八ヶ岳 阿弥陀岳南稜~赤岳主稜

大林L・逢沢(記録)
一人で南稜に行くという大林さんに同行をお願いして、更に東出さんたちも八ヶ岳に入るらし いので、途中、舟山十字路で落としてもらったのでアプローチがうまくいった。南稜方面には数 パーティーが入っていた。広河原沢側から踏み跡をたどって南稜の最低コルにとりついた。ほとんどのパーティーがこの方法をとっていた。尾根につくと立派な標識があって驚いた。時折、樹林の切れ目から広河原沢奥壁や南稜のスカイラインが見えると俄然、登攀意欲がかき立てられた。立場山で、先行パーティーを抜き、ラッセルとなる。先週、旭岳東稜から南稜を見たら雪がほとんどなかったが、今週は膝くらいの快適なラッセルである。青ナギで休憩していると、先程のパーティーは立場川側へ下っていった。獅ケ岩を登るのだろう。自分がバリエーションを登るようになって、登山大系なんかに出ている「このルート面白そうだけど登る人いないよなあ」と思うルートでも、結構登る人がいることを知った。旭岳や権現東面、獅ケ岩なんかも記録を調べると結構あるある。同じような考えを持つ人は多いんだと思った。
P1あたりは雪も深く腰くらいまであったが、天気は快晴そのもの。本当にうれしくなってしまう。P3はルンゼ内の雪はしまっていてアイゼンが気持ちよく鳴った。ザイルは使わなかったが、これも条件次第だと思う。しかし太いフィックスがあった。P4は左から巻いて登れるところを登っていったら頂上に着いた。これも条件次第だが、今回は悪いところはなかった。後に自分の宝物、独標登高会の『八ヶ岳研究(上、下)』を手に入れて、広河原沢の記録などに興味を持つと、この時もっと広河原沢奥壁を観察すればよかったなあと思った。まあ、またいつでも来れるだろう。
阿弥陀頂上には誰もいなく足跡もなかった。南稜は技術的にどうこうでなく、ルートとして変化に富んだすばらしいルートだと思った。「たかが南稜、されど南稜」大林さんと笑いながら言った。
頂上から中岳へ注意しながら下り、雪崩に注意しながら中岳沢を下った。腰までのラッセルが大変だった。南稜から北稜を下ったらさぞ充実すると思った。またいつか……。東出さんたちと行者小屋で会う予定だったが結局来なかった。フライのないテントは寒かった。

翌日、赤岳主稜へ。朝、ガスが出ていたが文三郎を登るころにはガスも晴れてきて快晴となる。主稜には文三郎からトラバースしてチムニー側から取りついた。途中ショルダーを登るという大学生2パーティーは、ビッグウォールが登れそうなくらいのフレンズ、ヌンチャクなどを持っていたのには驚いた。彼らは両方とも結局取付きがわからず引き返したようだった。
チムニーは思ったより難しくなかった。稜とは言い難い岩の出た斜面をスタッカットで登っていった。八ヶ岳はプロテクションに岩角を利用するんだと知った。きれいな雪稜を登ると、一目で上部岩壁とわかる下につく。どこを登るか一瞬ためらうが、忠実に稜と岩壁の接点に取りつく。登れそうな凹角を登ってゆき、稜上に出ればこのピッチは終わるが稜上までもう少しというところで難しいフェースに取りついた。ハーケンにシュリンゲがぶらさがっていたのでここがルートかと思ったが、落ちそうなので戻ってふと右を見るときれいな短いクラック(越沢の左ルートみたいなの)があった。ルートファインディングに反省しつつクラックを登るIV級くらいだった。越沢のアイゼントレの成果があり全く問題なし。このピッチ四五メートルいっぱい。あとはあいかわらず不明瞭な稜を登り凹状のところを登り、ガラガラの斜面を経て間もなく北峰頂上。南峰頂上で大林さんと写真を撮りあった。二人の写真を後続で登ってきたガイドとおぼしき人に頼んだら「主稜登ったぐらいではしゃぐな」と言わんばかり撮ってくれた。主稜はぼくらとそのパーティーだけで、南稜リッジはガイドで三、四パーティーが登っていた。頂上からはすばらしい展望がのぞめた。あまりに天気もよく充実した登攀で、大林さんと二人、喜びと満足感をかみしめながら下った。
主稜のようなルートは一見どこでも登れそうなのでルートの見定めに注意がいると思った。このルートもすばらしいと思う。次はショルダー右、左、そして左ルンゼを登ろうと思った。
大林さん、また八ヶ岳のルートを登りましょう。

〈コースタイム〉
30日
舟山十字路7:30
青ナギ10:10
阿弥陀岳山頂12:40
行者小屋13:45

31日
発7:15

取付8:20
赤岳頂上11:40
行者小屋12:50
美濃戸14:30


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