八ヶ岳 広河原沢 三ルンゼ 

L:広島大樹(記録)、内田裕之、江原 純

朝6時過ぎにタクシーに乗り、茅野駅から舟山十字路へ向かった。車のフロントガラスからは、すっかり雪化粧をした八ヶ岳連峰が見え、シーズン到来が本当にうれしい。ここ数年、正月合宿前は集中的に八ヶ岳で雪稜やアイスクライミングのトレーニングを重ねてきた。ルート自体は短く手頃ながら、寒さによる冬の厳しさが味わえる場所として、慣らし山行に丁度良い。

舟山十字路に着くと、既に4~5パーティーが出発の準備をしていた。実際、3ルンゼには我々を含めて2パーティー、右ルンゼへは1パーティーが取付いたようだ。

林道のトレースは、ここ2~3日の降雪でほとんどかきけされていた。例年と比べると今年は雪が多いように思う。途中、間違って右俣に入り込んだりしながらも、10時頃には本谷下部の氷瀑にたどり着いた。最初は15m程のなめ氷。八ヶ岳西面へ継続するため荷が重いのが難点だが、腕力まかせのクライミングが何とも心地よい。

三ルンゼの入口と思われる場所には、左に狭い5mの滝、右に8m程度の幅の広い滝がかかっていた。迷わず右の滝に取付いたものの、滝を抜けて間違いに気が付いた。左の尾根をトラバースしてルンゼに入って偵察するも、このルンゼが三ルンゼかどうかはっきりと分からないので、また元の地点に戻って左の方の滝に取付いた。しばらく小さななめ滝とラッセルを続け、30m二段の滝にたどり着いた。先行パーティーは最初の一段目をノーザイルで登っていたが、我々はここでアンザイレンして、1ピッチでこの滝を抜けることにした。滝上部の岩に新しいリングボルト2個とシュリンゲがかかっていたのでここでピッチを切る。

その後は、しばらく急なラッセルが続き、右手に二股出合いの8m程の垂直なツララが見えてきた。この時点で時間が2時近かったので、右俣を登って南稜のP3に抜ける手もあったが、ルートの完全遡行にこだわり、胸まであるラッセルに喘ぎながら、急な雪面をさらに左上した。雪で氷が隠れているものの、上を見ると狭いルンゼが核心部とおぼしき6m程の氷壁へと導いている。しかし、先行の内田さんと江原が、左上するルンゼをつめずに左壁の草付きを左稜線めがけて登り始めた。どうせ上部で落ち合えるだろうと考え、内田さんと江原はそのまま行かせて、自分ひとりだけ核心部の氷壁めがけて、そのままラッセルを続けた。

氷壁は高さは無いが、氷はベルグラで結構悪そう。ザイルがほしいところ。左稜線を登る二人のことも気にかかるので、登らずに引き返して左稜線を上がった。このまま稜をたどって抜けても良かったが、どうしても核心部だけは登りたかったので、二人を説得して潅木で懸垂し、ルンゼに戻った。この時点で時間は4時を過ぎていたので、ここでビバークすることにした。急な雪面なので適当なビバーク地があるか心配であったが、幸い右岸に岩屋根があり、雪を整地してビバークした。

翌朝、気温-20度はあったであろうか、まだ冬の寒さに慣れていないため非常につらかった。7時出発。昨日のトレースをたどり、核心部の氷壁に取付いた。昨日は分からなかったハーケンが、ベルグラ状の氷壁の左にいくつか打ってあった。そのハーケンをたよりに左からまわって、上部で右にトラバースして核心部を抜けた。そのままルンゼ通しに登って潅木でビレイをとった。フォローの二人には、そのまま上の安全地帯まで抜けてもらい、そこでザイルをしまった。右手に南稜がはっきりと見える。右にトラバースぎみに登り、南稜に出た。そのまま踏み後をたどり、10時30分に阿弥陀岳に到着。11時30分、行者小屋着。


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