2018夏 甲斐駒ケ岳黄蓮谷~赤石沢奥壁中央稜ソロ継続登攀

今年の夏はどこに行くか?最近沢にも通っているし、せっかくだから一粒で二回おいしい沢登りと岩登りの継続登攀に挑戦!ソロのおまけつき!ソロ継続登攀となればルート選定、荷物、登攀ギアが鍵だ。ある程度知っている山域であり、ランドマークとしてはっきりしている甲斐駒ケ岳黄蓮谷~赤石沢奥壁が第一番目の候補となった。

冬の黄蓮谷右俣は去年天候と氷に恵まれ遡行ができている。ルートは把握している。また赤石沢奥壁は昨年夏に取りつきまでは確認しているのでルートファインディングで迷うこともない。家族がちょうど蓼科に用事があるので登山口までさらっとよってもらえばよい。ということで今年の夏は甲斐駒ケ岳黄蓮谷右俣~赤石沢奥壁中央稜の継続登攀に決定!

■日時 8月16日(木)~18(土)

■場所 甲斐駒ケ岳黄蓮谷右俣~赤石沢奥壁中央稜

■目的 アルパイン(沢登り・岩登り継続登攀)

■メンバー ヨネ

■タイムテーブル
8/16(木)
11:00 矢立岩登山口
13:00 林道終点
13:10 尾白川入渓点
14:00 ワイヤー滝
16:00 黄蓮谷
16:30 千丈滝手前で幕営

8/17(金)
6:25 千丈滝手前
6:30 坊主の沢出合・千丈の滝
7:15 坊主の滝
8:45 右俣・左俣出合
9:30 奥千丈下
11:30 烏帽子沢
14:00 奥の滝
17:00 甲斐駒ケ岳登山道

8/18(土)
5:00 赤石沢奥壁中央稜取りつき
7:30 2P
8:30 3P
11:00 4P
12:00 終了点
15:00 登山道
21:00 竹宇神社

初日は家族の車で矢立岩登山口まで送ってもらう。天気予報では夕方から雨。ツェルトを張るときに濡れるのはやだなあと考え、面倒くささを感じつつ、見送られながら薄く霧がかかった林道へと出発した。時間は11:00であるから千丈の滝付近のテン場まではいけるか。雨がもってほしいと祈りもむなしく林道の途中から降ったりやんだりである。

林道はあちらこちらで土砂崩れが起きていて大荒れ。コンクリートの土止めが完全に崩れているところもあった。

それでも道は平らで歩きやすい。

林道の終点には明らかなフィックスロープが張ってあり間違いようがない。10分で沢床に降りる。雨が続いたせいか水は濁っている。

水量も多い気がする、この先の滝を考えると、甲斐駒ケ岳まで遡行できるのだろうか、継続登攀は少々無謀だったかと憂鬱になる。雨がやみ少し青空も見えていたのが救いであった。そそくさと沢靴、スパッツ、手袋身に着け歩き出す。

はっきりしない天気だが水温は冷たくなく、沢床の歩きは快適である。すぐに滝、滝、そしてまた滝の連続である。

この辺りはまだ河原も広くのんびりした雰囲気がある。

淵のある滝では飛び込みが楽しめそうだ。

ようやく鞍掛沢出合に到着。鞍掛沢も沢登りが楽しそう。

尾白川本谷をそのまま進むとまず出てくるのがワイヤ―がかかった滝。下段からではワイヤーに手が届かないので、まずは真ん中すこし左寄りの階段上を上る。中段に登るとワイヤーに手が届くのでそのままつかまりながら上がっていく。高度はあるがホールドもあるしぬめりも少ないのでそれほど怖くはない。

