■日時 4月28日(土)〜5月1日(火)
■場所 剱岳 八ツ峰主稜〜早月尾根
■目的 縦走
■メンバー some2、ヨネさん、タナミー(記)
■天候 全日晴れ
■タイムテーブル
4/28
00:15新宿 → 06:50富山駅 → 10:20室堂 → 14:00別山乗越 → 16:30長次郎谷出合
4/29
02:30長次郎谷出合04:50 → 05:401・2のコルへのルンゼ取付 → 09:001・2のコル →12:003・4のコル → 14:305峰ピーク16:00 →18:005・6のコル
4/30
02:005・6のコル4:10 →08:206峰ピーク → 10:007峰取付 → 11:207峰ピーク → 12:008峰ピーク13:00 →13:30池ノ谷乗越14:00 → 15:10剱岳本峰15:20 → 18:50早月小屋
5/1
05:00早月小屋07:30 → 11:00早月尾根登山口 →11:30馬場島荘 →13:00つるぎ 恋月(温泉) →14:00上市駅 →14:40富山駅15:10 → 17:50東京駅
■記録
劔沢から入り、八ッ峰主稜を登り、剱岳本峰ピークを踏み、初めての早月尾根を降りる、縦走をしてきた。
some2にとっては、夏冬含めて初めての剱岳で、八ッ峰主稜しかも縦走スタイルとは、なんともいい初体験だったろうと思う。ヨネさんにとっては冬の早月尾根からの劔登頂に向けて早月尾根をトレースするという目的があり(それで縦走スタイルになった)、タナミーは劔のアルパインルートを登ること(源次郎尾根でもよかった)が目的だった。
東京から富山駅へ夜行バスで7時間弱をかけ、富山地方鉄道で3時間をかけて、室堂へついた。登山をする人よりも、山スキーを楽しむ人が多く、そういうところに来たんだなと感じた。

室堂から見る立山三山を撮る
登山する人の中には、冬の劔を眺め、写真を撮りに、とさまざまな目的だったようだ。別山乗越をすぎると登山の人は数少なくなり、劔沢キャンプ場をすぎると踏み跡までなくなっていった。

劔岳@別山乗越 源次郎尾根と八ツ峰が重なって見える
劔沢を長次郎谷出合まで降りるとテントが2張あり、まったくの無人でないことがわかった。

源次郎尾根の末端
劔沢の左岸にテントを張り、21時にはシュラフに入った。
2日目。ほぼ満月だったので辺りは暗闇でなく、明るかった。朝食を食べテントを撤収していると、陽がすっかり上がった。長次郎谷の緩やかな傾斜を登り始め、1・2のコルへあがるルンゼを探しながら歩いた。

長次郎谷の入り口あたり 右側は八ツ峰の末端
地形図であたりをつけていたルンゼに着き、見上げて見るとコルに三本のピナクルが確認できた。ガスで視界が効かないときは山側にある切り立った岩壁が目印になるだろうと感じた。

1・2のコルへ上がるルンゼ
このルンゼはピッケルをストックがわりにして、二足歩行できる傾斜だったが、一部にダガーポジションで前爪を使いクライムアップする箇所があった(雪がなければナメ滝だと思う)。ここはロープを出して出して上がったが、some2くんにはこの傾斜が初めてらしく、だいぶ体が硬くなっていた。その後の二足歩行できる傾斜も、硬い体を労わるためにステップを切って登りを続けたので時間がかかった。

ルンゼを詰め上がる
1・2のコルに上がるのは、ルートへアプローチになるのでまさにアプローチ核心のテイになってしまったようだ。
主稜線に上がれば、チンネ、クレオパトラニードル、八ッ峰、源次郎尾根、剱岳本峰が見渡せた。やはり現地に来て現物を見ると、どこも登攀意欲をかき立てる岩だった。

八ツ峰上 4峰へ向かう

八ツ峰上 トラバース
八ッ峰の下半部でポイントになるのは、2峰と5峰の懸垂下降だった。3峰と4峰は下降路と下降地点が目視できたが、この2つはそれができなかった。
2峰の懸垂下降路は緩い傾斜から垂壁に変わるため、途中の下降路が目視できず、バックアップを取らずに降りたが、途中で仮固定することになった。こういう懸垂下降路だと、緩傾斜にに溜まったロープを垂壁に落とすときによくダマになるのだ。長さの推測として30m強かなと思い、二本連結して降りたが28mくらいだった。
5峰では、懸垂下降支点までがちょっとしたスノーリッジだったので、確認偵察にロープを出した(初めてだとこういうところに慎重になって時間がかかる)。
5峰ピークから素直に5・6のコルに向かうとスパッと50m以上は切れ落ちていて、コルから三ノ窓雪渓側にすこし外れたところにしか降りられないようだ。源次郎尾根側にあるスッと伸びたピナクルへトラバースしたところに懸垂下降支点があった。が、しかしどの方向に降りるのが正解か、迷うところだった。
支点から下を眺めると5峰側面にルンゼが開けていて、その途中から雪渓が5・6のコル側へ続いているようだった。こちらの途中に次の懸垂下降支点があれば、ルンゼから5・6のコルの方へ回り込めると思い、降ることにした。
1回目の懸垂下降。雪のルンゼを横に見ながら岩壁を降り25m程度のところに次の懸垂下降支点を見つけた。この支点の位置は5峰側面のルンゼと5・6のコルを分けるリッジのテラスにあった。次の懸垂下降支点も視認ができた。
2回目の懸垂下降。左下に向かって斜めに降り20mで5・6のコルが見下ろせる次の懸垂下降支点に着いた。背の高いブッシュがあり、落としたロープを引きずっていくと回収がしにくいだろうと思い、ロープを首かけにして降りた。
3回目の懸垂下降。支点が貧弱なことを気にしながらも、コルにめがけて少し斜めに懸垂し、30mいっぱいに伸ばしたらシュルンド開き放題のエリアを避けることができた。
教育的指導というやつで、足りなかったら登り返してこいと言われ、60mロープ一本で降りたのだが、結果としては降りられた。二本連結のロープなら2回で済むだろうが、、、。3回目に使った支点は、おそらく追加されたのだろう。

