剱岳 チンネ左稜線 他

L:江原・斉藤・浜野・原(記録)

8月12日(土) 雨後曇 入山

会に入って初めての夏合宿、しかも剣岳とあって、気持ちの昂ぶりを感じながらこの合宿を迎えた。 長野新幹線「あさま」で東京駅から長野駅へ行き、ここからバスで扇沢着10:10。 ここから黒部立山アルペンルートなのだが、ロープーウェイ等の待ち時間が長く室堂まで4時間ほどかかる。 この間室堂では雷雨があったようだが、到着時には晴れていた。 観光客でにぎわう室堂を14:00に出発し、一ノ越着16:00。剣御前小屋着16:40、 ここでベルニナの先発隊の方々にお会いする。今晩は剣御前小屋で幕営らしい。 剣沢小屋から少し下り、雪渓上を軽アイゼンをつけて下降し、真砂沢ロッジ着18:00、 べースを設営する。夕食は豪華にちらし寿司、豚汁、海草サラダ、五目豆。20:30就寝。

 

8月13日(日) 快晴 6峰Cフェース剣稜会ルート

03:30起床。夜はそれほど冷えることも無く、良く眠れた。 朝食はベトナムのフォー。装備を整え、04:30BC出発、まだ暗いが月がきれいに見え幻想的。 堅く締まった長次郎谷の雪渓を登り、Cフェース取り付き到着06:00。 人気ルートとあって既に数パーティー取り付いてかなり混雑しており、順番待ちになりそうな様子。 あきらめて他のルートを登るパーティーもある。前のパーティーが、 いつもHPを見てくださっているという三峰山岳会の方だと分かり、挨拶を交わす。 トップ江原さん、セカンド原・浜野さんので、06:30登攀開始、 1ピッチ目はゆるい傾斜でしっかりとしたテラスに出る。ここで大渋滞となり、30分近く待機。 2ピッチ目以降は比較的スムーズに進み、馬の背リッジを経てCフェースの頭に到着し、 登攀終了10:10。5・6のコルへ下山だが、予想外に下降路が悪く二回の懸垂下降を交えて慎重に下降し、 雪渓到着12:00。BC到着13:30。 酒を飲みながら優雅に時間を過ごしていると、 ベルニナの後発隊の方々が真砂沢ロッジに到着したので、しばらく談笑。 黒部ダムからハシゴ谷乗越を越えての入山だそうだ。日が陰ると雪渓を吹き降ろす風で、 一気に冷え込んでしまう。夕食は、白米、鯖缶とニンニクの芽のスープ、豆入り海草サラダ、金時豆。 豆は力が出るがガスも出ると、不評だった。20:00就寝。

 

 

8月14日(月) 晴 6峰Dフェース富山大ルート・6峰Aフェース魚津高ルート

03:30起床。朝食はフリーズドライの即席マカロニのコーンポタージュ風。 装備を整え、04:30BC出発。空は晴れ、月がきれい。剣沢から長次郎谷への分岐点で浜野さんが体調不良とのことでBCに戻り、 江原さんと原で登ること。長次郎谷を登るクライマーの人数は、前日より少ないようだ。 Dフェースの取り付きまでは、緊張の連続である。バイルとアイゼンをしっかりと決めてかなりの斜度の雪渓をトラバースし、 取り付き到着07:00。 トップ江原さん、セカンド原で、07:20登攀開始、一番乗りである。 1ピッチ目から右側の久留米大ルートに入ってしまったようで、江原さんはルートの取り方に苦労しているようだ。 2ピッチ目は右側に大きくかなり悪いトラバースをし、 3ピッチ目は左へまた大きくトラバースして正規ルートに戻りテラスへ出る。 日のあたる開けたリッジで、高度感も素晴らしい。青く澄み切った空の下、 長次郎谷を隔てて源次郎尾根が本峰へ突き上げている。 4ピッチ、5ピッチ目は細かいが快適なリッジとスラブを登る。 6ピッチ目以降は緩い傾斜の岩稜である。登攀終了10:15。小休止後、Cフェースの頭の脇を通り、 5・6のコルから下降。途中で雷鳥を3羽ほど見かけた。近づいてもなかなか逃げないようだ。 継続してAフェース魚津高ルートを登る。トップ江原さん、セカンド原で、12:00登攀開始。 ルートグレードはⅢ+とのことだが、1ピッチ目からかぶっており、セカンドでもかなり苦戦。 結局、なりふり構わず使えるものはすべて使って登る。2ピッチ目以降も浮いている岩が多く、 緊張を強いられる。ちょうどベルニナの方々がCフェース剣稜会ルートを大人数で登っているのが見え、コールが聞こえる。 3ピッチ目も浮いた岩に気をつけながら登り、13:45登攀終了。 ピッチ数は少ないがピリリと辛いルートとの印象。Cフェースの登攀を見ながら小休止。 2ピッチの懸垂下降で5・6のコルに降り、雪渓を下りBC到着15:40。 青空の下で酒を飲み、夕食はカレーライス。この日は結構酒が入り、 馬鹿話と後半は結構真面目な話で盛り上がった。21:00就寝。

 

