瑞牆山 調和の幻想 / 一粒の麦

瑞牆山
■日時 11月20日(日)

■場所  瑞牆山

■目的  トラッドクライミング

■メンバー  E田さん、some2さん、体験山行のKさん、タナミー

■天候  晴れ


■”一粒の麦”ルート 記:飯田

以前から気になっていた十一面奥壁にある「一粒の麦」を登ってみた。
「一粒の麦」というルート名は聖書の「一粒の麦もし地に落ちて死なずば、ただ一つにてあらん、死なば多くの実を結ぶべし」から来ているらしい。
事故犠牲による他者の救済と解釈される言葉である。クライミングや登山は自己犠牲とは遠いところにあるが初登者の方はどういう思いでこのルート名を付けたのであろうか?
Alex honnoldの自伝を読んだときに、彼が自身の基金を運営していてそれをアフリカ等の貧困地域に投資していると知り、自身のフリーソロを通して貧国を支援するとはなんと自己犠牲的なクライマーがいるもんだと思った。

で、ルートの内容だが噂に聞いていた2P目と6P目は確かによかった。
素晴らしいクラックというのは結構地上から離れたところにひっそりと佇んでいるものなんだな、と最近つくづく思う。


■”調和の幻想”ルート 記:タナミー

クライミングを始めてから2年経ちますが、瑞牆山でのクライミングはフォローやトップロープが多く、その経験の中でも瑞牆の5.10aグレード感を、ひしひしと感じていました。今年のシーズン初め「調和の幻想はまだ早い」と考えていましたが、今年のシーズン終わりに「調和の幻想いく資格くらいはできたかな」と思い、挑戦してみました。

とはいえ、チャレンジグレードであるのは間違いないので「安全に楽しく登る」をテーマに全ピッチでリードするという贅沢チャレンジしてきました。

各ピッチの記録は下の方に書きました。

今シーズン、クラックを登り込んだわけではないけれども、Yosemiteで触ったSacherer Crakerや、回収役で登った小川山のカサブランカやタツノコ太郎が思いのほか簡単に登れました。これが「調和の幻想いく資格くらいはできたかな」と思った理由でした。

実際に登ってみて気付かされたことは、ワイドクラックはまだまだ、それ以外はなかなか楽しめた、というとこです。

瑞牆クライミングガイド上には「5.10a、5ピッチと難度は手頃でこの壁の入門ルートとしてよく登られているが、ナチュラルプロテクションに加え、強烈なランナウトや複雑なルートファインディングなど、決してビジナー向けのルートではない。グレードだけを目安に取付かないでいただきたい。」とあります。

この文章のすべてに共感します。百聞は一見にしかずといいますが、まさにそのとおりでした。

また、「ルートの内容は花崗岩の総合力と落ちない能力を求められる、瑞牆山らしいルートである。」とあります。今後も瑞牆山で登りたいので、今以上のクライミングスキルを上げるのを、楽しみにしようと思います。

以下は、各ピッチの記録です。各ピッチで使ったブラックダイヤモンドのキャメロットの番号を添えておきます。

1p目:#0.4, #1, #2, #3, #6

クラックの左縁とフレークをスタンスにして、ステミングスタイルで登り、順調に終了点にたどり着く。せっかくキャメロット#6を買ったので、ロープの流れが若干悪くなるのに、わざわざ、ワイドクラックに#6をセットした。

2p目:#0.3, #0.4, #0.5×2, #1, #3, #4

出だしにある膝がすっぽり入るほどのワイドクラックで見事にはまり、テンションをかける。ジャミングにこだわったわけでないが、”ニージャムが効くのでは”と思い膝を入れたところ、”ジャミング”でなく”スタック”した。「やべ、これは、残置か?」とコメントが出るくらいにぴったりスタックした。

ワイド部分が終わってスラブのフィンガークラックに移るところが思いのほか、怖い。足をスラブのスタンスに乗せて荷重を移したいがフィンガージャムが甘いので苦労した。スラブ課題の足の使い方とフィンガージャムという手の使い方をミックスしたようなところだった。

2P目 フィンガークラックのスラブを越えると階段状になる

2P目 フィンガークラックのスラブを越えると階段状になる

3p目:#0.2, #0.4, #0.5, #3

リングボルトが1つあるが、その後のルート取りで少し迷う。リングボルトを左から右にトラバースしてカンテをホールドにして登った。

4p目:#0.4, #0.5, #1, #2, #3, #4

木登りからスタートのピッチ。核心は2つ。

1つ目の核心は、残置の支点であるスラブの中腹に打たれたリングボルトまで。そこまでにプロテクションが全く取れないかというと、立木にとる、スラブのダイクに移った直後にあるクラックにカムをセットする、がある。しかしはっきりと言えばプロテクションとして役に立ちそうになかった。どちらにとってもスラブの中腹に打たれたリングボルトまでのトラバースで落ちたら、グラウンドフォールするのが目に見えていたからだ。なのでノープロテクションで登ることになった。

2つ目の核心は、リングボルトからスラブ右端のカンテを登ったあとにある、トラバースセクション。ここでフォールすると、またもやグラウンドフォールになると思う。取れるプロテクションは、スラブ右端のカンテを登りきったところのクラックだけ。ここに#3をセットしたが、次のプロテクションまで3,4m近くのトラバースになる。

トラバースかつランナウトだからこそ、味わえる種類の”落ちられない”恐怖だった。

5p目:#0.5, #0.75, #1, #2, #3, #4, #5, #6

取り付き点から、大フレークを実際に観察しても、スラブと大フレークが作るクラックは、明らかに幅が広い。#6をギアラックに提げて、大フレークまで登り、クラックを確かめると「#6でも効きが甘いじゃないか」。もちろん場所を探せば問題なくセットできるが、”場所を探せば”のことである。ちなみに#5を試したところ、まったくプロテクションにならなかった。

#6を上にずらしながら大フレークを登ったわけだが、なんか気持ちのいいものではなかった。#6のトリガーの引きは60%くらいという絶妙に怖い引き具合だったからだ。真ん中あたりで、大フレークの裏側に#0.4が効きそうな薄いフレークがつくるクラックを見つけたが、これは使えなかった。セットして動荷重テストをしたところ、薄いフレークが浮いてカムが抜けた。

大フレークの上部まで登ると、左側にフレア気味のクラックが見つかり、#4をセットできたところで一安心した。次のオフウィズスでも使うかもしれないと考え、大フレークにセットしていた#6も回収し、クラックをだどった。このクラックはプロテクションがよく取れるので、いつも通りの気分になれた。

その後に待ち受けていたオフウィズスのクラックには、完敗だった。50cmくらいスクーズドチムニースタイルで登ったが、スタミナ切れでテンションをかけてしまった。よく考えてみたら、タナミーはワイドクラックのリードはまだやったことがなかったので、すんなり登れるわけないのだ。

オフウィズスが終わると、10mくらいのスラブを登り終了点に着いた。だたこの間はクラックも残置支点もないので、多少は怖い思いがした。

下降は、スタックが起きて5回になった。

5P終了点→4P終了点→2P終了点→1P終了点(スタック発生、2P終了点までリード)2P終了点→1P終了点→取付

スタックの原因は、小さな立木でロープに引っかかったことだった。立木が多いところなので、慎重になるならば各登攀ピッチ毎にきることだと思う。

 

 


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