大仙丈ケ岳 三峰川 岳沢 アイスクライミング – 敗退

■日時 3月6日-3月7日

■場所 仙丈岳 三峰川 岳沢アイスクライミング

■目的 アイスクライミング

■メンバー ヨネ

■タイムテーブル

3/6

03:00 大曲駐車場

06:00 北俣・南俣分岐

08:00 営林小屋

12:00 岳沢越え

16:00 BC 岳沢出会い付近

3/7

05:00 BC 岳沢出会い付近

09:00 F1上

12:00 岳沢越

19:00 大曲駐車場

岳沢アイスクライミングの時期は2つある。まず年末まだ雪がそれほど降っておらずラッセルする労力が少ない。そして3月末、ある程度雪が締まってくるが、まだまだ気温が低く滝が凍っている時期である。

今年の冬は暖冬である。例年であれば3月末が適期であるがそれを待てば気温が上がりすぎて氷が解けてしまうのではないかと危惧した。記録を見てみるとF1の氷結はほぼ甘いということである、また高巻は可能であるようだが、ソロでも可能かどうかがいまいち判然としない。また雪が少ないのでそれほどラッセルにはならないと見込み3月頭で岳沢アイスクライミングに挑戦することにした。

ソロであるためにとにかく荷物が重い。まず登攀道具としてシングルロープ60m、バイル二本、アイススクリュー7本、ランナー、ハーネス。幕営としてはエスパーステント、標高が高いので、悪天候でも雪と想定してフライはなしである。ツェルトも考えたのだが、もしかしたら主稜線上でテントを張る可能性もあったのでポールが欲しい。そのためにテントとした。食料は軽くするためにα米とラーメンである。ソロであり確保状況がわからないために、スノーバーも持っていくことにした。結構削っては見たもののそれでも20kgは超えている。果たしてこの荷物をかかえて仙丈の稜線に抜けられるのだろうか。

荷物が重いこと、岳沢越まではわかりにくいこと、そして出来たら一泊二日で抜けたいために午前3時に大曲の駐車場をでる。南俣までは林道であるので難はないはずだ。北俣・南俣分岐には6時についたおよそ3時間かかっている。2時間半程度を見積もっていたためにやはり遅い、この分では先が思いやられる。戻ってくる道ではないためにまさか荷物をその辺においておくわけにもいかず、とりあえず先を進む。

南俣に入ると堰堤が出てくる。記録では渡渉が必要であるということだ。確かに堰堤前後で渡渉が必要そうになるシーンがあった。いづれにしても飛び石伝いで渡れたので時間はかからずに済んだ。ただ、岩についた茶色の苔は恐ろしくぬめっている。ストックをついて、慎重に進んでもずるっと滑り靴が濡れてしまった。

さて南俣に入っていくといきなり大荒れである。

進んでいくとトイ上の滝が見える。沢登りでさえもあまり上りたくない滝であり、ましてやアイスクライミングの装備ではびしょびしょになることが不可避である。そのため右岸側のざれた斜面を必死に上る。一見斜面は緩いように見えるのだが、地面が全体的に緩く踏み込むとずるっとしたに下がってしまい、バランスを崩すこと、そして荷物が重いことから登るのに一苦労であった。15分ほどかけて50mほど登ると立派な踏み後がある。この踏み後はさらに手前から続いているのでおそらく下のほうでどこか入りやすいポイントがあったと考えられる。

踏み後に沿って行くと自然に沢に戻る。少し歩くと営林小屋跡についた。

長年人は住んでいないのであるが、それでもそこはかとなく生活臭がしている。ヘリコプターなどが使えなかった時期にこの小屋で暮らしていたとは先人たちの強さには頭が下がるばかりだ。

営林小屋を過ぎると三俣に分かれている。

記録を読んだときにははっきりわかるか不安だったが、左から入っている大きな沢そして右の小さな沢、真ん中にある沢とはっきり地形で識別できるので安心した。ただ営林小屋跡から行くと左から入っている沢を渡るようになるので、ガスっていたりするとわかりにくい。真ん中の沢は雪が薄くかぶったゴーロ状の沢で歩きにくい。すぐに左岸側の尾根に上った。結果としてはこれが大正解。雪も全くなくスピードアップでぐんぐん進んでいく。

次第に沢が狭くなっていくと凍った滝が出てくる。こちらは左岸に出ていた滝である。立派な滝であるがこれはルートではない。

岳沢越の前で滝は2つある。体をならすのにちょうどいい。

沢を詰めていくと正面が開け、ざれた岩場が見えてくる。

たまに落石がぽろぽろ落ちてくるのでこれはたまらないと左岸側の尾根に入る。適当に上りやすいところを選び倒木を越えていくと、やがて倒木が折り重なったエリアに入る。

ここまでくると斜度はほぼ水平になり、岳沢越はもうすぐ。ひいこら木登りした、木の下をくぐったりしながら岳沢越についたのはお昼過ぎであった。

少し休んでから降りだす。一時間ほど降りたところで何かがおかしいと気づく。ここは下りで30分ほど降りるとふたたび川床につくはずである。しかしその様子が全く見られない。かつなんか見たような景色になっている。方位磁石を調べてみると、、、なんと戻っているではないか。おそらく岳沢越えで赤札を探してうろうろしているうちに方向感覚を間違ってしまったようだ。一時間降りているので、おそらく2~3時間ほど登り返しか、、、うんざりしながら再び岳沢越えにもどる。

