冬合宿 北ア 横尾尾根
03年12月27日~30日 L江原 SL曽山 斉藤 浜野(記録)
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緑に入会して初めての冬合宿参加となった。行き先は横尾尾根。
夏に沢登りで横尾谷右俣に行った際、下山途中槍沢の右側に見えた尾根だ。
入門者向けの雪山ルートだと聞いたが、人一倍チキン野郎の自分は行く前から相当ビビっていた。 |
12月26日、ホームにて多久和さん、大林さん、田村さんに見送られ23:54発ムーンライト信州
にて新宿駅を出発。車内では緊張のためか、ほとんど眠れなかった。
27日早朝松本着。ここで立川から乗ってきた斉藤さんと合流、タクシーに乗り中ノ湯へ。小雪
が舞っている中、小キジをうち、ヘッドランプを点け釜トンネルを歩く。トンネルを抜けしばらく行
くとNHKの取材の人たちがウロウロしていて、ちょっと撮らせてくれとの事。撮影されチョット緊
張しながら取材クルーとイタチごっこで8:30河童橋着。ここで江原さんと斉藤さんがインタビュ
ーに答える。この映像は翌日のニュースに出ていたらしい。
上高地は平坦だが寝不足の体には少々ツライ。江原さん以外一同バテバテで13:10横尾着。
予定では3のガリー付近まで進むはずだったが、天候も悪化してきたのでこの日は横尾の非
難小屋泊とする。
12月28日、5:30起床。快適な小屋泊まりなのにほとんど眠れなかった。いくつかのパーティー
はかなり早い時間に出発していったみたいだ。皆に不評の棒ラーメン(ラーメンと思わなけれ
ば美味い!)を食い6:30出発。空はまだ薄暗く、星が出ていて天気は良さそうだ。
朝焼けに染まる山を眺めながら歩き、8:05に3のガリー取付に到着、ここでワカンを付けラッ
セルしながらガリーを登って行く。江原さんがトップで登っていくが、自分はセカンドのくせに全
然追いつけず大分離れてしまう。情けない限りである。ガリーは上部に行くにつれ傾斜が急に
なり、雪崩を警戒して適当な所で支尾根に乗り移る。木に助けられながら登って行くが、草付
に雪が乗っていてワカンでは滑りやすく、この登りで少々ホキてしまった。
アイゼンに履き替えたとたんに登りやすくなったが、尾根を登り詰めていくとなんと壁の様な所
に行き当たってしまった。ここでザイルを出し、右側の急なルンゼ状の所を登って行く。トップは
江原さん、曽山さと斉藤さんはユマール、自分はラストで回収しながら登っていったが、すでに
ホキ気味だったので最後は江原さんに半分引き上げてもらう羽目になってしまった・・・完全に
お荷物状態。ここは残置ハーケンなどもあったが、そもそも一本隣のガリーを登ってしまったの
か、乗り移った支尾根が間違っていたのか、どうやら一般的なルートでは無い所を登ってしま
ったみたいだ。
そんなこんなで苦戦しているうちにかなり時間が経ってしまい、横尾尾根の稜線に抜けたのは
14:00になってしまった。稜線上にはかなりしっかりしたトレースが付いており、ここからスピード
を上げる・・・ハズがなかなかペースが上がらずダラダラ歩き。江原さんに喝を入れられ、「これ
はイカン!」と思いオリャーっと気合を入れて急斜面を登りきるとP4の頂上に飛び出た。しかし
ここでも情けないかなホキた残置ロープに数回頼ってしまった。危険なので、以後気をつけな
ければならない。
P4には福岡大学の人達のテントが2張り。なんと荷揚げしながらの極地法登山をしていて、先
程のトレースもこの人達がつけたもの。ガッツのある人達だ。後続の曽山さんと斉藤さんが来
るのを待つ間にP4の少し先の平坦地まで行き整地しておく。テントに入りホッとしてカレーを腹
いっぱい食い、キジをうちに行くとすごい星空。「雪山の野キジはいいですねぇ。」「猛吹雪の時
にキジうちに行ってみろ、ケツが凍傷になって敗退するぞ。」などどくだらない下ネタで盛り上が
りながらラジオを聴いていたが、絶妙なタイミングで肝心の気象情報を聴き逃してしまった。翌
日物凄い荒天になる事など知る由もなく眠りにつく。
翌12月29日、4:30起床、またしてもあまり眠れなかった。曽山さん特製チーズ粥を食い6:30出
発。天気もよく快適な尾根をしばらく歩くこと1時間半、核心部である横尾の歯と呼ばれる岩稜
帯に着く。ここでザイルを出して2ピッチ、案の定自分はビビり結局抜けるのに1時間半かかっ
てしまった。個人的には2ピッチ目の岩峰の下りで足場が遠く感じた。
横尾の歯を越えるとしばらくは雪稜が続き、10:40天狗のコルに到着。この辺りから風が吹き
