朝日連峰 荒川中俣沢

メンバー:曽山、小保方、江原
東北の沢はスケールが大きいと聞いていたが、実際に行ってみてこれまで経験した沢との違いを感じることが出来た。長い遡行距離やその途中の滝、ゴルジュ、瀞・・・、また人跡まれな雰囲気は別格だと感じた。特に良かったのは次々に現れる滝に特徴的なものが多く、直登、高巻きを問わずバラエティに富んだ登攀を楽しめたことだ。あまりに滝が続くので2日目にはビバークをする羽目になってしまったが、安定した天候のお陰でビバーク自体は苦にならず、かえって沢のスケール感を高めるような効果(?)があった。
20日(金) 晴れ(朝方のみ曇り)
林道終点(山形県小国町から車で40分ほど)から入渓点を経て曲滝上部のちょっとした河原までの行程。入渓点までは林道終点からゆっくり歩いて約1.5時間。途中、荒川本流を渡るつり橋が3つあるが、後の2つはかなり心細いもので高さもあり緊張する。小屋を過ぎて登山道が左岸を水平に進むようになったら適当な小沢を50メートルほど下り河原に出る。ここで身支度、好天のせいか水がぬるく感じた。

遡行開始、10:40。しばらくは河原歩きだが、以降はちょっとした滝やゴルジュがリズムよく現れ退屈しない。沢は好天のためか明るい開放的な雰囲気でとても気分がいい。遡行開始から1時間の(トポには「泳いだ」と記述された)ナベクラ沢出合上部のゴルジュは右岸が浅く歩いて渡れた。また曽山さんも小保方さんも釣竿持参で大滞沢上部のゴルジュ帯に釣果を期待していたのだが、ちょこちょこ現れる小滝をこなすのに気を取られて竿を出さないうちに毛無沢出合(13:40)を過ぎ曲滝(魚止め?詳細は後に書きます。)を迎えてしまった。毛無沢手前の300メートルの滝を持った沢は大迫力だった。こんな山奥でなければ観光名所だろう。曲滝到着、13:50。滝の手前、右岸の泥のルンゼ状から高巻く。

その後は東俣沢出合まで幕営地が期待出来ないので曲滝上部の小さな河原を整地してテントを張った。個人的には念願だった焚き火が出来て満足だったが、魚釣りを楽しみたい人は大滞沢出合付近にテントを張るほうが良いだろう。河原も広く幕営にも適していた。幕営地到着、15:10。

21日(土) 晴れ
680メートルの幕営地から、1080メートル(共に腕時計データ)20メートル滝の上部のちょっとしたテラスまでの行程。朝から連続する滝、高巻きを延々とこなして行ったが最後の高巻き中に時間切れ、ビバークとなった。この高巻きは本流をはずれ左岸の支沢に入り、それぞれ5メートルほどの滝を2つ登ったあと草付きをトラバース、懸垂で本流に戻るというものだった。が、1つ目の滝で手間取ってしまいその上部に抜けたときには真っ暗になってしまった。幸い2つ目の滝の手前、左岸の草付きにちょっとしたテラスを見つけ完全に横にはなれないながらもそこそこ快適なビバークが出来た。

起床5:00、出発6:30、出発直後から滝や高巻きが連続する。印象深かったのは「綾滝」8:00、「3段10メートル樋状滝」10:00、「大滝」12:15(時間はそれぞれの滝上に抜けた時刻、滝の詳細は後に書きます)。幕営地に適し、エスケープにもなるはずの東俣沢出合(13:10)にはかなりの雪渓とスノーブリッジが残っておりエスケープにはともかく幕営地には不適と思われた。今回は泳ぎ主体の遡行になると言われ水泳用のゴーグル(!)まで準備していたのだが、この日は一日中滝を登っていたような印象で実際には登攀的要素のかなり強い沢だと思う。ビバーク地到着18:30。

 

