西穂高岳 西尾根

曽山、江原(記録)

16日午後11時西国分寺駅集合。12月末に入会して初めての本格的な山行。岩トレとは違う緊張を感じながら曽山さんの車で新穂高温泉へ向かう。松本午前1時30分、安房トンネル午前3時。眠い目をこすっているとトンネル出口の自動料金所で1万円札を持ったおばばが車を下りてウロウロしているのに出くわす。うすら悲しい光景に眠気も吹き飛び、あれこれ想像をめぐらす。新穂高温泉着午前3時30分。車内で仮眠。

17日、7時30分起床。昨夜は月に傘がかかっていたが今朝の天気は晴、笠ヶ岳へ続く稜線が高くそびえている。睡眠は3時間あまりだが眠りが深かったのか、気持ちが張っているのかあまり眠気を感じない。9時頃出発。しまった雪の林道を歩く。曽山さんの足元からキジ(鳥のことです)が飛び出しあたふたと飛び去る。1時間ほど歩いて避難小屋の前で休んでいると同じコースを登るという京都のパーティー(3人パーティー。うち1人はは単独で槍に向かうとのこと)が追いついて来た。以前に西尾根を登ったことがある様子でなんとなく心強い。簡単に挨拶をした後、我々が先行し小屋の裏から尾根に取り付く。

林道を外れるとすぐに股の付け根までもぐるラッセルとなり初心者の自分には先が思いやられる。浮かない気持ちでワカンをつけて再出発。案の定2時間ほどで疲労困憊、足元が怪しくなる。おまけに寝不足がこたえはじめて目を閉じるとフワフワと良い気持ち、立ったまま眠ってしまいそうだ。正午頃からは雪。樹林帯ではルートガイド通り倒木が多く踏みぬくと首まで埋もれてしまう。落ちるとなかなか抜けだせないので怪しげなところでは慎重に進む。いいかげんへばった頃後続パーティーが現れる。「これでトレースが出来る!」と不届きにも喜んでいるとそれを見透かしたようにすぐ上で休憩してしまい、またラッセル。14時30分、標高2,200M付近でツエルトを張る。曽山さんの携帯電話に連絡があり、明日会長が新穂高温泉にいらっしゃることを確認した。

翌18日も雪。3時30分起床。明るくなるのを待ち、6時出発。そろそろまばらになり始めた樹林帯を進む。カラカラとロープウェイのケーブルが動く音が聞こえる。辺りは雪深い深山の趣だがすぐ隣の尾根にはロープウェイが動いていると思うと不思議な感じだ。7時、京都パーティーのテントの脇を通る。標高をかせぐにつれ次第に斜面の傾斜が増すが、雪質が変わりラッセルも楽になった。ぐっすり休めたので体調も良い。ジャンクションピ-クへの登りで森林限界を越える。ルートガイドによるとこの先、ジャンクションピークと第二ドーム間のコルⅠ、第二ドームと西穂ピーク間のコルⅡ、コルⅡからピークまでの登りが核心部だということだったが、ガ
スが濃く観察が出来ない。初めての雪稜なのでどのような光景が広がるのか楽しみにしていたのだが残念だ。コルⅠは左に張り出した雪庇に注意しながら通過。第二ドームへの登りからロープを出してもらうが肝心のビレイ方法を思い出せず少し時間がかかる。この後ピークまでは支点の選択やロープさばきに手間取り時間がかかってしまった。自分のような初心者とロープで結ばれた曽山さんが歩き難いのではないか?登りのペースが落ちているのではないか??等々山登りとはあまり関係のないことを考えるうちにピークの直下まで来てしまった。

気が付くと流れる雲の間に青空が見えている。ようやく余裕が出来てガスの間に時折姿を見せる奥穂や槍を探しながら歩くうちにピークに到着。14時30分。冷たい風が吹いているが雲の間には青空がのぞく。黒々とした奥穂が随分高く見えてややフクザツな気分になるが、登ってきた西尾根に目を移して満足に浸る。今日はほとんど休憩を取っていなかったので行動食を口に詰めこみ、写真をとってから下山。先を行く曽山さんの思いは既に温泉へと飛んでいるのか安定した足取りでスタスタ歩いてゆく。それにひきかえアイゼンをつけて岩稜を歩いた経験がない自分は我ながら危なっかしい。京都のパーティーと前後しながら再びガスに包まれた稜線で幾つかの小ピークを越えるが、いちいち足元に気を使うので結構疲れる。だが、標高を下げるに従い風も弱まり岩も消える、独標を越えて幅の広い尾根に出ると視界も開けた。右手に見えるロープウェイの駅を意識しながら西穂山荘目指して駆け下りる。山荘着15時50分。最終ロープウェイの時刻を確認すると16時30分とのこと。雪を頬張り、ロープウェイの駅までもう一走りする。ロープウェイ駅着16時25分。観光客に混じって新穂高温泉に下る。

京都のパーティーとは駐車場で再び一緒になった。同時に入山し、二日間を前後して歩いただけに打ち解けた気分。今日中に帰宅するというお二人とお別れして、我々は会長と温泉旅館で一泊。新穂高温泉は匂いも少なく透明なお湯の温泉。フロで温まって酒を飲んだら疲れが出て8時過ぎに就寝、そのまま朝まで熟睡。翌19日午後帰京。


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