北岳バットレス 第4尾根

北岳バットレス

■日時 8月26日(土)〜27日(日)

■場所  北岳バットレス 第4尾根

■目的  アルパインクライミング

■メンバー  タナミー(記)、some2くん

■目的  アルパインクライミング

■天候  8/26 雨のち晴れ、8/27晴れ

■タイムテーブル

8/26  07:30芦安駐車場 > 08:30広河原山荘 > 10:50白根御池小屋 > 11:20二股 > 13:00C沢とD沢の出合 > 13:30下部岸壁取り付き >(第5尾根支稜)>16:00横断バンド > 17:20第4尾根取り付き

8/27  04:00起床 > 05:50第4尾根登攀開始 > 06:101p目終了 > 6:402p目終了 > 07:003p目終了 > 07:304-5p目終了 > 8:506p目終了 > 9:407p目終了 > 10:008p目終了 > 11:00北岳山頂 > 14:30広河原山荘

■記録

タナミーは2年前に登ったことがあるのだが、登攀日前日は雨、当日はガスの中という状況で景色も全く楽しめず、濡れた岩を登った記憶しかない。下部岸壁で横断バンドが見つけられずオロオロしたし、前日の偵察では雨でビショビショになったしで、あまり良い記憶しかないのである。

some2くんが行きたいというので、良い記憶に塗り替えたく、行ってきた。

金曜夜、突発的に発生した仕事のおかげで出発が日付を超えてしまった。車を走らせて芦安駐車場に着いたのは03時すぎだった。普段通りなら05時台のバスか乗合タクシーで行くところだか、睡眠不足すぎることと雨が09時過ぎまで降る予報になっていたので、07時に起床した。乗合タクシーだと人さえ集まれば直ぐに出発してくれるようで、我々2人でぴったり満員になり直ぐに移動できた。

広河原に着けば、予想通りなのだが、ポツポツと雨が降っていた。が雨具もつけずに白根御池小屋を目指した。水の補給が目的だったが、樹林帯の中なら雨も気にならなかったからだ。

広河原の吊り橋 雨がしとしと

その途中、数分だけ雨具を着るくらいの雨足になったが、白根御池小屋に着いた頃には雨は上がり、空が明るくなっていた。

「ひ、ひとがお、おおい。」

土日とも雨がちな週末が続いていたので人が集中したのか、人がたくさんいた。水を補給して、そそくさと二股目指して出発した。

30分後、二股に着いてからは、some2くんにアプローチを任せることにした。トポの概念図と実際の地形を見ながら、目指すC沢とD沢の間を探していた。

トポを見つめて

「ここを入りたいと思います。」というので理由を聞いてみると「ここがD沢だと思うからです。トポの距離関係から行ってもうD沢かなと」。

実際のところ、タナミーはどこから登山道を外れるか、まったく覚えていなかったし、間違ったところを入ると戻るのが大変なので、まじめに考えた。トポの情報だけを頼りにするのでなく、登山地図や下山の人に聞くなどをしてみたら、もうすこし登山道を上がってから判断するのがよく思えた。山と高原地図の「シナノキンバイの群落」より上側にC沢D沢があるのだが、花が群生しているところにいなかったのだ。もし登山道を上がりすぎていても戻るのは登山道なので、誤った道なき道を進む・戻るよりはよいかと。

このやりとりをしている間にバットレスを包んでいたガスも晴れてきて、進もうとしていた方向がどうやら第1一尾根と第2尾根の方面だとわかってきた。some2くんも納得して登山道を進むことになった。

D沢から見上げる第4尾根
ガスがなければ尾根が見えるので間違えないが、、、。

シナノキンバイかどうか、花を知らぬタナミーにはわらかないけれども、沢筋が2本見えてきた。その景色は見覚えがあるもので、これがC沢D沢だと確信できた。some2くんは「C沢とD沢ってこんなに近いすか?」というコメント。トポの概念図って、ほんとうに”概念図”なのだ。縮尺は何も考えていないのである。

一般登山の人たちが途切れたところで、C沢D沢の間をよじよじのぼること30分、ブッシュ帯を抜けて下部岸壁が目の前に現れた。

ブッシュを抜ければ下部岸壁が現れる

下部岸壁の取り付きとしてDガリーか第5尾根支稜を登るのが一般的である。Dガリーは午前中の雨でしっとり濡れていたので、第5尾根支稜を登ることにした。第5尾根支稜1p目は稜線を横切るトラバースで15mほど。2p目はスラブの傾斜だったので、some2くんがリードした。ビレイ支点としては貧弱な立木で短く切ってくれたので、次のピッチで60mいっぱい伸ばして、Dガリーの終了点についた。

その後、横断バンドが見え、順調に、、、。

というのは間違いで、Dガリーの上部というべき苔が生えたガリーをもう1ピッチ登ることになる。2年前の初めてのバットレスで道迷いしてしまったところだ。濡れている岩とガスの中で効かぬ視界が進むべきルートをわからなくさせていたのだ。

