西穂高岳 北西尾根

西穂高岳

■日時 3月19日(土)~21日(月)

■場所  西穂高岳 北西尾根

■目的  雪稜

■メンバー 曽山さん(L) 米田さん 小林さん 田名網(記)

■天候 3/19 小雨 3/20 曇り 3/21 曇り

■タイムテーブル

3/18 23:00新宿 → 3/19 03:00沢渡駐車場10:00 → 11:30新穂高駐車場 → 12:40穂高平小屋 → 14:30白出小屋跡

3/20 03:00起床05:45 → 06:00北西尾根取り付き → 12:30標高2200mあたり → 14:40北西尾根取り付き

3/21 05:00起床07:00 → 09:00新穂高駐車場

■コメント

冬の西穂高に登頂するイージーなルートは、新穂高ロープウェイを利用して西穂山荘をベースにピストンだと思うだが、それではツマラナイというか簡単すぎるというか、なんやかんやで北西尾根から登頂するというルートになった。そんなルートがあるとは知らず、ウェブザベするとちらほらと記録があり、紹介している書籍があるのかと調べたら「日本登山体系」に十行程度で簡単に紹介されていた。

一泊二日の日程で、初日に新穂高を出て北西尾根に取り付き森林限界まで 二日に森林限界からジャンクションピークを経て西穂高岳山頂、西穂独標を経てロープウェイで新穂高に下山するという計画だった。

集合は金曜23時。土曜の雨のち曇りの予報の”雨”は金曜の夜半過ぎからということだったが、新宿では雨が降り始めていた。

雨にテントを濡らさないために軒下をもとめ、あちらこちらとまわり、よき場所を見つけた。その頃には軒下でなければずぶ濡れになるくらいに雨脚が強まっていた。

「明日は雨があがってからかな。」

土曜は北西尾根に取り付いて森林限界まで上がる意欲が全員もれなく湧かず、いかにテントを濡らさずして日曜の早出を狙うかになった。西穂山頂を踏んで独標直下の適地で幕営の計画になった。

起きたら朝10時。雨はあがっていた。それを狙ってか、朝5時までお酒を楽しんでいたから朝10時には驚きもせず。

新穂高を12時半に出発した。穂高平小屋までに行く間にガスの中に入り、雨がしとしと降っているというかミスト状になっているというか、いやーな感じで衣服を濡らす天候だった。

穂高平小屋に先客がいること、火気が使えるのが土間のみということで、あと1時間かけて白出小屋にむかうことになった。これでテントは濡らさずにすむ、はずだった。

夏道の白出沢ルートを示す看板を過ぎ、白出沢にさしかかって

「小屋はどこ?」

戻ってよくよく調べてみると平たい地面がった。

「小屋、ないじゃん。」

テンションだだ下がり。雨にテントを濡らさないための白出小屋だったのに。仕方なくテントを設営し、明日に備えた。依然として小粒な雨が舞う、いやぁな天候だった。

03時起床05:45出発06時にはネポリ谷の左岸あたりから取り付く。雨がシトシトというかミストというかいやー感じの曇天のせいで冷え込まず、雪は中途半端なクラストだった。2,3日までの冷え込みでクラストした部分と樹林から滴る水で緩んだ部分が渾然一体となっていた。

右足は加重するとスネあたりまで沈む、”だから次に出す左足もスネあたりまで沈むだろう”と予想しつつ左足を出すと、よくクラストしていて全く沈まない。足を実際に置いた高さより30cm下で止まるように足を出しているので、不意を突かれる。この予想と反する雪の状態は、足に過度の負担をかける上に、ペースがつかめない。

4人パーティで1時間に1回休憩を入れるので一人あたりトップでラッセルするのは15分程度。これが結構ありがたい。でもペースがつかめないので疲労する。

ガスで隣の尾根筋も見えないなか、2時間近く登り、傾斜が緩み広いテラスに達した。休憩をいれながら地形と地図をにらみ、2004mと記載されている地点とみなさん推測していた。タナアミはiPhoneで山と高原地図を開いてGPSによる位置と高度の確認をしたら、1800mとでていた。

「ん?GPSで1800ですよ?」

「うそー。そんなことないっしょ」

ラッセルを再開。1時間後の休憩で再度iPhoneGPSを確認すると先ほどと同じ位置を指していた。

「GPSが1時間前と同じ場所を指してるんじゃ、GPSあてにならないね」

再度ラッセルを再開して登高。相変わらずガスのなかで視界が利かず、雪の状態の悪さに体力でなく意欲を削がれていくようだった。

「もしタナアミのGPSがあってたなら今は2000mくらいになるな。それじゃ敗退したほうがいいんだけど」

iPhoneGPSだけでなく第2の情報源ということでカメラのGPSの緯度経度をgoogleで調べてマップ上に印をつけさせた。「iPhoneGPSと同じところなんですけど」そのときの高度は2000mで時刻は11時前。5時間かけて500mしか上がっていない。

「もう1時間かけて森林限界越えなかったら、本当におかしい。」

そう言いながら米田さんはラッセルを再開。曽山さんはゆっくりタバコを1本吸い終えてから登るということで、小林タナアミは米田さんの後を追っていく。タバコ1本分の時間5,6分をおいて登ってきた曽山さんが3人に追いつくのが、異常に早かった。距離として20m程度、斜度30度とすれば高度で10m程度。

1時間で100mしか高度を稼げていない、、、。

高度があがって岩がゴロゴロした樹林帯に差し掛かったようで、雪面がなだらかな曲面から凹凸の多い地帯に変わった頃、米田さんは一歩横に踏み外せば雪を踏みぬき胸あたりまで落ちるであろう部分を避け、ラインを読みきって進んでいたとき、曽山さんが

「ヨネ、帰ろうか。」

時刻は12:30。iPhoneGPSの高度は2200m。あいからわずガスの中で視界が利かない天候だったが、森林限界を抜ける様子もなく、岩峰の気配も感じられなかった。

言葉にはなっていなかったが、敗退色が濃厚な雰囲気を感じ取っていたので、驚きもせず。

「はい。」

下山に備えてアイゼンを外していると、下から4人パーティがあがってきた。ワカンにダブルストックというスノートレッキングスタイルだった。

「いま高度いくつかわかりますか?」

「2200mですね。」

腕時計を見ながら男性が教えてくれた。

第3者からの情報は、うすうす感じていたことをがっちりと確信させてくれた。

 


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