白馬主稜~白馬三山縦走~双子尾根

L大林、SL広島、逢沢、内田、斎藤、江原(記録)

本日は5月15日。雪焼けの名残で黒い顔もようやく周囲のヒトに受け入れられてきた。ところで私の頼りない頭の中では顔の皮がむけるように春合宿の記憶も1片ずつはがれ落ちてしまったらしい。今や明瞭な印象として残っているのは『主稜の登りがきつかったこと』と『白馬鑓のピストンでアイゼンが小気味良く効いて気持ち良かったこと』くらいだ。記録をつけようと自分の記憶を探ってつい苦笑してしまう。

5月3日 曇のち雨
日付の変わるころ新宿を出発した急行アルプスは定刻に白馬に到着。どんよりとした曇り空からは細かい雨が落ちている。覚悟はしていたが電車の中ではあまり眠れなかった。睡眠不足で標高差1,400㍍を登るのはコタエルだろうとやや熱意に欠けたままバスで猿倉まで入る。バスが進むにつれ残雪が豊富になるが、後で聞いたところでは今年は例年よりも雪が多かったという。道路沿いの排水溝には雪解け水がすごい勢いで流れていた。猿倉でバスを下りて白馬尻までは快適な林道を1時間。天気はやや回復して時折青空がのぞく。長々と伸びる尾根や深い沢を眺め、長野の山の大きさに感じ入っているうちに取付きに到着した。8時20分。

この辺に山小屋があったような気がするのだが見つからなかった。雪の下なのだろうか?大雪渓が夏まで残るくらいだから途方もない積雪量なのだろう。主稜の末端から8峰に向けて登る先行のパーティがやけに高く小さく見えて少し怯む。とにかく8峰までは・・・という気持ちで速いペースについて登るが有名ルートだけあってしっかりした(し過ぎた)トレースがついている。天気は下り坂ですぐにガスに包まれてしまいトレースだけを目で追いつつ登る。ひたすら階段を登り続ける感覚であまり気分の良いものではない。途中二本の休憩を挟んで11時頃8峰に到着。ここからは雪稜となるが、ピーク手前の2峰まではしっかりとしたトレースが延々と続いていて不安定さはなかった。ガスの中、7峰、6峰と順番に小ピークを越えて行くが、相変わらず展望が利かず「実はぜんぜん違う尾根を登ってたりしてな!」なんて言葉が飛び出す。右手の白馬沢からは「ズルズルーゴロゴロー」という雪が滑る何とも締りのない音(表層雪崩?)が断続的に聞こえているが視界が悪いので見ることは出来ない。延々と続く単調な登り。湿度が高いのでもう汗まみれだ。そんな状況の中ところどころにあるテントサイト(跡)の何と魅惑的なことか!「天気も悪いし、尾根上で一泊の計画だから・・・そろそろ・・・」などと考えるのだがペースは一向に落ちない。

14時ピーク直下60㍍の雪壁。ぱらぱらと降り出した雨の中、大事を取って50㍍のザイルを2本連結してフィックスして貰う。工作をしながら上部に抜けた広島さんから「東西コール」。ナンダナンダと登って行くと稜線に飛び出したところがピンポイントに白馬岳のピークだった。15時20分。ガイドブックでは読んではいたが「ポンッ」とピークに飛び出した感じが何とも言えず楽しい気分。広島さんのコールも納得。富山側から冷たい風が吹きつけていて雨に濡れた部分が見る見る凍る。が、ピークに抜けテントサイトが近いことを思えば気が楽だ。少し下って村営小屋の裏にテントを張る。16時10分。

5月4日 晴
晴天!6時20分出発。まだ時間が早いので締まった雪にアイゼンが小気味良く効く。剣、薬師、鹿島槍、穂高・・・有名どころの眺望とシーズン最後の(と思われる)雪を満喫しながら稜線歩きを楽しむ。7時10分杓子岳到着。下降ルートの双子尾根を見下ろすとまだトレースがない。上部は急で自分には下り応えがありそうだ。が、数パーティーが登攀中だから杓子岳~白馬鑓間のピストンをしているうちにトレースが付くだろう。トレースのない尾根は魅力的だったが計画を尊重して白馬鑓に向かう。ザックを下ろすと必要以上にペースがあがって駆けるようにコルへと下り、競うようにピークへ登り返す。

8時白馬鑓到着。鑓ヶ岳には東尾根(?)というバリエーションがあるようで広島さんと逢沢さんは尾根の上部に座り込みしきりに話をしている。初めて耳にするルート。知識や技術があればさまざまな角度から山を楽しめるようになるのだ。そうと思うと仕事は駄目だけど山は頑張ろうかぁなどという不穏な気持ちになった。杓子に戻ると予想通り双子尾根にトレースが付いていた。残念!慎重に直下の急斜面を下る。日が照りつけ、雪はヒドイ状態で登りのトレースを崩さない様に気を使いつつ下る。昨日登った主稜は見える範囲だけでも20人以上が登攀中だ。双子尾根でもひっきりなしに登りのパーティとすれ違う。好天の中、連休2日目にして下山中の我々はちょっと変わった存在だったかも知れない。それにしても熱い。途中でもぐり込んだハイマツ帯ではムッとする草いきれに春を通り越して夏山の感覚を味わった。10時35分樺平。地名の由来なのだろう大きくて立派な岳樺の日陰で今年はどんな山に行こうかと話をする。谷川、沢登り、フリークライミング、夏合宿・・・。「きっとあっと言う間に季節が過ぎて、来年の今ごろも同じ話をしているんだよ。」と誰かが言った。12時15分猿倉到着。タクシーで白馬駅まで行き、風呂に入って昼食を食べて帰京。
充実していたが期間的に短かった合宿に消化不良のメンバーは翌日日和田山で岩トレ。合宿の食料(内田さんのカレーピラフ)も消化した。

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