瑞牆山 大ヤスリ岩 ハイピークルート

瑞牆山
■日時 7月24日(日)

■場所  瑞牆山

■目的  エイドクライミング

■メンバー  Gunsou(L)、ツッキー、タナミー(記)

■天候  曇りときどき晴れ

■タイムテーブル

07:30瑞牆山荘 > 08:10富士見平小屋 > 09:40ルート取り付き10:20 > 15:50ルート登攀終了16:00 > 17:00登山道に復帰 > 19:00瑞牆山荘

■コメント(Gunsou)

快晴の日に登りたい。

■コメント(タナミー)

瑞牆山ピークから一番近いそびえ立つ岩峰が大ヤスリ岩で、そのテッペンに登れるエイドルートがハイピークルートです。もしエイドで登るのが嫌だとなると、ユグドラシルというルートを登ることになりますが、5.12cです。一般人には簡単に取り付けないわけです。

一般登山道を通って大ヤスリ岩へ

一般登山道を通って大ヤスリ岩へ

アプローチは、瑞牆山荘から一般登山道を通るもので、トレッキングに来ている人たちに混じって登山道を登ります。そういう方たちのザックが小さいこと。こちらはロープとギアとで7,8kgなのに。約2時間かけて大ヤスリ岩に着きました。”虎ロープが張ってある”と聞いていたので、とくに迷わずに済みました。

1p目 ジャミングでなくステミングで

1p目 ジャミングでなくステミングで

Gunsouさん「じゃあ、タナミー、1p目のリードお願いね。俺はこの前の越沢バットレスでの1p目のトラウマがあるから」ということで、タナミーがリード。”といっても僕も小川山の2峰セレクションでグラウンドフォールしてるんだけどなぁ”と思いましたが、やりました。

フットジャムが決まるサイズのクラックでしたが、ステミングで上のテラスまで行き、その後のトラバースは迷わずA0で通過しました。このトラバースがホールドもスタンスも悪いと噂で聞いていましたし、そもそもエイドルートなので。

その後のチムニーをずりずり這い上がり、奥へ進んだところにペツルのハンガーが2つありました。1p目終了点と思われますが、ナットが緩んでいたので使用しませんでした。下がっていたロープスリングをガンガンと引いてみたところ、ハンガーがクルッと回ったんです。こういうときにスパナがあると締められるのになぁと思いました。支点は、ペツルハンガーの近くにあったクラックにカム3つをセットして作り、フォローをビレイしました。ビレイ中に足元にあった立派な将棋盤くらいあるデカイ岩に足を乗せたところ、動いたのにはびっくりしました。このチムニーあたりには浮いている岩が多いので誤って落石させるとフォローを危険に晒すことになるのでご注意を。

チムニーを奥に進み抜けると箱庭が

チムニーを奥に進み抜けると箱庭が

2p目 左上するダイクからスタート

2p目 左上するダイクからスタート

箱庭までチムニーを抜けて、2p目の取り付きです。ここがそうだろう思ったところをよくよくオブザベをすると、どうしてもピッチグレード5.9には思えませんでした。瑞牆らしい侵食されたフレークがフェイスとクラックを形成していて、サイズはオフハンド。なおかつフレアしている。これは違うと思い、周りを見渡せばフェイスの右端にボルト2つが打たれているのを発見しました。そこから左上するダイク・クラックなら登れるグレードでした。

2p目の最後は大ヤスリの台座へ上がるチムニー

2p目の最後は大ヤスリの台座へ上がるチムニー

フェイス部分を上がると、またもやチムニーが現れました。進むほど幅が狭くなる形状で奥にはリングボルトが2,3個見えました。”あ、これが大ヤスリの台座へ上がるところか。webの記録でフリーで登ろうとして奮闘したってあったな”と思いまして、ザックからゴソゴソをアブミを取り出し、台座へ上がりました。

大ヤスリの台座から見る瑞牆山ピーク

大ヤスリの台座から見る瑞牆山ピーク

「このルートは瑞牆山ピークから丸見えで、山頂からキャーキャー言われるよ」というのを信じて来たものの、”キャー”というか、”ゥオー”という男子の低めの声ばかりでした。

