富士山 剣ヶ峰 大沢右岸ルート

大林(記録)

富士山の西面に位置し、今にも「真っ二つ」に割れそうな剣が峰大沢。その源頭部は大沢崩
れと呼ばれここ数年浸食が著しい。
そんな剣が峰大沢源頭部に日本最高峰に突き上げるバリエーションがあることを知ったのは
つい最近だった。高所における登攀。そんなルートに心惹かれ偵察を兼ねて右岸ルートに向
かった。
電車とバスを乗り継ぎ富士浅間神社バス停に降り立つ。新年も明けてまだ間近、神社に参
拝し今年一年の安全を願う。あとは佐藤小屋に向かうのみ。朝九時頃出発しトコトコ歩いて佐
藤小屋。そして五合目駐車場へ。途中、吹雪の中に集団の影。なんとこの時期にも雪訓か、ど
こに向かうのだという視線を背に駐車場からは御中道と呼ばれる道を新しいトレースをつけな
がら歩く。途中御庭という所があり、夏にはハイキングコースかきれいな花が咲くらしい。この
御庭より直上するのが七太郎尾根。さらに進むと仏石流とどれも独特の雰囲気を持つ光景。
御庭からは樹林帯に入り、いくつかのデカい沢を越え大沢右岸にある大沢休泊所に富士山を
約三分の一周して一七時到着。この建物は護岸工事用でもちろん今は無人。一升瓶でも置い
てないかと外から見るも無し。標高は二三一七メートル。裏に何やら神社あり。休泊所の前に
テントを張り、冬合宿の残りを食べ就寝。寒さと多めの水分補給のため起きること数回。しか
し、外は満天の星空だ。
そして、あまり眠れず翌朝を迎えた。朝から快晴まさに冬型の気圧配置。風はあるものの過
去の経験からこれは行けると踏み、七時半出発。神社の裏手より登り始め、しっかりした雨量
観測計にいたずらすることもなく、樹林帯の急な登りを終えると目の前にはまさに大沢崩れが
深く切れ込んでいる。トラロープをくぐり、右岸沿いに高度を上げていく。前方には左岸鎌型壁
の上に測候所が見える。それにしても登るにつれ内部は異様なものだ。冬は凍結されていると
は言え、いかにも脆そうだ。
森林限界を過ぎるとやがて岩稜となり、ダルマ石やピナクルと呼ばれる岩があり、この付近
から大沢内部を下り、各ルートに取り付くらしい。大沢は上部で二俣に別れ、その挟まれた岩
稜は第一から第四と四つの岩稜を持ち、右俣左俣それぞれ外側には右岩稜と左岩稜が走っ
ている。これだけのルートをこの高所で目の当たりにし、凄いの一言だ。しかし、このルートを
登るには落石や雪崩と精神的に来るはず。しかもこんなマイナーなとこ今じゃ誰も登らないと
思う。しかし僕の一つの課題として心に刻もう。
そろそろザックの荷を背に感じながら、大沢は上部で右岸側に食い込んでいるため、左へと
巻き気味に登る。岩稜を進み時には岩を左右に巻き雪壁を快適に登り、尾根をいくつかトラバ
ースぎみに左上し右岸を離れ仏石流の源頭部に出た。広い雪面で頂上も間近なので風も強い
が、この付近は位置的に西風なので風を背に受ける形となり、少しモロした愉快な気分で最後
のガレを登る。
一二時半にお鉢到着。さすがに風は強く、行動食のベビースターラーメンの袋が手元から飛
んでいった。お鉢めぐりで剣が峰へ。そして復路は御殿場口へと下降した。御殿場には冬に何
回も通っているのでのんびり下る。太郎坊に一七時着。装備をはずし、ここからも国立青年の
家まで歩く。可愛い姉ちゃんが「良かったら車に乗って行きますか」ということもなく、一九時
着。無事終了。バスで御殿場駅へ。
いつかはバリエーションルートからしかもこれらのことを一日でやれたらなあと思う私でした。

投稿する

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)