの日が落ちる
婆さ何処いく三升樽下げて
嫁のところへ孫抱きに
仲のよいのに誰が水さした
町の真中に川がある

木曽節

木曽のナー ナカノリサン
木曽の御岳山はナンジャラホイ
夏でも寒い ヨイヨイヨイ
あわせナー ナカノリサン
あわせやりたやナンジャラホイ
足袋を添えて ヨイヨイヨイ
ヨイヨイヨイのヨイヨイヨイ
袷ナー ナカノリサン
袷ばかりはナンジャラホイ
やられもせまいヨイヨイヨイ
襦袢ナー ナカノリサン
襦袢仕立ててナンジャラホイ
足袋を添えて ヨイヨイヨイ

野沢小唄

ハアー千曲渡ればナア 野沢のいで湯よ
渡り鳥さえ 知らぬ鳥さえ
寄るものを ヤレサノサ

ユラユラユラリは湯の煙
チャラチャラチャラリは水の音
ササ チャラリトナー

ハアー妙高 戸隠ナア 火打もあれどよ
さまのお国は
いとしお方はどこじゃやら

たよる心のナア アケビのつるのよ
末はあまれて
可愛いお方の花籠じゃ

磨く男のナア 舞台はここによ
野沢スキーのまたとありゃせぬ
ユートピア ユートピア

大町小唄

山ヘ登ろよ ホホホイ
登ろうか山へ ヤレコノサ
みそら十里は岳の街
トコヤレコノ 大町よ
北は白馬よ ホホホイ
南は穂高 ヤレコノサ
剣立山 思案顔
トコヤレコノ 大町よ
雷鳥懐かしやな ホホホイ
羚羊いとしや ヤレコノサ
岳をめぐれば恋がれ街
トコヤレコノ 大町よ
山を下るかよ ホホホイ
下ろうか山を ヤレヨノサ
夜安曇に光る街
トコヤレコノ 大町よ

飯坂小唄

ハアー 恋のみちのくなー
恋のみちのく人目を忍ぶ
しゅびの飯坂湯の煙
よらんしょ ごらんしょ まわらんしょ
ササカサカサカ飯坂へ(以下繰り返し)
ハアー なくはカジカかなー
なくはカジカかあの妓の声か
今宵別れの十綱橋
ハアー 泣いて送ればなー
泣いて送れば河原の蛍
可愛いお方の道照らす
ハアー 硬い石でもなー
硬い石でも文字ずり石は
恋の情けのわかる石
ハアー お前どこ行くなー
お前どこ行く チャンコチャンコさげて
わたしゃ河原へ鮎釣りに
ハアー伊達と信夫のなー
伊達と信夫の中ふりわけて
わたしゃ飯坂湯の畑

白馬小唄

ここは白馬 雪渓一里
ピッケル片手にさくさく登る
登る行く手の狭霧の中で
ヤッホーヤッホー の声がする
ここは白馬 東の空に
けむりたなびく浅間と白根
レンズ覗いてピントを合わせ
日の出待つ間の一休み
ここは白馬 風さえかおる
お花畑でヒルネをすれば
夢に駒草 想いが通う
岳は八月 花盛り
ここは白馬商を見れば
鹿島 針ノ木 槍 穂高岳
西に白山 立山 剣
下はせいろの佐渡ヶ島

北海盆唄

ハアー 北海名物
かずかず コリャ あれどよ
一にな一に追分けありゃ
ソレサナ 盆踊りヨー
ア ソレカラドウシタ
一にな一に追分ありや
ソレサナ 盆踊りヨー
ア エンヤコーラヤ
ドッコイジャンジャンコーラヨ
ハアー五里も六里も
ア ドウシタドウシタ
山坂 コリャ 越えてよ
ア ソレカラドウシタ
達いにな 逢いに来たのも コーリャ
それもな帰さりょうかよ
ハアー なぜに三ヶ月
ア ドゥシタドウシタ
そのように コリャ やせたよ
ア ソレカラドウシタ
やせるな やせるはずだよ コーリャそれもな 病み上がりよ
ハアー揃うた揃うた
ア ドウシタドウシタ
踊りが コリャ 揃うたよ
ア ソレカラドウシタ
稲のな稲の出穂より コーリャ
それもな よく揃うたよ

斎太郎節

松島のサアヨー アーコリャコリャ
瑞巌寺ほどの 寺もないトエー
アレハエートソーリャ 大漁だエー
エイヤドットエイヤドット
前は海サアヨー アーヨリャコリャ
後ろは山で小松原トエー
アレハエートコーリャ 大漁だエー
エイヤドットエイヤドット

大漁唄い込み

押せや 押せ 押せ
コラ 二丁櫓 で押せや
押せば港が
コリャ 近くなる

 

 

東西歌集  1996年版

1996年7月6日発行
発 行 者  寺田 甲子男
編 集 者  山 本  勉
発 行 所  東京緑山岳会