前穂高岳 北尾根

穂高 北尾根
■日時 7月30日(土)〜31日(日)

■場所  前穂高岳

■目的  アルパインクライミング

■メンバー  Gunsou(L)、タナミー(記)

■天候  7/30 雨のち曇り 7/31 晴れときどき曇り

■タイムテーブル

7/30

06:30上高地07:00 > 10:00横尾10:15 > 12:45涸沢ヒュッテにて小屋泊

7/31

03:00起床03:30 > 05:005・6のコル05:30 > 06:204・5のコル > 07:20 3・4のコル > 10:003峰ピーク > 11:002峰ピーク > 11:40前穂高岳主峰12:30 > 15:00岳沢小屋 > 16:20上高地

■記録

計画が立ち上がったときには、すでに新宿発上高地行のさわやか信州号は予約いっぱいでした。なので今回は松本駅でステーションビバークで上高地に行きました。

上高地について最初にやることがカッパを着ることになった

上高地について最初にやることがカッパを着ることになった

7/30の天気予報が微妙でしたが、7/31が晴れ予報だったので決行したわけですが、上高地についてみれば大粒の雨が降っていました。なんとなく予想はしていましたが、それを実際に目にするとやっぱり意欲は削がれるもので、、、。売店の半熟卵入りカレーパンを食べながら”ここにいても仕方ない。いくかぁ”という気分をつくっての出発でした。

雨の河童橋。雨ってことよりも、梓川の流れが濁ってることに驚き、、、

雨の河童橋。雨ってことよりも、梓川の流れが濁ってることに驚き、、、

河童橋はもう見慣れてしまいましたが、梓川の濁流には斬新さを感じました。あの綺麗な流れはどこへやら。

徳沢園でソフトクリームを食べ、横尾で缶コーヒーを飲み、という定番化された行動をしながら横尾までくれば、雨も上がってくれて穂高屏風岩が見えたあたりでヤル気も上がってきました。

涸沢カールの雪渓はかなり小さかった

涸沢カールの雪渓はかなり小さかった

13時前には涸沢について、この日の残った仕事は5・6のコルへ上がるルートの偵察です。カールの雪渓を上がって5・6のコルから降りてくるガレ場を上がるというのが事前知識ですが、雪渓が少なすぎて涸沢ヒュッテからガレ場をつないでいけることがわかりました。せっかく持ってきた軽アイゼンとミニバイルは今回は歩荷トレになったわけでした。どこから雪渓から離れるかやどの岩が目印になるか目星をつけて、偵察は終了しました。

涸沢で山小屋に泊まるのは初めてでした。ヒュッテの本館の柱がみな一様に垂直でなかったこと、夕食のときのBGMでフランツ・リストの超絶技巧を要求されるピアノ曲が聴けたのは面白みがありました。

明日は03時起きなので、消灯時間が21時でも19時には布団に入りましたが、睡眠不足が手伝ってすぅと眠りにつくことができました。布団のふかふかさもいい具合でした。

03時に起床に朝ごはんを食べ、03:30に出発しました。ヒュッテのテラスにはハーネスとギアをつけた人がいたので、どちらへ行くのですかと聞けば同じ前穂北尾根でした。行動パターンが同じパーティがいるとは、やはり人気ルートですね。

暗い中、前日調べた岩を目指してガレ場を行き、5・6のコルへあがるであろうブッシュの切れ間を少し上がったところで小休止。すると先ほどのパーティのヘッドランプが上がってくるところでした。しかしかれらは、僕らのいるブッシュの切れ間よりも上へ上がっていくではありませんか! 暗い中をよく目を凝らしてみれば、どうやら我々は6・7のコルへ上がろうとしていたのでした。ということで軌道修正して、もはや先行パーティとなった彼らを追うように5・6のコルへ上がりました。

5・6のコルへあがるガレ場 朝日がでてきて踏み跡も目視できるようになった

5・6のコルへあがるガレ場 朝日がでてきて踏み跡も目視できるようになった

涸沢カールの対面を見ればモルゲンロート

涸沢カールの対面を見ればモルゲンロート

5・6のコルへあがる間にモルゲンロートを見ることができました。

5峰 ラインを読みながら登攀準備をする

5峰 ラインを読みながら登攀準備をする

コルへ着き、準備をしているともう1パーティが上がってきました。今日は僕らを含め3パーティが同じ時間に5・6のコルへ来たわけですした。5峰を見上げていると、ブッシュ付きの岩峰でライン取りはつかめました。ピーク直下のルートファインディングで左巻きを選びましたが、4・5のコルへのクライムダウン気味のトラバース付近が浮石が多めて少し緊張を強いられました。後続パーティは5峰ピークに上がっていたので、もしかしたらその方が確実なルートなのかもしれません。