22日(日) 晴れのち曇り
予報で日曜日以降には天候が悪くなることが分かっていたため、日曜日中の下山を目指して出発、6:30。昨夜は座り心地を良くするためにモゾモゾしたり、天候を心配して星を眺めたりしていたがいつの間にか眠ったようで体調も気分も問題ない。シュラフカバーに入って星や稜線を見上げているのは気分が良かった。時間があるのだし何か有益なことを考えようと思ったが結局ぼんやりと過ごしてしまった。

出発直後滝を1つ越え、草付きをトラバース、心細い立ち木を支点した懸垂1Pで本流に戻ことが出来た。降りたところには幕営に適した平地が点在していた。そのすぐ後の二股を右に分けると(7:20)あとはザイルを使う滝もなく水流もだんだん狭まっていく。が、依然として連続する滝を正面からフリーで越えていく(既に食傷の感はあったが・・・)。そして両側から草がかぶさった「樋状8メートルチムニー滝」を越えるとようやく源頭部。踏み跡は不明瞭だったが稜線を目指して笹をかき分ける。稜線直下ではハイマツ帯を避けて少し左に進み、中岳と西朝日の間の稜線に飛び出した、10:00。やや左に寄りすぎたようだが、全体の遡行距離に比べれば藪こぎはなかったと言って良いだろう。

その後は、大朝日岳(11:30)、平岩岳を経てもとの登山口に下山。稜線に出た後にはガスに巻かれたが、結局3日間を通じて雨に降られることなく山行を終えることが出来た。分岐(13:40)で稜線を外れた後の傾斜がきつく個人的にはかなり疲れた。駐車場到着、17:00。日曜日中の下山は果たしたもの疲れもあり、高速道路のSAで仮眠をしながら翌日(秋分の日)早朝に帰京した。

 

曲滝(3段、30メートル)

恐らくこれが「魚止め」。竿を出すならこの前で・・・。滝の手前、右岸の泥のルンゼ状から高巻く。前半は草付きだが一部傾斜の強い岩場がありザイルを出した(残置ハーケン1本あり)、後半は泥のルンゼを滝上の潅木帯まで登る。後半は木を掴めるのであまり危険はないが足場が悪く不快な感じ。

 

綾滝(8メートル)

名前がぴったりする繊細な感じの滝だが、登るには最も手強かった。滝はバンドによって2段に分かれている。上部は左右からせり出した滑らかな大岩の間から2条の水流が落ち、下部はその水流を受ける傾斜の強いナメ滝。空身で偵察し左岸上部の大岩に残置ハーケンを発見、ここから登ることにするが大岩には手がかりが少なく手強そうなので荷物は引き上げることにする。釜を横切り左岸のバンドを左上。水流のすぐ脇の大岩の下までは問題なし。大岩の乗り越しもフリーで行こうと頑張ったがあえなく断念。残置ハーケンにシュリンゲをかけてアブミにして乗り越した。乗り越したところにもハーケン1本あり。

 

3段10メートル樋状滝

綾滝のすぐ上部にある滝。滝は深く水流も多い8メートルほどのゴルジュの奥にある。またゴルジュの奥は突然左右をえぐられ、水煙が立ち込める滝の落ち口になっている。滝自体はS字状に段をなしていて左岸右岸ともにハングしており到底登れそうになかった。ちょうど日が差さない時間帯でガタブルになりながら苦労してゴルジュを突破した後、滝を見たとたんゴルジュに戻り再び飛び込む羽目になった。結局右岸を登りゴルジュを見下ろすバンドをトラバースした。バンドに出るまでには泥の乗ったスラブを登らねばならず緊張した(残置ハーケン1本あり)。
大滝(2段20メートル)

大滝は左岸から大高巻き。潅木帯に入るまでに傾斜の強い岩場がある。潅木帯に入った後もさらに直上、結局大滝の手前から7、80メートルはまっすぐに直上する。その後踏み跡をトラバースすると明るく開けたルンゼ状の上部に出、潅木に懸垂の支点がある。直下の開けたルンゼ状を2Pの懸垂で本流に戻る。


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