甲斐駒ケ岳 赤石沢奥壁Aフランケ 赤蜘蛛ルート

東出勉、正木誠人、逢沢峰昭、徳永洋三(記録)
7/19の晩、23時に韮崎駅に集合し、そこからタクシーで駒ガ岳神社へ。軽く酒を飲んで1時頃就寝。次の日(7/20)、4時に起床し、恐怖の黒戸尾根を登り始めた。五合目を過ぎた辺りから登るたびに左足の皿付近に痛みを感じ始めたが、登るのが困難というほどの痛みではなかったので、そのまま八合目の岩小屋を目指した。しかし、黒戸尾根は私にとってキツイところで、到着の順番は、9時の東出氏、10時の逢沢君、10時半の正木氏、最後が11時の私であった。私がそこに到着したときには、東出さんと逢沢君は中央稜左ルートへ向けて出発した後であった。私は正木さんに「30分ほど休ませてもらえませんか?」とお願いして、休息後すぐに二人で中央稜へ向かった。ルート図を見ていてもなかなか取付の場所が特定できず、かなりお年を召しておられる正木さんに「ここでいいンですかねぇ?」と尋ねると、彼は「目が薄いから、よくわかンないなぁ」と言う。仕方がないから、ルート図を頼りに自分が「ココダ!」と思う場所へ取付こうと、ハーネスにザイルを結ぼうとした瞬間に大粒の雨が降り始めた。その時、「東出さんたち、今頃雨に打たれて登っているンだろうなぁ」と思いながら、小雨になるのを待って岩小屋へ戻った。一時間後、東出さんと逢沢君がずぶ濡れになって戻ってきた。東出さんに中央稜の取付を確認したら、私が登ろうとしたルートはどうも中央稜ではないようで、雨が降らなかったら、危うくその間違ったそれを登るハメになっていた。アブナイ、アブナイ。
7/21は甲斐駒へ来た最大の目的であるAフランケ赤蜘蛛の登攀日であった。天気はほぼピーカンで、4時頃に岩小屋を出発したのはよいが、ここも取付がなかなか特定できず、4人でウロウロしながらようやく見つけた。東出さんと正木さんが6時に取り付き、その後を追うように逢沢君と私が6時半くらいに取付いた。正木さんがフォローで1ピッチ目の小ハングを超えようとしたところ、いきなりピンが抜けてしまい、ぶら下がった。後発の我々はそのピンがないと登れないので、その修復作業に手間取ってしまった。1ピッチ目は逢沢君がリード。2ピッチ目は私がリードしたのであるが、そこのディエードルのクラックは、ほとんどジャミングのみで登らねばならず、おまけにピンが遠いためA0も出来ない状態で、フレンズを持っていなかった私にとって為す手段の尽きた極めてキビシイ状況に陥ってしまった。この状況に及んで精神的に追い詰められた私は、「クラックの岩トレ、しておけばよかった」と思うと同時に、このまま突っ込むと落ちるかもしれないという思いが浮かび、2ピッチ目の真中辺りでガタッ震るになってしまった。何か手段はないか、と考えていると、少し降りたところに小テラスがあったので、そこで逢沢君をビレイして代わりに登ってもらおうと思い、彼とチェンジした。彼もかなり苦戦していたようであるが、なんとか登っていった。11時半頃に大テラスに到着するが、他のパーティ(3人)が東出さんたちの後ろに取付いていた。そこで待つこと2時間。先行パーティが全く前進せず、ジーっとしている。「何をしているのか?」と思った私は、「どうしたのですか?」と尋ると、「前の人は恐竜カンテに居ます」と、なんだか要領の得ない返事が返ってきた。それから待つこと1時間。ようやく先行の人たちが前進し始めた。恐竜カンテ手前の6ピッチ目は私がリードしたが、ここは概してほんとうにピンが遠い。なんとか登ってアブミビレイを始めた。これもなかなか大変なもので、尻や足が痛い。つるべで逢沢君が7ピッチ目をリード。左足に痛みを感じていた私は8ピッチ目も彼に任せて、Aフランケの岩小屋に到着したのは7時半頃であった。御互いにやり遂げたという感動のあまり握手して八合目の岩小屋に到着したのは10時であった。
7/22は、東出さんたちは中央稜左ルートを登るようで、昨日の赤蜘蛛で完全に左足を痛めていた私は、じっと待っていても仕方がなく、又明日の下山の際に時間的にかなり皆に迷惑をかけてしまうと予想できたため、先に一人で下山することにした。痛んでいる左足をかばいながら歩いていると、今度は右足を捻挫したようで、あまりの激痛で泣きたい気分になってしまった。おまけに黒戸尾根は長い。さらにそれを思うと気の遠くなるような心境になってしまった。それでも下らねばならず、なんとか駒ガ岳神社に到着したのは5時半頃であった。すなわち、約9時間もかかったのであった。
〈コースタイム〉
 7/20:駒ガ岳神社4時発~八合目岩小屋11時着
     間違った中央稜取付12時、即敗退。
 7/21:八合目岩小屋4時発~赤蜘蛛A取付6時半~大テラス
     11時半~Aフランケ岩小屋7時20分~八合目岩小屋
     10時着
 7/22:八合目岩小屋8時半発~駒ガ岳神社5時半着
 甲斐駒ヶ岳/赤石沢奥壁/中央稜左ルート(敗退)

