ルート名   裏同心ルンゼ峰ノ松目沢ジョウゴ沢
日程     2002年1月12日(土)~1月14日(月)


1月12日 裏同心ルンゼ    メンバー L.広島大樹(記録)、江原 純、丹波泰三

初日は、赤岳鉱泉へのアプローチに時間がかかるので、当初予定していた峰ノ松目沢は明日
に変更して、行動時間が短くてすむ、裏同心ルンゼに行くことにした。
ルンゼの入り口には、右岸ずたいにトレースがあるが、新しく不明瞭なので、しばらく人が入っ
ていないと思われる。20分程歩くと先頭を行く単独の登攀者に追いつき、そこからは我々がラ
ッセルして進んだ。F1は、ほとんどが雪に埋まってしまい、上部5mしか氷が露出していなかっ
た。つづくF2・3段もその形状が確認できない程に、雪で埋まってしまっていた。F2上の潅木
のビレイ点からF3を見ると、これも悲惨な状態なので、ここから左岸の稜線に上がって下降し
た。
裏同心ルンゼは、細く急峻な滝が多いため、積雪量に左右され易い事は知っていたが、今年
は本当に雪が多いのだと改めて実感した。


1月13日 峰ノ松目沢      メンバー L.広島大樹(記録)、江原 純、丹波泰三

朝6時に出発。北沢沿いを10分程下った橋のところで右岸に渡った。膝上ぐらいのラッセル
で、尾根をトラバースぎみに越えて、峰ノ松目岳側のルンゼに入った。ルンゼの中は、雪が吹
き溜まってラッセルがひどいので、側壁ずたいに雪の少ないところをねらいながら詰めていっ
た。2時間ぐらい経っただろうか。ようやくF1らしい氷瀑に出た。その上にF2らしい氷瀑も見え
る。峰ノ松目沢はこれに間違いないと思い、アンザイレンして取付いた。F1とF2を越えると、そ
の先に大きな岩があって行く手をふさいでいる。
トポを見ると峰ノ松目沢の隣に王者の氷瀑とある。これは間違えたと思い、再びそこから左岸
の尾根をトラバースした。小さなルンゼを越え、さらに尾根を越えたところで大きな明るいルン
ゼに出た。下に2段の氷瀑と上に10mぐらいの氷瀑がある。アプローチを始めてから2時間
半。ようやく峰ノ松目沢に到着した。潅木の残置シュリンゲでF1基部まで懸垂下降する。取付
き9時。江原のリードでF1を登り始めた。沢が広く雪を堆積するだけの十分な容量があるた
め、裏同心ルンゼよりも滝が雪で埋まっていない。F2は、右の一番傾斜がきついところから取
付いた。中段でスクリューを一本かまし、左に回りこんで直上した。フォローの江原、丹波も順
調に登ってきた。照りつける太陽が斜面の雪を溶かすので、アイゼンに雪団子が付着する。重
い足取りと太陽の熱に喘ぎながら、ラッセルと小滝の連続を1時間ほど行く。右岸に岩の洞窟
が現れ、F7らしいなめ滝に出た。Wヤッケを脱いで、休憩をとり、氷を壊してその下に流れる
水を飲んだ。F7下部のブルーアイスがとても印象的。核心のF8ツララのカーテンは、下部6m
が垂直にそそり立ち難しそう。しかし、ツララの出来がいいので迷わず右側から取付いた。ツラ
ラは堅く頑丈なのでスクリューが確実にきまる。下段を登ったところでピッチを切った。上段
は、成長著しい江原に任せた。F9は雪に埋まっているので巻いた。急な雪壁を30分程登ると
稜線直下の岩壁帯にぶつかり、そこから右にトラバースして稜線に出た。13時着。
稜線にはトレースが無く、深いところでは胸までのラッセルだった。股下ぐらいのラッセルを1時
間30分続け、ようやく硫黄岳からの一般縦走路に出た。


1月14日(月)成人の日 八ヶ岳・ジョウゴ沢本谷     メンバー:広島、江原(記録)

連日の晴天に恵まれた3連休の最終日、ジョウゴ沢本谷を硫黄岳まで遡行した。12日の裏同
心ルンゼ(雪が多いため途中から下降)、13日の峰ノ松目沢(静かな沢、広島さんの記録を参
考)は丹波さんを含めた3人パーティーで登ったが丹波さんが14日朝一で下山したためジョウ
ゴ沢のみ広島さんと江原の2人パーティーになった。

6:20、テントで賑わう赤岳鉱泉を後にジョウゴ沢へ向かう。5分程で出合。硫黄岳へのルート
と同じくらい太い踏み跡がありバッケンがなければ縦走路と間違えてしまいそうだ。踏み跡をた
どるとこれまた5分もせずにF1(5m)に着いた。穴だらけだが前日まで雪に埋もれる寸前のよ
うな滝が多かったのでブルーアイスが登れるだけでうれしい。まもなくF2(15m)。これもほとん
ど埋まっていなかった。基部で準備をしていた6人くらいのパーティーに先を譲っていただく。一
部氷の薄いところがあり、氷の裏側まで穴のあいたスタンス(ホールド)があった。F3(5m)は
透明な氷。裏を流れる水の様子が見えた。ところで氷の色の違いはどういう理由で出来るのだ
ろう??この辺りフリーで登れる滝がテンポ良く現れて楽しい。右俣を分けると左右が開け
広々とした場所に出た。こういう場所があるから下部の滝が雪に埋まらずに済んでいるのだと
思う。さらに進んだところで、右ルンゼに寄り道しナメ滝の左にある氷柱(25m)に取付く、7:1
5。広島さんのリードでトップロープを張ってもらい左の方を2回ずつ登った。傾斜も高さもある
ので緊張…、「ヒッカケ登り」でいいんだとアドバイスされるが思わず力んでしまい拳を氷に打ち
つけてしまう。再び本谷に戻ると概ね雪の上を歩いて(小さなナメ滝が幾つかあったような気も
する)大滝へ。左右を岩に挟まれた大滝はトポによると25mだが半分以上埋まってしまってい
る様子。下部の急なところは6~7m、その上部に傾斜のゆるいところがやはり6~7m程だっ
た。ここは江原がリード。今回の山行までスクリューを使ったことがなかったので支点をとるの
が難しく感じた。

大滝の上部は大滝を要に扇を広げたような地形。長々と横切る硫黄岳の稜線まで開放的な眺
めだった。ここでトレースはプッツリ途絶えた。少なくてもこの連休中に稜線まで抜けた人はい
ないようだ。登攀具をしまいヤッケを脱いで稜線に向かう。青空と雪の対照がキレイで、風のな
い穏やかな空気共々幸せな気分にしてくれる。一汗かいてピーク到着は10:05。赤岳鉱泉の
テントに戻ったのが11:00。

ジョウゴ沢は(他の沢よりも)滝が雪にうまりにくい(らしい)点、アプローチが短い点、ナメ滝か
ら氷柱まで氷のバラエティに富んでいる点、ピークまですっきり抜けている点が素晴らしいと思
う。また今回の山行では晴天に恵まれ稜線までテンポよく登れた点が楽しく印象に残った。個
人的には傾斜の強い氷柱を緊張しながら登るよりも傾斜のゆるい滝をフリーで登る方が嗜好
に合うように感じた。


東京緑山岳会