岳沢越えからは雪が深くなる。たまに太ももまで埋まるものの、雪が柔らかいこと、下りであるからそれほど困難はない。30分ほどで川床に降り立つ。

さてこの時点で4時である。天気もずいぶん悪くなってきて雪がちらついている。とりあえず出合まで向かうべく、下に下っていく。トレースはあるものの、足を入れるとずぶっと潜る。足を引き出そうとするとふくらはぎの周りに雪の重みがかかりうまく足が動かない。足を前に蹴ろうとしても中途半端に雪が締まっているためにうんとも、すんともいわない。ひたすら踏んで、まっすぐ引き出しを繰り返す。出合付近に平たい場所を見つけた。水もとれるのでここを本日のBCとする。

ガサガサ、夜寝ていると頻繁に何かが動いている音がする。鹿か狸か???ふと気づくとテントの生地に雪がたまりそれが滑っている。その時に音が鳴っているだけであった、、、んんん?なんで雪の塊がテント生地にくっついているのだ???ふと気づいてテントから顔を出すと、、、トレースがすべて消えている!雪は相変わらず降り続いており、すでに30cm弱は積もっている。なんてこったい。雪が降るとは思っていたがここまで積もるとは、、、

明るくなる前にテントをたたみ、岳沢へと向かう。出発は朝5時であった。

川床に積もっていた雪から予想すると岳沢は太もも程度のラッセルになると予想しながらおそるおそる岳沢を上る。ずぶ、おっ踏み込んでもそれほど潜らない。ふくらはぎ程度でしかも雪が締まっていて案外楽勝である。この調子であれば結構先にいけるのではないか。F2上に9時を目標にして進んでいく。

ひろい川床が次第に狭まっていく。頻繁に両岸の樹からチリ雪崩が起きている。この傾斜であれば雪崩の心配はないものの傾斜が強まるとどうか。

次第に明るくなっていく中、8時にようやくF1に到着。。。

滝の落ち口にぽっかり穴が開いている。滝の具合はジョウゴ沢F2と同じグレードに見える。下段15m程度は斜度も緩く氷もしっかりしているのでそれほど問題はない。しかし落ち口が少し立っている、さらに真ん中が割れているということは両側も相当薄い可能性がある。この荷物の重さで細かいけりこみのコントロールはできない。F1さえ登ればF2以降は氷結しているという話を聞いていたので安全策をとり、巻道を探す。まず左岸側は逆相の岩が連なっていてのぼるスキが見当たらない。それに対して右岸はしょうしょうザレているが斜面が上に抜けている。ところどころ氷と雪が出ているのもありがたい。しかし50mほど登り、あきらか滝の落ち口よりも上に出ているにもかかわらずまだ抜けることができない。巨大な岩塊が斜面に連なっていて横にトラバースする隙間がない。多少斜度がおちても逆相で薄被りになっていることから恐ろしくて手が出ない。さらに20mほど進んだところでいったんあきらめ下に降りる。F1をそのまま突破しよう。

F1は下側は見かけ通り氷も分厚く安定している。滝の落ち口は真ん中がぽっかり割れている。右か左か。右側はすこし立っていて薄い。左側はぽっかりラインの少し横ならば階段状に進めそうである。空荷リードならなんてことないだろうが、フリーで25kgをかかえて慎重に氷を壊さないように進む。けりこむと一気に崩れそうである、5mほどであったが15分ほどかけてようやくF1を抜けた。

F1を越えるとさらに荒涼とした景色が広がる。

時間は9時である。当初の予定より遅れてはいるもののF2はそれほど難しくないのでそのまま進む。しかしここでいきなり事態が変わる。進めない!!!雪が深くほぼ太ももまで潜る。さらに雪が重すぎて一回潜ると足を抜くことができない。ほぼ春の湿雪が中途半端な気温でゆっくりと締まっているようだ。もう少し早ければ雪が軽いから足も簡単に抜けるだろうし、もう少し遅ければさらに締まっていてそこまで足は潜らないはずだ。結局20分かかっても10m進まず!

間違いなくこのままでは上にたどり着くまでに3日以上かかるからここで撤退決定。

そうときまればまずはF1のクライムダウンから!!!いきなり核心!!!F1を降りればあとは早い。11時に出合い、12時に岳沢越えにつく。岳沢越えの登り返しは当初沢に沿って上ったためにラッセル地獄、しかし途中で左岸側樹林帯に入ったところ雪も締まっているし赤札も岳沢越えまでしっかりつけられていた。

岳沢越えから南俣分岐までは5時間かかった。荷物が重すぎて疲れ切っていたために足がまったく動かなかった。南俣には営林小屋跡を越えると右岸側に踏み後がある。この踏み後をたどっていくと堰堤近くまで下りられることが判明した。ただし堰堤近くの登り口はわかりにくい。最後の堰堤は左岸側の堰堤階段から越える。右岸側に5mx5m程度の小さい凍った滝が見えてくる。この滝は右岸の巨大な岸壁にくっついている。この岩壁の末端は階段状になっており踏み跡に入れる。

大曲の駐車場についたのは夜7時であった。


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