4峰 落石への注意とルートファインディングを慎重に

4峰 落石への注意とルートファインディングを慎重に

4峰のクライムアップはなかなか楽しいものでした。岩を手でパンパン叩いたり、足で加重する前に何度か踏んでみたり、浮石対策をしながらもルートファインディングをする。こういったのはアルパインチックで醍醐味を味わえました。核心はでっかい岩のフェイスが現れている上部でした。下からみたときは奥又白側に巻きすぎるとホールド乏しいフェイスを登ることにならないか、心配していましたが、実際に回り込んでみると右上するラインが見えました。

4峰の上部 奥又白側に巻くと右上するラインが見えた

4峰の上部 奥又白側に巻くと右上するラインが見えた

そこを上がりピーク直下で涸沢側に巻いてピークへ上がりました。落石をさせることもなく、安全に登攀することができました。4峰ピークに立つと3・4のコルへは踏み跡がバッチリ確認でき、クライムダウンするようなところもないことがわかりました。

4峰ピークで 奥に見えるのが3峰 ポーズと顔に意味はないです

4峰ピークで 奥に見えるのが3峰 ポーズと顔に意味はないです

3・4のコルに降りて3峰登攀の準備をしてから休憩をとりました。持参は任意でしたが、クライミングシューズも持ってきていたので迷わず装着。まがいコンテは絶対にしないルールのもと、3・4のコルからスタカットで登攀しました。

3峰の登攀したルート

3峰の登攀したルート

1p目:Gunsouリード 20m

コルから20mくらいロープを伸ばした、トポでは3峰の取り付きになっている小さいテラスまで。終了点はきちんとありました。

3峰の出だしのピッチ トポではこの辺りが取り付きになっている

3峰の出だしのピッチ トポではこの辺りが取り付きになっている

2p目:タナミーリード 40m

3・4のコルからみたときはここから右上するフレークの先に残置されたスリングがあったので、右上するのか迷いましたが、webの記録の確認と実際に奥又白側に回ってみたところ、左上することにしました。少しあがり10m程度ロープを伸ばしたところで右のラインをとるか左のラインをとるか迷いましたが、ハーケンが連打されていることとナッツが残置されていることに釣られて、右のラインをとりました。あとでわかりましたが、この右ラインはグレードIVだったようで、たしかに難しくはありました。事前調査ではグレードIIIだったので、小さいスタンスに乗り込んで立ち上がるというムーブをしたときは「ほんとにIIIか?」と思ったほどです。ここを抜けてからはロープが屈曲するので、重いロープを引きずり上げながら、2つあるチムニーのうちの右のチムニー前までロープを伸ばしました。終了点はハーケン連打とロープスリング1本のものがありましたが、やばそうなロープシリングだったので、近くのピナクルで支点を作りました。このピッチはハーケンが豊富にありました。

2P目終了点から 登ってくるGunsouさん

2P目終了点から 登ってくるGunsouさん

3p目:Gunsouリード 20m

幅1.5mくらいのチムニーの中の階段を上がり、左へ曲がって5mほど上がり終了点に到着。

3p目 チムニーの中の階段状をあがる

3p目 チムニーの中の階段状をあがる

4p目:タナミーリード 40m

トポによれば3p目までがよく記述され、これ以上の部分は曖昧な記述になっていることがおおいですが、登ってみてわかったことは、人によりけりですがロープ確保が必ずしも必要でないくらいのグレードだからだということです。しかしまがいコンテはしないルールでやってきているので、確保しながら登ることにしました。このピッチはハーケンなどの人工プロテクションはなく、カムやピナクルにスリングを巻くなどでプロテクションをとりながら、40mロープを伸ばしました。あと20mくらいで3峰ピークでしたが、ぎりぎりに足らないかもと思い、その手前にあったハーケン3つで終了点を作りました。

5p目:Gunsouさんリード20m

体を入れずらい左上する凹角を登り、3峰のピークへ。

3峰のピーク直下

3峰のピーク直下

3峰ピークへ着くと、目の前には2峰がありました。2・3のコルというようなコルはなく、2峰と3峰の”肩”というべきようなものでした。

3峰ピークから2峰を見る

3峰ピークから2峰を見る

2峰のピークから1峰へは懸垂下降かクライムダウンすると知っていたので、ロープは必要になる。でも見る限り、ロープ確保なしでも登れるような2峰だ。じゃあコンテするか?となるのでしょう。しかしそれって本当の意味でコンテなんでしょうか? 形式的にコンテになっているだけで、互いに確保する技術がクライマーになかったらダメなのだと思います。というわけでスタカット2回(40m, 20m)で2峰のピークに着きました。クライミングシューズから解放されたかったので、アプローチシューズに履き替えました。

2峰ピークからの懸垂下降はおよそ7,8m程度。懸垂下降用の支点はロープスリングが岩峰にウジャウジャ巻かれていました。10m径のものとバックアップに7mm径のものを2つを使って下降しました。

1峰へはロープ確保が要らないように思いましたが、懸垂下降したコルが幅狭く、ロープをしまう作業するには適切でないなあと思い、そのままロープ確保して1峰へと登攀しました。