3p目 大ヤスリ岩をアブミで直登

3p目 大ヤスリ岩をアブミで直登

ピンの間隔が遠いことを事前に知っていましたが、まぁ遠かった。アブミ最上段に乗って手をリストループにいれたままでは届かず、リストループから手を外して適当なホールドを持って高さを稼いで、やっと届く、そんな感じでした。

リングボルトのリングが欠落しているよと聞いていましたが、2つありました。1つはまさにリングボルトの首の部分のみ、もう一つはリベットハンガーと細引き数本が残置されていました。3つ目が4つ目のピンだった気がします。

下から見上げて長いなーと思い、ヌンチャクを17本持って上がったのですが、14本使いました。だいたいピン1つおきにヌンチャクをセットしていきましたが、”ここは遠すぎるだろ”と思うところにもセットしていったので、10~12本くらいで上まで登れるかと思います。

ツッキー 大ヤスリ岩を登る

ツッキー 大ヤスリ岩を登る

フォローのツッキーをビレイし始めて、ツッキーが終了点についたときには、1時間が経過していました。かなりの奮闘だったようです。リーチの少ないツッキーのためにヌンチャクや細引きをセットしたのですが、それでも足らなかったようです。これはリードのミス。パーティが登れるようにするのも役割の一つでしょうから。しかし、まあツッキーの頑張りには感服です。

Gunsouさん ピークに着く前にピース

Gunsouさん ピークに着く前にピース

Gunsouさんは問題なくトップアウトしてきてピースサイン。テッペンからの眺望を楽しんでから下降開始しました。

懸垂下降を2回して登山道に復帰して、ギアをパッキングしたら17時。それから登山道を降りて駐車場についたのは19時でした。随分時間がかかったと思いますが、これがこのパーティの実力ですね。怪我なく奮闘して楽しめたよいクライミングでした。

使用ギア 60mロープ2本、アブミ、ヌンチャク15本、スリング120cm1本、カム(ハンド〜フィスト)、リベットハンガー2本、細引き、

下降 ルート終了点から懸垂下降2回で登山道に復帰

1回目:3p終了点から3p取り付きまでの約30m

2回目:3p取り付きから登山道脇までの約20m

■コメント(ツッキー)

今回、大ヤスリ岩ハイピークルートのマルチピッチでエイドクライミングを経験する機会を得ました。
外岩でのアブミを使ってのクライミングは、三つ峠での練習に続いて今回が2回目。三つ峠での練習では、アブミの基本的な使い方、巻き込み方法、レスト方法などある程度はコツを掴めたし、皆んなは、アブミはただ掛け替えの作業だけで、純粋なクライミングではないからつまらないと言うけれど、自分は、意外とアブミを使っての人工登攀は嫌いではないな〜と思っていたりするのです。

大ヤスリ岩の最終ピッチは、40メートルのロングルートをひたすらアブミだけで登るという、まさに人工登攀そのもの。今回のクライミングにおいて、自分にとっての不安材料は、そのロングコースに打ち込まれた、リングボルトの間隔がかなり遠いという情報。昨年、同ルートを登ったE田さん,kumaちゃん情報によれば、最上段に立ち込んでようやく、次のボルトに届くぐらいの箇所があったとの事。背の高い男性でもそうなのだから、身長150㎝の自分はどう登攀すればいいのか。そこは、エイドクライミング。こうなったら、ありとあらゆる手段を使って登るしかないわけです。今回、kumaちゃんにお願いして、お助け棒(長さ30㎝)を作って頂き、セルフアッセンダーも準備して、大ヤスリ岩に臨んだわけです。

1ピッチ目は左コーナークラックから、右側のクラックに2m程トラバースする際に、ホールドが乏しいので、迷わずヌンチャク掛けて、手がかりとし、それ以降は、一度ヌンチャク掛けをしてしまえば、なんだかフリーで登らなければいけないという呪縛から解かれて、もうなんでもアリさ〜!と開き直りの精神で、難しそうな部分は適宜、ヌンチャク掛けで登りました。