倒木が階段のように滝に横たわっている。滝上部がつるつるしているのでそのまま巻いてしまう。

岩魚が住んでいそうな淵をもつ滝が次から次へと出てくる。

滝が次第に巨大化してくる。だんだんと自分が小人になったような感じがする。

磨き上げられた巨大なゴーロがチョックストーンのように本流にはまっている。

噴水の滝まで来た。ここで雨がまた降ってきた。予報では3時以降から降り続けるということ、今回はやまないかも。少々時間がはやいもののツェルトを張れる場所を探しながら進む。

黄蓮谷出合までようやくきた。出合は明確であるもののいくつも沢を越えているので注意深く進んでいないと、見逃してしまう。

 

千丈滝手前で沢から3mほど上がった場所に平らな場所をみつけた。沢に近いために湿った感はあるものの、寝るには十分。この先は千丈の滝を高巻しなければテン場にはつかない、次第に暗くなってきた、雨脚も強いことから1日目の幕営をここにする。

すでに雨が強くなっているのでまずはタープ。今回はアライテントのビバークタープを利用する。一人であれば下にツェルトを張っても十分な広さだ。寒いのでたき火を起こしたいと、斜めにはり、一か所は火があたってもよいように3mほどの木でタープを支えておく。

タープを張り終えたらツェルト。少々寒いので入口、底ともにふさいでテント形式にする。中に入ってみると空気が暖かい。これならゆっくり寝れる。

薪を集めてきてたき火の準備をする。しかし沢に近いせいか薪が芯まで濡れているので火がつかない。表皮を削り細くしてからくべてみたものの太い薪に火が移らない。30分ほどいろいろ試行錯誤したのちに今日のたき火はあきらめた。

夜には雨が本降りになる。タープが雨をしっかりガードしているのでツェルトに雨だれが来ることはない。背中にぴとっとすることもなくぐっすり寝る。

2日目は朝5時に起床、軽く食事をしてすぐに出かける準備をする。6時半にテン場を出発する。空には抜けるような青空。昨日とは打ってかわった天気にウキウキしながら歩き出す。気温は上がるかもしれないがやはりすっきりした天気の中、沢を歩けるのは喜ばしい。

歩き出すと坊主の沢の出合。緑の切れ目から滝が見える。

そしてすぐに千丈の滝。まったく登れる気がしない。

アイスクライミングの威力とはすばらしいものだ。ここは右岸を高巻する。巻き道はしっかりついている。

千丈の滝を越えるとすぐに左岸のリっぱなテン場だ。ここは沢から8mほど上がっているので地面が乾いている。昨日ここまで来ていたら快適なたき火も楽しめたかもしれない。

 

そして冬にも来ていた坊主の滝。圧巻である。冬に来ているとフリーでも登れそうなくらいのまったりした滝であるが水が流れているときに見るとまったく隙がない。チャレンジしようとする気すら起きない。

ここは左岸のがれ沢から巻き道に入る。

進んでいくうちに違和感を感じた。坊主の滝はすでに越えたにもかかわらず巻き道は相変わらず明確に上につながっている。ついに前方に左俣っぽい滝まで見えてきてしまった。そのまま進んでもよかったのだが、せっかく来たのに滝を登らずではつまらない。

いったん6丈沢出合まで下りて探ってみると、沢に降りられそうな場所を発見。30分ほどロスをしたか。ここから二俣に向かう。

そして到着した二俣。ようやくきたー!!!

二俣を越えたところにある滝はいまいち登れそうにないので巻き道に入る。ここは逆層になっているので降りられるところがない。奥千丈に入る直前でスリングがかかった木を見つけた。初ロープで、懸垂下降で降りた。

ついに奥千丈の始まりである。

水流は少々強いものの、手がかり足がかりは豊富である。

もちろん滑れば”スタートに戻る”である。下を振り返ってみると子供も喜びそうな天然のスライダー。慎重に足を運んでいく。

インゼル付近になったら草付に入る。ここにも1貼程度のテン場がある。芝生の上で気持ちが良い。岩のバンドに沿って進むとふたたび沢に戻った。

ここから先はスライダーがなくなり、ホールドが大きく登りやすい滝になる。

しかし烏帽子沢手前の滝は水流が強い上にぬめっていて登ることができない。ほんの5mであるがここでつるっといけば致命的である。またクラックもあるがここもこけでぬめっている。