8月15日(火) 快晴 源次郎尾根一峰上部、敗退

この日はゆっくりと行動ということで、05:10起床。 朝食はチリビーンズの雑炊。装備を整え06:15BC発。出発して間もなく、 原がフラットソールをテントに忘れてしまったことに気づき、取りに戻り20分ほどロス。 07:00源次郎尾根下部到着。ここから尾根を登っていくが、木が絡みつくように生えており、厄介。 途中でトラバースしてルンゼを詰めるルートへ。最後の箇所でかなりの急勾配になり、 ザイルを出してトラバースしてコルに出る。ここから源次郎上部の岸壁が一望できるのだが、 そこまでトラバースする道が見つからない。正午前まで進む道を探したが、 暑さで皆ホキてしまい時間が遅くなってしまったため下山することに。 はるか遠くに見える後立山連峰を見ながら桜桃の缶詰を食べ、途中何箇所か懸垂下降を交えて下山。 剣沢の雪渓到着13:40。BC到着14:30。 BCでは、この日から合宿に合流する斉藤さんが既に到着していた。 皆でビールで乾杯し、夕方まで談笑。夕食は斉藤さんがボッカしてきてくださった焼肉と生野菜で、 とても豪華だった。20:30就寝。

 

8月16日(水) 晴後曇 三ノ窓へ移動

05:00起床。朝食は野菜のトマトスープ。テントを撤収し、06:00真砂沢ロッジ出発。 長次郎谷との分岐で、この日で帰京する浜野さんと別れる。長次郎谷を登り、0800頃熊ノ岩到着。 ここで下山するベルニナの方三名とすれ違う。ベルニナの方々は前日チンネ左稜線を登ってきた とのことで、残る方々もこの日は停滞とのことである。熱い紅茶をご馳走になり、一息つくが、 一息のつもりが1時間以上長居してしまった。これから越える池ノ谷乗越は日を追って雪渓に亀裂が 入り、初日と比べても明らかに状態が悪くなっている。左俣の方が状態がまだ良いとのことなので、 そこから稜線に出ることにする。熊ノ岩を後にして、長次郎谷左俣の雪渓を詰めていく。 雪はちょうど上層だけゆるんできたところで、なんとかキックステップが決まる状態であるが、 やはり6本爪の軽アイゼンでは厳しい。最上部で雪渓の亀裂に落ち込みながらもなんとか越えて、 北方稜線に出る。小休止後、北方稜線を池ノ谷乗越まで行き、池ノ谷ガリーを下り、三ノ窓到着15:00。北方稜線と池ノ谷ガリーは予想以上に悪かった。 三ノ窓はこの日は我々のみ。水も十分にある。天気図を描くと、 台風が近づいてきており湿った東風の影響が心配されるが、 何とか天気は持ちこたえるものと期待する。 雲海に埋め尽くされた富山湾とそこに沈む夕日を眺めながらウイスキーを飲む。 夕飯を食べ、さらに酒を飲み、19:30頃就寝。この日はちょっと飲みすぎました。

 

8月17日(木) 曇後雨 チンネ左稜線

04:00起床。朝食に雑炊を食べ、05:00三ノ窓出発。この合宿のハイライトであるチンネ左稜線は朝焼けに赤く輝き、登攀に向けて気持ちが高まる。チ ンネに沿ってシュルントを少し下ってから雪渓に乗り移り、雪渓を下って取り付き到着05:40。 トップ斉藤さん、セカンド原・江原さんの順で、06:05登攀開始。1ピッチ目はピンのままに登りテラスへ。2ピッチ目はかなり立っておりホールドも少な い。ピンが無いところに入ってしまったようで、斉藤さんはかなり苦戦しているが、そのまま抜ける。セカンドでもかなり厳しいピッチだ。3ピッチ目の終わり から緩斜面のハイマツ帯に入る。4ピッチ目でピンが増え、正規ルートに出る。霧が出てきたが時々晴れ間が覗く。5・6ピッチ目は、広いチムニーを登り、ハ イマツ帯のトラバースであるが、斉藤さんは1ピッチでつなげる。7から10ピッチ目からはホールド・スタンスが豊富な快適な岩場。11:50、T5到着。 少しだけ霧が晴れ、クレオパトラ・ニードルが姿を見せる。まだ雨は降っていないが天候の回復が見込めないため、小休止後できるだけ早く抜けることにする。 11ピッチ目がチンネ左稜線の核心である小ハング「鼻」である。斉藤さんは惜しくも1テンの後に越えて行った。シュリンゲがかかっているが、十分にガバな のでフリーで越えていける。長いルートの中でピリリと辛くそして楽しい瞬間である。12ピッチ目以降は、ホールド・スタンス豊富な狭い岩稜を進む。チンネ の頭で登攀終了14:30。この日チンネを登ったのは我々だけだった。池ノ谷ガリーを下り、三ノ窓到着15:30。 到着後30分ほどすると、急に大粒の雨が降り出した。さらに雷鳴も加わり、雷雨は激しさを増す。酒を飲んで休むが、疲労のためか皆口数が少ない。簡単に夕 飯を取り、20:00就寝。

 

8月18日(金) 曇時々晴 下山

04:30起床。雑炊で朝食。チンネの短いルートを登る予定だったが、皆疲れておりそのまま下山することに。06:00三ノ窓出発。池ノ谷ガリーを登り、 北方稜線を経て剣岳本峰到着08:30。カニの横這いを経て剣沢小屋到着12:00。ここでこれから縦走に向かう斉藤さんを見送る。一ノ越乗越を越え、雷 鳥沢をひたすら下り、室堂バスターミナル到着14:30。扇沢着1640。大町温泉郷で一週間分の汗を流し、大町駅から大糸線で松本へ。江原さんはあずさ の最終便で帰京し、原は松本に帰省。 天候に大変恵まれたため、多くのルートを登ることができ、とても充実した時間を過ごすことができました。江原さん、斉藤さん、浜野さんを始め、多くの方々 にお世話になりました。ありがとうございました。


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