赤岳 天狗尾根


■日時 1月27日(土)〜28日(日)

■場所  八ヶ岳 赤岳 天狗尾根

■目的  雪稜・岩稜

■メンバー    タナミー(記)、some2

■天候    1/27 晴れ     1/28 晴れのち風雪

■タイムテーブル

1/27  07:00美し森駐車場 → 10:00出合小屋10:20 → 10:30赤岳沢出合 → 14:30幕営地(2300m)

1/28 04:00幕営地07:00 → 08:00カニのハサミ → 08:15第一岩峰  → 10:00大天狗取り付き11:15 → 11:40主稜線に合流 → 14:30ツルネ東稜下降14:45 →  16:00出合小屋16:30 → 18:20美し森駐車場

■記録

美し森駐車場から林道を歩いくこと1時間半、川俣川渓谷の上流にある堰堤群に辿り着く。この林道は非常にゆったりとした登り坂で、思いの外に息があがる。しかし、寒さに慣れていない指先、足先には、そのおかげで血が通い、体を山仕様に変えてくれた。

出合小屋@地獄谷

堰堤を越えてからは、道しるべの赤布は沢の両岸を行ったり来たりしていたが、踏み跡に従ってほぼ左岸を歩いた。両岸が迫ってくるころには、飛び石で岸を変えたが、水流はほとんどないし、雪が積もっているので、苦労なく進み、出合小屋に3時間後には着いた。

この週末に、この山域に来ていたのは、天狗尾根をのぼる2パーティ、旭岳東稜に向かう1パーティだった。多いのか少ないのか、初めて来たところなので判断つかないが、アイスクライミングパーティがいないのは意外だった。1月の末は既にシーズンエンドなのだろうか?

出会い小屋を出て数分で、背の低い道標があり、赤岳沢の出合がよく分かった。が、驚いたことにその方向への踏み跡は無かった。

「ラッセルがんばってきまーす」とちょうと居合わせた旭岳東稜パーティに告げて、沢を渡った。赤岳沢に入れば、雪が積もり消えかけていたが人が踏んだ形跡があった。

なぜ、天狗尾根の末端から取り付かないのだろう?と記録やトポを調べて疑問に思っていたが、赤岳沢の出合に着いて疑問が解消した。傾斜がきついのだ。地形図を漫然と見ていたら気がつかないが、等高線の混み具合が末端は高くなっているのだ。地形図から地形を創造できるようになりたい、、、。

尾根の腹を上がるのなら、決まってルンゼ状のところだと踏んでいたが、その通りだった。それより上流に赤布が見えなかったし、丁寧にも「赤岳」と書かれたテープもあった。

アイゼンとピッケルに装備変えをして、ルンゼから尾根筋まであがった。5分程度登れば尾根筋につき、傾斜が緩くなったのでそうそうにピッケルからストックに変えて、トレッキングスタイルで樹林帯を上がっていった。それからの行程は、まさに樹林帯の登山だった。いつついたのか分からない古い踏み跡を頼って登っていたが、一度見失い腰ラッセルになったが、なんのこともなく歩いた。

樹林帯でもたまには開けたところが

何度か幕営出来そうな平地を見つけたが、4人パーティに樹林帯の中をゆずり、傾斜が厳しくなる手前の開けた尾根筋にジャストな広さを見つけ、幕営した。主稜線のキレットよりも低い標高だったので、風はよいよいで問題なかった。

今回の食事は、トマトチリ 鍋にした。アイディアの元ネタは●清の●ップ●ードルなのは見え見えだが、やはりあの味には敵わなかった。トマトピューレ、サルサソース、コンソメ、創味シャンタンなどなど使って、それなりに深みのある味にはなったのだが、、、。もっと研究しなければ!

翌朝、まだ夜の暗さのなか、テント内でパッキングをしていたら、下に幕営していた4人パーティが登ってきた。先に行ってもらったので、もう急ぐのをやめて、ゆったり準備となった。ロープを出すようなルートであれば、やはり暗い中の早出も考えるべきだったと思う。

カニのハサミを右手に見ながら超えると、7,8mのちょっとした岩場になった。朝一かつ冷えた体では、それなりに怖さを感じたのだが、フリーで登った。登りきったところで上の方からコールが聞こえてきた。

右にトラバースしてルンゼを詰める岩場が目の前にあった。先行パーティのトップが登り切ったというコールのようだった。彼らが登り終える間に風に吹かれたわけだが、正月山行の北アルプス主稜線に比べれば、だった。