しょうがないので烏帽子沢側から高巻をする。

この高巻はおよそ一時間ほどかかった。常に右側に行くよう意識してないと簡単に烏帽子沢に流されて、本流から外れてしまう。ポイントポイントでトラバースを繰り返すうちに、トポに出ている芝生のテン場に出る。確かに一日目にここまで来ていれば二日目は楽だろう。

そしていよいよクライマックス。奥の滝である。

奥の滝一段目は冬でと同じ左岸の巻き道をさらっと進む。

2段目の滝である。

左側面ぎりぎりにハーケンがあるのだが、その上が苔でぬめっていて快適ではない。

ここでチャレンジしてもあまり意味がないので、左岸から巻く。結果としてはこの巻き道は3段目も一緒に巻いてしまった。

これを越えれば甲斐駒山頂まで詰めるだけ。壁際に忠実に詰めていくと、どんぴしゃでコルに出た。5分で頂上についてお参りだけする。

3日目はついにハイライトである赤石沢奥壁。これをこなすことで黄蓮谷~奥壁の継続登攀となる。朝4時に起き、ロープをソロクライミング用にセットし、ランナー、カムの整理をする。5時から登攀開始である。

一ピッチ目はまずワイドのクラック。寝ているのでそれほど難しくない。しかし早朝であり、昨日の疲れが残っているために体が酸素を求めてすぐに息をついてしまう。それでも体を岩に挟みながら少しずつ上に進む。一番上まで行ったところで右側に回り込む。とりあえずクラックを抜けて一安心。ここから上の広い足場に上がるところが悪い。手がかりはないために手のひらの摩擦で体を挙げるか、左側の岩に突っ張りながら体を起こすか?迷ったあげく左側に足を突っ張りごろごろと体を回しながらバンドに上がった。すぐ上に草付が見えている。左側の祠のようにぽっかりしている穴から、垂れ下がっている木にぶら下がり進む。去年の夏にきたダケカンバの木があるバンドに着く。ここでいったん切るか迷ったが、時間短縮のためにそのままフェースを進む。フェースはクラックに指を入れて体を起こし、薄いカチに足を上げる。あとはバンド沿いに進むだけ。

取りつきの写真を忘れてしまったので、ロープを上り返してから下の写真をパチリ。

二ピッチ目は草付。まっすぐに登るのは不正解。

ここは左側の踏み跡をたどれば自然に3ピッチ目の取りつきにつく。

三ピッチ目はまずはA0。ロープアブミがすでにかかっている。

これを利用して、ランナーをかける。このランナーにもう一本のスリングアブミを足せばあっけなくホールドに手が届く。ワイドクラックはちょうど体がすっぽりはまる幅である。体はしっかりはまっているので怖さはない。ただあまりにも幅が絶妙にほとんど体を動かせない。下部は体をにじりにじりと2,3cm程度ずつくらいしか体を動かせなかった。

四ピッチ目、でました立派なクラック。

たしかにクラシックルートにあるクラックとしてはなかなか難しいレベル。しかしクラックは寝ているし、中にホールドもある。フリーで5.9程度のクラックがリードできるのであれば頭を悩ます必要もない。そしてここでカムの三番と四番を使うことができた。よかった、わざわざ持ってきたかいがあったよ!

終了点につく。ちょっとした日陰のコルになっているので靴も脱ぎ、足も投げ出して栄養補給。

ソロだと常に動き続けるために体力を回復する暇がない。

途中踏み跡が消えたりしたのと、あまりにも疲れていたたために登山道に出るまでに三時間もかかってしまった。

ハイ松地帯に入りそろそろ登山道に近い。雲が出てきたので景色がいいうちに記念写真。

岩小屋で荷物を整理してすぐに下山。竹宇神社に着いたのは22時少し前であった。


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