谷川岳 一ノ倉沢 二ノ沢本谷

東出(記録)、斎藤
先々週のビバーグで、集会でも代表にとっちめられた徳永が山行を自粛したため、またもや斎藤嬢と2名で出発。ゲレンデでⅣ級のピッチが限度の斎藤嬢とどこに行くか悩ましいところだが、二ノ沢に行く事にした。「会長曰く『核心の大滝は、ぬめった逆層のスラブで悪く、ここを突破できないと進退極まる』らしい」とは、斎藤嬢からの情報。しかし本人はまるで心配してない様子なので安心して連れて行ける。
当日は夕方から雨の見通しであったが、昼過ぎには抜けれるだろうとタカをくくって5:00過ぎ出発。ヒョングリ上から二ノ沢方面への踏跡を辿るが、概念図で見るよりもずっと薮漕ぎが長い。スラブ帯から二の沢沿いのリッジを登ると懸垂点があり、一本松まで30mほど懸垂(クライムダウンも可)、一本松(松の木ではなかったが)から二ノ沢へは直接下降するのでなく、途中の岩溝の基部まで懸垂して、あとは踏跡沿いにバンドを歩いて降りれる。駐車場から2時間。本谷に入ると途中三級プラス程度の傾斜が1ヶ所出てくるが、それ以外はスタスタのぼれる。三級プラスの傾斜の上に三俣下大滝が登場。大滝下にボルトが4本ばかりあり、ここから左壁をへつるのかと思ってとりついたが、途中に出てくる泥のルンゼの先でカンテを回り込むところが悪い。ハーケンが1本あったものの、斎藤嬢には無理なので、一旦戻ってバンド上のかぶり気味の壁を登る。ここらにもハーケンが数本ある。この上は、傾斜のきつい薮が大滝沿いに続いていたが、踏み後もないため、さらに左へ薮トラバースすると、草付きルンゼが現れた。赤テープなんかもついている。もっと下から巻くのだったか。
ルンゼをつめると泥どろの脆い岩場があり、右の薮リッジに回り込んだところで懸垂用のシュリンゲが垂れた木が出てきた。しかしバンド沿いに歩いても左俣に下降できるようで、そのまま歩いて下る。が、左俣の出合いからかなり登ったところに出てしまった。この巻きで、相当時間を食っており、朝は快晴だった天気も曇ってきて怪しい。そのまま左俣をつめてしまおうかと思ったが、クライムダウンで下ることにした。斎藤嬢のことを考えてすべてザイルを使用する。2ピッチ程度下りたところで、そのままトラバースして本谷に入る。本谷は順層の小滝が続き、快晴であれば楽しいところだろうが、天気が気になってそれどころでない。傾斜は緩いものの所々ぬめっており、斎藤嬢が万一スリップすると下まで落ちて大根おろし状態になってしまうので、ザイルで適当に確保しつつ登る。時間がかかる。間もなく核心の大滝、というところで小雨が降り出してしまった。とはいうものの、ここから下降する訳にもいかず突っ込む。
緑の20周年記念誌に大滝のルートが出ており、それによればハング下のバンドを右斜上して落ち口に向かうとあったが、ハング下というより中段からそのまま右斜上する感じだ。また、バンドというより、逆層のスラブの隙間にあるクラックをホールドにして登るような感じである。スタンスはぬめって悪いが、結構手が決まるのでそれほどでもない。問題は斎藤嬢で、滝上に上がっても確保点がなく、ピンを打つリスも無い。さらに一段上がって腰絡みで確保。しかし待てど暮らせど上がってこない。声を掛けても、風のせいでよく聞き取れず。相当経ってから「登れないのでユマールを使います」と聞こえてきた。仕方ないのでザイルをほどいて連結し、確保ポイントを探しつつ、さらに上へ登る。傾斜が一段緩まったところでハーケンを打てるリスを見つけ、ザイルを固定。やがてホキた斎藤嬢が上がってきた。その上は、緩いルンゼが続くが、なにせ雨でぬめっているので、適当に確保しつつザイルを出したまま登る。二俣付近で日が暮れてしまった。懐中電灯を頼りに登ろうかと、とりあえず左俣に突入するも、すぐに5mほどのチムニーに出くわす。直登できそうだが、これもまたぬめって悪い。チムニー上がどうなっているのかが見えないため、そのままそこでビバークに入ることとした。
ほとんど水も流れてなく、人が2人足を曲げればなんとか横になれるスペースではある。ツエルトをかぶって寝る。就寝時、ほとんど雨は降ってなかったが、夜中めちゃめちゃに降り出した。当然、チムニー内も水量が増えて滝のようになり、滝壷の修行僧状態になってしまった。斎藤嬢は「横になると背中が濡れて眠れないので、朝まで座って頑張る」ということで、座った状態の斎藤嬢の傍らで横になっていたのだが、頭のあたりに斎藤嬢の腰がきて圧迫され、オシリで顔が塞がれて窒息しかかる。ツエルト自体が雨でぴったり体にまとわりつき、ただでさえ呼吸が苦しい。ツエルトから頭を出せば、チムニーを流れる水流でズタ濡れ。ゼーハーするうちに朝
になってしまった。斎藤嬢も寝不足でかなり呆けている。何を言ってもホヘーとかハヒーいう感じだ。(反論:息苦しかったのは私のケツ圧ではなくツェルトがゴアじゃなかったからです!)
幸い朝は小降りで、凍えた体をひっぱたいて動き出す。6:00発。チムニーをクリヤすると、その上もいやらしいルンゼが出てきた。いずれも体が動かないのでザック釣り上げで上がり、斎藤嬢も引っ張りあげる。その先は特にいやらしいところはなかったが、念のためコンテで上がる。東尾根でザイルをといて、オキの耳に着いたのが9:30。そのまま天神を下って11:30ロープウェー着。この頃になって晴れ間が出てきた。気分爽快なり。斎藤嬢も昨夜のビバークもなんのそので、調子が良さげで何よりだ。しかし風呂に入ってビールを飲んでしまったので、帰りの高速が核心になってしまった。Ⅵ級を感じる眠気との格闘に敗退し、結局上里SAで仮眠。新座着17:00。二ノ沢侮れじ。

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