2ピッチ目も同様にちょうど良い間隔でボルトが打たれているので、有り難く利用させてもらいヌンチャク掛けでサクサク登り、最後の大テラスへ乗っ越す部分は、この日初めてのアブミを使っての登りとなりました。この部分は、左側のクラックルートから、右側の大テラスの間がチムニーになっていて、大テラスの側壁に打たれているリングボルトまでの幅がかなりあり、左側ルートから身を乗り出してアブミを掛ける時と、アブミに乗り移る際はかなり怖さを感じました。

大テラスでの休憩中、いよいよこれから登るルートを見ると、1ピン目は手が届くけど、2ピン目がかなり遠く感じるではないですか。最上段に立ち込んでのヌンチャク掛けでも、届きそうにないのは明らかでした。最初っから、お助け棒の出番だな〜と思いながら、さらに上の方のリングはもっと間隔が遠いように見え、本当に自分は登れるのだろうかと、かなり不安な気持ちでいっぱいになりましたが、リードのタナミーさんが、遠いところはヌンチャク掛けておきますよ〜!と言ってくださり、リングが取れてボルトだけになってしまっている箇所を工作するために、リベルトハンガーや、通常の細引きよりも強度が3倍ぐらい強い、ケプラー素材の細引きも準備してくださっていたので、とっても心強かったです。

そしていよいよ、最終ピッチ40mのA1。登り始めると、テラスで見て感じていた以上に、実際のボルトの間隔は遠いではないですか!予想通り、2ピン目からいきなりお助け棒の出番となりました。最上段に立ち込み、お助け棒でなんとかクリップ。アブミをかけて乗り込んでいくとその先はさらに遠いではありませんか。体を目一杯伸ばして、お助け棒を掛けようとしても、リングはさらに15㎝ぐらい上にある。こうなったら、自己脱出の要領で、プルージックで手がかりを作り、手の伸ばせるギリギリところまでプルージックを上げて、周りの細かいスタンスを見つけ立ち込み、体を目一杯持ち上げ、なんとかお助け棒をクリップ。この動作を何回繰り返したことか。足の方にもプルージックで巻いてみたけれど、ロープがキンクしてしまっていてうまく引き上げることができず、足の方を使うのは諦めました。途中、ロープ同士も絡みあってしまったりで結構大変な部分もありました。

あと、お助け棒の改良点としては、フィフィの部分と、アルミパイプの接合部分をテーピングして固定させておけばクリップがもっとスムーズにできたと思いました。
それと、やはり棒の長さがあと10㎝ぐらい長いと嬉しいな〜と。道具は実際に現場で使ってみないとわからないですね。そういった事が分かったことも、今回の良い経験となりました。

全体を通して、登り始めて3分の1あたりから半分ぐらいまでが一番きつかった。泣きが入りそうになったけれど、途中で降ろして下さいという訳にもいかず、かといって、ユマーリングするのは、なんだか自分に負けてしまうような気がしたので、アブミだけでなんとか登り切らなくてはと、その一心で、必死に登り続けました。

後半は、比較的ボルトの間隔もそれほど遠くなく、ある程度リズムよくアブミの掛け替えはできたように思います。ラスト近く、頂上でセカンドビレイをしてくれているタナミーさんの顔が見えた時には、本当にホッとしました。
奮闘の末、トップアウトできた時には、本当にやり遂げた喜びを味わうことができました。なんと40m登るのに、約1時間もかかってしまっていたそうです。本人は必死なので、時間の感覚などありませんでした。
長時間、セカンドビレイしてくださったタナミーさんと、サードとして登るため大テラスでずっと待ってくださっていたgunsouさんに感謝します。


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  1. 「3p目 大ヤスリ岩をアブミで直登」の写真を掲載させてください。撮影者名を入れたほうがよろしければご連絡ください。rocksnow869@gmail.com