始め、槍の穂先もガスに隠れていた。12:00、主稜線に出がるがこの辺りから斉藤さんがパワ
ーダウンしてしまう。中岳まではまだ良かったが進むにつれどんどん天候が荒れ、視界もきか
ず、前を歩く江原さんを見失わないように気合を入れて歩くのが精一杯で、完全におまかせ状
態。コンパスと地図で進むべき方向を確認しながら歩くが斉藤さんのペースが上がらず、大分
離れてしまう。
途中で後続二人を待っていたが、いくら待っても来ないので江原さんが様子を見に行く。この
間自分は泣きそうになりながら岩に身を寄せ動かず待っていたが、一人では心細く、とてもとて
も長く感じた。風の避けられる場所で斉藤さんの荷物を分けるという話も出たがそんな場所も
なく結局そのまま歩き、大喰岳に着く頃には目も開けていられず、まともに立っていられない程
の猛吹雪になっていた。
ここからは曽山さんのナイスなルートファインディングで歩いて行く。やはり経験の豊富な人が
いると心強い。やがて肩の小屋が見えてくると少しホッとしたが、小屋がすぐそこに見えている
のに最後の10メートルが強風でなかなか進めない。結局小屋に着いのたは16:30。なんとか
日没前に着くことができたが、途中で日没を迎えていたらどうなっていたのか・・・恐ろしい。敏
速に行動する事の重要さをヒシヒシと感じた。
小屋に入ると一気に緊張の糸が緩んだのか、急に寒さが襲ってきて体の震えが止まらなくなっ
てしまいテント設営もろくに出来なかった。それにしてもスゴイ天候だった。吹雪かれたのが初
めてだったのでよく分からないが、今回の天候を基準にすれば次からそこそこ荒れても耐えら
れるだろうとの事。とても良い経験になった。その夜は江原さんがタマネギの匂いを嫌うあま
り、2日目から自分が背負って歩いていたシチューを食い就寝。
12:30日、5:00起床。朝食のラーメンを食い、身支度を整え外の様子を伺うと、風は強いが
時々ガスの切れ間から槍の穂先が見える。小屋の入り口では数パーティーが行くか行かない
か躊躇していた。我々は自分が岩稜歩きに自信が無かったのと、斉藤さんの疲労が理由で頂
上はあっさりと断念。下降は大喰岳西尾根の予定だったが、視界が悪いと下降点がわかりづ
らいので中崎尾根を降ることにした。
しばらく天気の様子を見ていたが、待っていても変わらないので7:45、意を決して行く事にす
る。我々が外に出ると、小屋の入り口で足踏みしていた数パーティーも続々と付いてきた。結
局、皆山頂は諦めたみたいだ。西鎌尾根上部を経由して、千丈乗越から中崎尾根へと進む
が、中崎尾根上部に一部ナイフエッジと雪壁の下りがあり緊張した。
そこを過ぎると次第に天候も回復し始め、なだらかに登り下りを繰り返しながら尾根上を進ん
でいくが、途中でトレースが無くなり江原さんがザックを置いてラッセルし始めた。ザックを置い
た江原さはなんと速い事か!またしても自分はセカンドのくせになかなか追いつけなかった
が、それでもなんとか一部ラッセルすることができた。この頃には天気も快晴、穂高連峰を眺
めながら他パーティーと交代でラッセルし、槍平方面への下降点であるピークにたどり着くと、
ちょうど登ってきた人達が休憩中。そこからはトレースがあり楽に下れた。
12:00、槍平着。そこから3時間40分のダラダラスノーハイキングで、15:40新穂高温泉着。バ
スで平湯まで行き温泉に浸かり、タクシーで松本へ。最終の特急列車で帰京した。
下山した当初は充実感に満ち少々自信が付いた気になっていたが、後日集会で山行報告を
聞き、改めて振り返ってみると自分は何の役にも立っていないことが分かる。体力が無いのは
論外、精神的にも弱く、残置ロープは掴むし、しまいには江原さんに引っ張り上げてもらう有
様。結局は連れて行ってもらうおまかせ山行でしかなく、「山を登ってきました。」と堂々と言え
るものではない。克服しなければならない課題は山積みだ。
(コースタイム)
12月27日 雪
中ノ湯6:30~河童橋8:30~明神9:30~徳沢11:00~横尾13:10
12月28日 晴れ
横尾6:30~3のガリー取付8:05~横尾尾根稜線14:00~P4 15:00
12月29日 晴れのち吹雪
P4先のピーク6:30~横尾の歯8:00~天狗のコル10:40~主稜線12:00~中岳13:30~肩の
小屋16:30
12月30日 曇りのち晴れ
肩の小屋7:45~千丈乗越8:20~槍平12:00~新穂高温泉15:40~帰京
東京緑山岳会
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