荒船山艫岩 昇天の氷柱

L:広島大樹(記録)、江原 純

中央線の人身事故の影響で大幅に出発時間が遅れてしまったものの、道が空いていたのと江原のナビのセッティングが正確であったため、川越からおよそ2時間で荒船山登山道入口の駐車場に着くことが出来た。駐車場には他に車も無く、明日は我々だけの静かなクライミングが期待できそうだ。登山道の入口を確認して、酒を飲んで早々に寝た。
5時に起きて6時前に出発。なだらかな登山道を30分も登るころには、堂々たる艫岩の姿と周囲の岩山にかかる氷瀑郡が見え始める。空気も乾いて肌を突き刺すように寒い。登山道を1時間も歩いて一杯水に到着。確かにその名の通り、ベルグラ状の薄氷の下からチョロチョロと水が流れていた。左からの踏み後らしき所をたどると艫岩の基部に出て、およそ20分でF1に着いた。
F1は一段(10mほど)上がった所に、巨大なチョックストーンがかかっている。初めは、崩れてくるのではないかと思い、右壁のバンドづたいにチョックストーンの上に出ようとしたが、上に登ってよく見ると、これはチョックストーンではなく、岩の一部が出っ張ったもので、今年はこの時期での氷の発達が悪いため、岩が剥き出しになっているだけなのだと分かった。もう一度下りて、F1を少し傾斜が緩い右から取付いた。
一段上がると左壁に残置ハーケンがあり、それとアイススクリューを1本かまして、この出っ張った岩のハングを岩の突起にバイルを引っ掛けて上から越えた。その上には、堅いツララが出来ていたので、そこにスクリューを1本かまして抜けた。足場の良い所に潅木があり、そこでビレイした。フォローの江原もジャケットを泥だらけにしながら奮闘して登ってきた。
F2を快適に越え、F3の基部の潅木でピッチを切った。F3は、下から3分の2の所まで、右側の狭い凹角に幅30cmぐらいしか氷が出来ておらず、上の方も広くて1m弱ぐらいの氷しか出来ていなかった。これでは、お目当ての氷柱を登るどころか、ミックスクライミングに終始してしまうと思い、ここで撤退しようかと思ったが、見ると所々にボルトが打ってあり、何とか氷以外で支点が確保出来そうなので、行ける所まで行ってみることにした。5m~6mほどランナウトすると右壁にボルトがあり、それにクリップする。岩のホールドは、ほとんどが逆層しているので、幅30cmの氷にバイルを効かせて、両足は両壁にステミングという非常に苦しい態勢。腐ったハーケンにバイルの刃をかましたり、ほとんど意味が無いであろう薄氷に、短いスクリューをかましたりして、だましだまし高度をかせいだ。3分の2を登った所に、浅打ちのリングボルトが2本あったので、下で待つ江原には悪いが、これを使って懸垂下降することにした。
F1下部の10mでトップロープの練習を1時間ほどして、一杯水に戻った。


メンバー:広島、江原(記録)
夜行日帰りで荒船山艫岩(トモイワ)昇天の氷柱に取付いたがF3の結氷状態が悪く敗退した。
往復は珍しく車。上信越道下仁田I.C.経由で254号を佐久方面へ向かう。内山鎚道手前の分岐(荒船山登山口、何とか牧場等看板がたくさんある)を右折し国道から外れる。途中左折するところがあるがほとんど一本道で登山口(駐車場あり)まで。道幅は広く、凍結箇所もほとんどなし。川越から登山口まで約2時間。
アプローチは一般ルートを一杯水(滝があり説明の看板がある)まで登り小さな祠の裏から艫岩方面へ向う。(途中鋏岩修験場という場所があるが一杯水はそこからさらに10分ほど上部。)艫岩の黒い垂壁の下を30分程トラバースすると氷瀑があるのは昇天の氷柱だけなのですぐに分かる。
F1は3段。1段目は15㍍ほどの氷瀑(幅も15㍍程度、傾斜は75°くらい)で何所からでも登れる。2段目は約10㍍、大きなチョックスストンがある幅1㍍程度のクラック状。氷があるのは下部のみでチョックストン付近は氷に頼れない。広島さんは時間をかけて慎重に左の側壁から抜けた。江原はテンション2回、登れないんじゃないかと不安になりつつも無理やりチョックストンに乗って抜けた。埃っぽいクラックで上に抜けたときには泥だらけになっていた。3段目は5㍍ほどの氷柱。2段目で頑張りすぎて腕がホキぎみだったが何とか抜ける。ビレイ点は立ち木。
F2は顕著な氷柱(15㍍程度)のあと、階段状のナメ滝。氷柱は下まで届いておらず右の岩場を少し上がってから取付いた。ナメ滝は問題なし。ビレイはF3直下の大きな倒木(きちんと立っているので立ち木かとも思うが、トポに記述がないところを見ると…)と氷でコンクリートされた支点。
F3は20㍍程度、幅1.5㍍ほどで非常に狭い。氷はその一番右のクラックの奥に30㌢ほどの幅であるのみ。広島さんはバイルを氷に刺し、スタンスを岩に求める形で15㍍ほど登ったがそれ以上には進めなかった。左側にボルトが連打されていたようなのでアブミがあれば良かったのだが・…。
そのまま帰るのはもったいないのでF1の1段目にトップロープを張り練習。その後一般ルートから荒船山のピークまで往復した。昇天の氷柱の終了点は艫岩の展望帯のすぐ脇。あんなに狭く傾斜の強い氷柱から、荒船山独特の真っ平なピークへ抜けたら感動ものだったなぁ。残念無念。


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