八ツ峰五峰 6峰途中から振り返る
5・6のコルは地形の特徴か、風がよく抜けたので、雪のブロックを今までにないほど高く積み上げ、幕営となった。
3日目。6峰への登りに時間がかかった。ロープをだしたことにあるし、露出した岩壁数メートルをラインに選んだが、パーティ全員がそのラインを登れるか懸念があったのでラインを変えたためだ。タナミー1人なら問題ないとしても、それではいけないのだ。全員が安全に登るラインを選ぶのがトップの役目なのだ。
大きなシュルンドが開いていた三の窓雪渓へ落ちる斜面でもスタカットをしたが、フォロー確保しながら5・6のコルを見下ろすと、二人組2パーティがいた。フォローがシュルンドを超える頃には、その二人組はすぐ近くまで上がってきていた。やはりロープを出すと時間がかかるのだと思った。縦走スタイルなので移動距離は長くない、どこでも幕営できるのが救いだと思った。

6峰への登り
6峰のピークあたりで後続の人たちに追い越してもらい、懸垂下降と小ピークを超えること数度して、7峰の取り付きになった。

6峰〜7峰
左から八ツ峰主稜、クレオパトラニードル、チンネ
先行になった人たちは腐り始めた雪と傾斜の合わせ技にそれなりに苦しんでいる様子だったので、ロープを出して登った。
7峰ピークから8峰へは、雪のナイフリッジになっていた。融雪の進んでいる今年はこのラインかもしれないが、雪庇が残っている場合は主稜線から三ノ窓雪渓側に外れた斜面に懸垂下降できるようになっていた。

6峰〜7峰のナイフリッジ
8峰への登りは岩の階段状で快適に登り、八ッ峰の登攀を終えた。
8峰ピークからの下降は、池ノ谷乗越へ向かって、30mの懸垂下降で傾斜の緩い雪面についた。
池ノ谷乗越から本峰までは、北方稜線と呼ばれる登山道だが、それなりの傾斜の雪面があった。

剱岳本峰への直下
八ッ峰の傾斜に慣れればなんてことはなく、さくさくと登り、1時間強で剱岳本峰にたどり着いた。

剱岳本峰ピーク
本峰にいたのは10分くらい。久しぶりに踏んだ山のピークなのだが、下降する早月尾根の長さが気になりすぐに降りた。

早月尾根を下る
早月尾根は一般登山道なのだが、雪がある時期は夏道通りに降りられないようだ。山頂から下りてすぐに懸垂下降するポイントがあった。その後は雪のついた斜面を下り続けた。

早月尾根から見る劔尾根と小窓尾根
計画としては早月尾根上で幕営としていたが、早月小屋まで下ることにした。翌日の時間的余裕をとるためだ。そのおかげで行動時間が長くなり、集中力に欠くことがあった。トワイライトタイムになると、2,3mの急傾斜でヒールのキックステップがうまく決まらず、滑り落ちることが1、2度あった。やはりこの時間帯は疲れ、集中力の欠如で何かが起こりやすい。

早月尾根からは富山の平野が見渡せた

早月小屋に着いたのは日没直前
早月小屋に着いたのは19時前と日が暮れる直前だった。せっせと整地作業をして、お茶を飲み、お酒とご飯を飲み、眠りについた。02時台に起きていたそれまでよりもだいぶゆっくりと07時起きとしてゆったりした。
早月小屋の上の稜線で迷いそうな場所はいくつかあったが、早月小屋の下の稜線でもやはりいくつかあった。ホワイトアウトした状態なら、細心の注意をするから良いのだろうが、ガスで見えない程度だと歩きやすい稜線を選んでしまうだろう。その結果、早月尾根から外れてしまうだろうなと感じた。

早月尾根を降り切って
標高1000mを降れば稜線上の雪はなく、たまにある雪田を切りながらの下降になった。気温があがり、太陽に照らされ、疲れでもたついた足で早月尾根登山道の入り口まで降りた。
この入り口は、これから向かおうとするクライマー(登山者でない)に対して叱咤激励をする石碑がいくつかあった。冬の剱岳に挑まんとする挑戦者への心構えを正す文言だった。
検証ありがとうございましたhttp://customessaytw.com/