(中央稜左ほか:記録 逢沢)
 今回のメンバーは、東出さん、徳永さん、OBの正木さん(63歳・すばらしい登攣意欲)。韮崎よりタクシーで駒ヶ岳神社まではいる。夜間で¥7000位だった。2時間ほど仮眠して出発。
駒ヶ岳神社 4:00
5合目   8:20
七丈小屋  9:20
八丈岩小屋 10:30
岩小屋を確保して、東出さんが待っていてくれた。今日中に一本登るべく、奥壁に向かう。東出さんは、中央稜、左ルンゼを登っているので、赤蜘蛛同人が最後のセクションとして開いた中央稜左ルートにとりつくことにする。ガイドには☆が付いていないので登られているか、ちょっと心配。
<中央稜左ルート>東出、逢沢
取り付きは、中央稜を左ルンゼ側に回り込んだところの湿った凹角で、上に向かってさびたボルトが連打されているので分かった。ビレイ点は、ボルトが一本ある。
1P目:凹角の左側に連打されたボルトをたどる。よく効いている。15m程登り、ボルト2本のビレイ点があったので、ここで切る。
2P目:花崗岩のきれいなフェースが上まで続いている。10mほど登るともっとしっかりしたビレイ点があったのでそこで切り、ハンギングビレイ。ここが1ピッチ目のビレイ点だろう。
3P目:ここから一直線にボルトラダーがのびている。上のビレイ点は見えないが行ってみる。きれいなフェースだ。錆びたボルトや、リベットなどいろいろある。タイオフなどして登るとしっかりしたビレイ点があった。30m程。東出さんが登ぼってくると同時に、夕立がやってきた。まだ昼である。この上はどうなるか分からないし、ビレイ点がしっかりしているので、下降することにした。2ピッチの懸垂で取り付きにおりた。
取り付き11:00、下降13:00

7/21 
<Aフランケ赤蜘蛛ルート>東出、正木 / 逢沢、徳永
よく考えると夏の本ちゃんで、僕は、谷川以外に行ったことがないし、人工主体のルートは初めてである。その意味で、学ぶことの大きなルートだった。また、まだまだ、未熟なことに気づいた。
7/22
再び<中央稜左ルート> 東出、逢沢、正木
徳永さんが帰ることになり、3人で再び中央稜左ルートに向かう。今日も朝からピーカン。
1P目:前回の2ピッチ分のばしてアブミビレイ。30m・A1。
2P目:ボルトラダーをたどって、ビレイ点へ。30m・A1。ここまでは、前回どおり順調。
P目:すぐ上には、第2バンドの草付きが見える。ボルトを2本たどると、3本目がない。折れた跡がある。東出さんに代わってもらう。ここを、デシマルの付きそうなフリーで越えると草付きに出て垂壁の下まで。25m位。
4P目:ここから垂壁を25m・A1。岩も硬く、おおむね快適。このピッチのビレイ点はハング下の、ザレたテラスである。ここから振り子トラバーストらしい。このビレイ点はなんとキラキラ光った、ハンガーボルトがあるではないか。さて、どこに振り子するのか?それが問題だ。
5P目:東出さんがとりあえず、10m程ローワーダウンしたが、ビレイ点とおぼしきところは見あたらない。おそらく核心とおぼしきハングに切れ目は、かなり左である。東出さんは、ハング下の草付きラインを非常にきびしいトラバースをして、切れ目の下に達した
が、ビレイ点はなく残置も見あたらなかったそうだ。そして、これまた見ている方も手汗握るトラバースで戻ってきた。ここで、敗退と決めて下降する。
1ピッチの懸垂で、2ピッチ目の終了点につき、さらに2ピッチ下降して取り付きに戻った。14:00。後に、登山大系を見ると、10m振
り子気味に下降して、ハング下まで20m登るそうだ。ピンはおおむね効いていて、2P目はそれなりに楽しめると思います。核心はどのように抜けるのか、興味深いと思います。

7/23 七合目 7:30
 駒ヶ岳神社 10:15

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