岩峰を右に巻くためのトラバースには、フィクスロープが木を支点に張られて、有り難く使わせてもらった。続く雪の詰まったルンゼは、先行パーティのお陰でバケツ状態になっていたので、苦労なかった。立木でビレイ支点を作り、some2にも登ってもらった。

雪壁のルンゼを登る

続く岩峰は左に巻き、適当に登れるところを選んで登り、稜線を歩くと、大天狗が現れた。

大天狗が現れた

先行パーティが登っていたが、足上げが高く、フリークライミングのムーブのような登り方をしていた。大天狗を右に巻くラインどりでもそんなことになるとは思っていなかったので、驚きだった。

プロテクション取れるかどうか心配になりながら、出だしに小さいピナクルにランナーをとった。そして見上げたらハーケンが縦に2つ打たれていたのを見つけて、やっぱりそうだよなと思った。ここはノープロで登るところでないのだ。数メートル登り、最後の乗越部分ではハーケンでランナーをとり、挑んだ。

垂壁だがスタンスが凹角部にあるので、登ったらカブリ気味に感じる、カバホールドがふたつあるが、それまで少し遠い、乗越先の平地にホールドがあるか、視認できない、という状況で緊張気味になった。ガバホールドにぶら下がりスタンスをひろって体を上げたら、両手ともプッシュの形になった。スタンスに立っているものの両腕で体を支えている状態だ。乗越先のホールドに右手を出したかったが、次の右足スタンスが凹角でよく見えず、困ってしまった。見えないスタンスよりは見えてるスタンスを選んだ結果、アイゼンで「手に足」ムーブになってしまった。

続くsome2は無難に登り、大天狗を通過した。ところどころで簡単な岩登りをしながら小天狗を右に見つつ、稜線をあがり、天狗尾根を登り切った。尾根が主稜線と合流するのは、登山道で赤岳山頂ではないけれども、それなりに、達成感はあるものだ。ただし風があるので、サッサと下降になった。

冬山2年目のsome2には、岩稜帯でのアイゼンワークを身につけている最中なので、大変そうだった。雪があっても厚みがなくすぐ下が岩、というのを予測しながら歩いてもらいたい。アイゼンのどの刃とどの刃を、岩のどこに置くか、それを考えたアイゼンワークは大切だ。

キレット小屋を越えてツルネまで主稜線を歩くのだが、西の空がみるみる悪天に変わって行くのを見て、それなりに急いだ。しかし、まぁ、ツルネへの登り返しは疲れた。もう、登攀は終わった!という気分の中での登りなのだから、仕方ないけれども。

ツルネへの登り

ツルネの東稜は地形図を見ても、実物を見ても、尾根を間違えそうだった。実際、間違い尾根に入り苦労している記録もあった。既にある踏み跡が正しい方向なのか、気をつけながら降った。

実際に、一度迷いかけた。踏み跡が複数あったところで、尾根と尾根が合流する、すこし幅広になっているところだ。少し登り返し、それだろうと思う尾根を腰ラッセルになりながら降ったところ、踏み跡が横から僕らの下降ライン上に重なった。つまり踏み跡をつけた人たちは、誤りに気づき、トラバースを選んだのだ。この場合、どちらがよいのだろうか。登り返しまっさらな雪を降りラッセルするのと、尾根と尾根の間のルンゼ、雪の深いルンゼをトラバースラッセルするのと。

ツルネ東稜は足ズボをよくしたのでだいぶ疲れたし、それなりに時間がかかった。出合小屋に着く頃には日没まで小一時間で、雪も降っていた。

出合小屋で身支度を整えてから、沢下りをして、林道を歩いて、駐車場まで2時間かからなかった。18時過ぎには戻れたが、寒さの中で帰り支度も面倒なのでそそくさと車を走らせた。

■コメント

ツルネからみる天狗尾根

夏場だと思うが、権現岳から赤岳まで縦走に行ったことがある。そのときから、右手に見える、ツンツンとした岩峰の尾根がかっこよく見えて、登りたいと考えていた。

その頃は、冬に登ろうなんて思ってもいなかったし、バリエーションルートにも行ったことがなかったので、単なる憧れだったが、何年越しになるのだろうか、行くことができた。

冬山1年目は、アイゼン歩きがド下手クソでプチ滑落したり、薄い雪を踏み抜いた拍子に沢へドボンしたり、とひどい有様だった。向いてないんでないかと思ったいたが、ほそぼそとやっていれば、それなりになるものなのだ。

アイゼンでのクライミングのグレード感はまだよく分からないが、無難にリードできたので初心者ではないのだろうと思う。

八ヶ岳の東面には、旭岳東稜と権現岳バットレスがあるので、まだ楽しみが残っているのがうれしい。

 


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