苔むしたガリーではカムをセットしても安心できず、苔の生えてない小さな部分を見つけてナッツでプロテクションをとった。

Dガリーの上部というべきの苔むしたルンゼを40m位登る

濡れていない岩と視界の効く横断バンドとCガリーの上部は、前回の記憶とはガラリと変わって、苦労がなかった。第4尾根の取り付きに向かう左折の目印「4」もしっかり見えた。このヒドンスラブでは念のためにロープを出して抜けて、問題なく取り付きについた。

ヒドンスラブ Cガリーからはたしかに”隠されている”スラブだった

先客のお二人はもう夕食も済ませて、眠りにつく前だった。明日の出発の時間などを話したらもうツェルトに入ってしまった。

取り付きはツェルトが3張りは張れる広さだが、”たいら”なのは先客のとった二人用スペースのみだった。なくなく傾斜地にツェルトを張り、夕食を食べた。

夕日がとても綺麗だった。縦走していた時はこの時間がとても好きだったのことを思い出した。一人で歩いていたので時間はたっぷりあったのだ。

夕日が下から雲を照らす きれいだった

傾斜の方向に体を伸ばしてシュラフに包まって寝たが、何度となくずり落ちて起きることになった。そんな格闘をしていたら朝4時を迎えた。

朝の強目の風が吹いていたが、傾斜したツェルトの中ではガスをつけることもできず、ツェルトをタープ上に張り直して風を凌ぎながら朝食を食べた。

先行パーティが登り始めた。リードクライマーが1.5m登り、口にしたのは「岩が冷たい、、、」。8月下旬とはいえ3000m近くの05:00はそういう気温なのだ。

先行パーティが第4尾根に登る

我々が登り始めたのは、05:40。太陽は雲海から出ていたが、まだ岩は冷たかった。それでもつるっとしたクラックにドロップニー気味にフットジャムを決めて1つめのプロテクションを決めたときには、普段どおりの気持ちになれた。サクサクと1p目を終えてsome2くんを迎えて、2p目をリードしてもらった。

1p目を登る

2p目のスラブ帯はとるルートによっては難しくも優しくもなるが、残置ハーケンに導かれて難なく2p目を終える。そのころには太陽が本気を出してくれたので、羽織っていた雨具のジャケットを脱いだ。

日差しが出ると、あつかった、、、

3p目も緩傾斜。クラックの多いスラブでカムをセットしようとすると残置ハーケンが目につく、そんなピッチだった。

短い4p目をsome2くんに登ってもらったが、彼はマッチ箱の上の懸垂支点までの5p目をつなげたようだ。

マッチ箱につづく稜線(5p目)

マッチ箱から懸垂をして一本入れて休憩をしていたら「ロープダウンします」とのコール。今までコールが聞こえていなかったので不思議に思ったが、話を聞くとソロの人だった。ピラミッドフェイスを登る予定が、取り付きから見上げて第4尾根に鞍替えしたようだった。ピラミッドフェイスを見れば、細かさから言ってボルダー4級くらい連続。何かあったら大事故になるようなルートだと悟ったようだ。

5p目を登り、ソロクライマーに先に行っている間に中央稜へ向かうラインを偵察していた。6p目を登り要塞チムニーの前で懸垂してCガリーを下るようだが、どうもブッシュが多く岩も安定していない様子だった。トポを見て冬のルートというのを知って納得した。夏には無謀なルートだが、雪の締まりがルートを開いてくれるようだった。

6p目終了点から見るマッチ箱
景色がいい!!!

ソロクライマーさん

トラバース中に写真を撮ってみた

6p目のトラバースをsome2くんにしてもらって、リードがトラバースする時のプロテクション取りの注意をして、7p目の城塞チムニーに挑んだ。

7p目だけ難しく、残置されたハーケンがひしゃげていたり、カムが残置されていた。安定した姿勢を取ろうと体をクラックに押し込んだ時に、ザックが邪魔に感じた。そのせいでもうフリーで抜ける意気込みがなくなった。A0で抜けて、some2くんを迎えて第4尾根の登攀が終了した。

第4尾根の登攀を終えて

ギアをたたんでいる最中に登ってきた後続パーティと話をすると、2・3週前に土日で第4尾根にきたが下部岸壁で道迷い時間切れで下降したと言っていた。下部岸壁の道迷いはやはり我々だけの固有のことではないのだ。何も知らずに挑むともれなく迷うようだ。

登山道に復帰して、北岳山頂に行ってそそくさと下山した。下山に4時間を要し、かなり疲れた。途中から太ももの大腿四頭筋がヒィヒィと悲鳴をあげた。

大樺沢を降るルートを取ったので、その間バットレスを横目に降りた。12時を回っていてもマッチ箱あたりにクライマーがいた。やはり人気のクラシックルートだと感じた。

バットレスの全景を見るなら八本歯のコルから下るべし

下部岸壁、第4尾根を通じてフリーで使われるような強固なハンガーは1つもなかった。リングボルトとハーケンが主体のルートだった。クライミングでフォールするようなところはないにしても、スリップ滑落は許されないと感じた。使用したギアは、60mロープ2本、クイックドロー10本程度、カム(フィンガー〜バンド)、スリング数本だった。


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