頂上についた時間帯が12時前だったので登山者がたくさんいました。なので写真を撮ってもらえました。

前穂高岳のピークで

前穂高岳のピークで

後続のパーティが山頂に上がってくる前までに、たくさんいた登山者がいなくなってしまったので、後続パーティの記念撮影カメラマン役をするため、行動食を食べながらゆっくり休憩をとりました。

岳沢小屋へ降りる最中、Gunsouさんのシューズに事件が発生。トゥを岩角に引っ掛けたらしく、ソールが剥がれてしまったのです。

シューズのソール前側が剥がれる事件が発生

シューズのソール前側が剥がれる事件が発生

 

岳沢小屋から上高地の間のお楽しみには、風穴クーラーです。Gunsouさん曰く、「いやぁ、これ家にほしいわぁ。家まで送風パイプつなげてほしいわぁ」。それを実際にすると、夏場の冷房代よりもウンと高いです、と突っ込んでおきました。

上高地へ降りて河童橋を渡ってからやることは、ソフトクリームを食べることと決まっています。うまかったです。

上高地へ降りてきて河童橋を渡る

上高地へ降りてきて河童橋を渡る

前穂高岳北尾根、怪我もなく安全に登攀することができました。

使用ギア:ロープ(60m,50m)、ヌンチャク10本程度、180cmスリング、カム(フィンガー〜ハンド)

■コメント:Gunsou

晴天の 前穂北尾根 気持ちよし

■コメント:タナミー

初めて前穂高岳に登ったとき、そのとき初めての穂高連峰でしたが、山頂から北を見ているとロープを使ってするすると岩から降りてくる人たちを見つけました。「すっげぇ楽しそぅ。ぜったいやろう」と思ってから数年経って、今年それができました。

アルパイン入門ルートと言われますが、ルートを登った感想から言えば、初心者同士できたら間違いなくスリリングな思いをする、決して楽勝なルートではないことでしょう。真面目にアルパインを経験したものからすれば、どのピークも大してグレードが高くない、ルートファイングにも特に困らない、おそらく面白くないという感想が出てくるかもしれません。

まだ登ったことがないもの同士の今回の山行は、まだ登ったことがないだけの楽しみがありました。

計画を立てたり、アプローチルートを確認したり、敗退判断の基準を相談したりの事前準備など。登攀中はより確実に登れるルートを見つけたり、ロープ出す出さないの判断したり、伸ばしたロープの長さで決めるかやロープの屈曲による流れにくさで決めるかのどこでピッチを切るか考えたり、過去の人たちの記録と照らし合わせて確認をしたり、などなどのその場の判断をして着実に登攀をしていくことが楽しく感じられました。しかし、最大の面白みは、山頂に抜けること、でした。

穂高にある他のアルパインルートのことが頭に入っている状態で、横尾から涸沢、前穂高から上高地に歩く最中も楽しみがありました。

横尾から本谷橋の間では、屏風岩の全景が望めました。

屏風岩を正面から見る

屏風岩を正面から見る

去年の夏合宿でT4尾根からT4へ登ったわけですが、そのときの1ルンゼには全く水はなかったです。しかしこの日もそうですが、前日までの雨によって1ルンゼの上部には水が流れていました。こんなときに1ルンゼを詰めたくはないなぁと思いました。

屏風岩東壁を右側から見る

屏風岩東壁を右側から見る

今年の夏合宿は東壁ルンゼルートの下部にいく計画ですが、横から見ると東壁下部のスラブが際立って見ることができました。スラブっていってもかなり傾斜あるじゃないか!おまけに雨でビジャビジャだし。遠目からみるとなんだか登れるようなスラブ出ないような気がしました。

屏風岩右岸壁を正面からみる

屏風岩右岸壁を正面からみる

横尾からは見ることができない、屏風岩の右岸壁をじっくりと観察できました。画面中央からすこし左にある滝はかなりの迫力がありました。どんなルートがあるのかなぁとトポと照らし合わすと、落ち口の上を詰めたところから取り付く大ジェードルルートというのがあるんです!「まじかー、あんなとこに登れる可能性を見出したってのはすげえなぁ。」最近は再登者も少ないようで支点などは朽ちているでしょうけど、いつかはルート再開拓みたいなことをやってみたいと思わせてくれました。

涸沢から見る北穂高方面

涸沢から見る北穂高方面

涸沢から北穂には登ったことありますが、一般登山道の南稜でした。そのときは東稜とかゴジラの背とか、そういうバリエーションルートなんて知らないときだったので、自分がたどるルート以外はほとんど見えていなかったのですね。今回は東稜にいくならどこから一般登山道から離れてどのコルから取り付くべきか、そういう視点で眺めることができました。

岳沢小屋のテント場から吊尾根方面を見る

岳沢小屋のテント場から吊尾根方面を見る

奥穂高岳南稜のルートライン取りを見定めようと岳沢小屋から眺めましたが、ここからの眺めでは南稜がスカイラインをつくる稜線でなかったからか、どこから取り付くかなど見出せなかったです。参考記録を書いている今は、webの記録と照らし合わせて「あーあそこか」というアハ体験ができました。

 


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